【日々を綴る】後編:三日坊主になるのはなぜ? 連用日記を試して分かった続けやすいマイルール

編集スタッフ 岡本

数年後、どんな暮らしをしているか分からないけれど、振り返ったときに「自分らしく時を重ねてきた」と感じられたら。そんな思いから、ささやかで大切な日常を残すための日記帳を作りました。

その発売に合わせて、この特集ではスタッフ4名の日記との付き合い方を紹介しています。

日記が身近な存在だと話すスタッフについてお届けした前編につづき、後編では書いてみたいという気持ちはありつつも、これまでは三日坊主になってしまった2名のスタッフが登場。当店オリジナルの3年日記を試してみましたよ。

数年の時を経て改めて書き出すと、また違った付き合い方ができたようです。

前編を読む

 


スタッフ糸井

「日記に興味津々。けれど、何度も断念して……」


スタッフ糸井:
「日記を書くことに対して憧れがあって、これまで何度も手にしてきました。手帳も好きで毎年買うけれど、書いて残したり管理したりするのがどうにも暮らしになじまず、いつも三日坊主に。

あのときはどうして書き続けられなかったんだろうって考えてみたら、自分で自分にプレッシャーをかけてしまっていたかもと気付いたんです。

素敵な日記帳を手に入れたから、書き間違えたくない。きれいな字で書かなくちゃと、どこか完璧主義な面があるというか。忙しくて書けない日があるとそれが気になり、その先が書けなくなったときもありました」

この話を聞いて、「分かる分かる!」と大きく頷いてしまいました。私もこれまで何度も日記を書き始めては糸井と似たような理由で続けることができずにいたから。

それでも「日記を書きたいな」と思うのは、どうしてなのでしょうか。

スタッフ糸井:
「実は20歳くらいのときに連用日記を2年続けた時期がありました。

読み返すと書いてあるのはたわいもないことばかりで心に響くような大それた出来事はないけれど、『ああ、私はこの時こうして生きていたんだ』と感じられてどこかほっとするものがあったんです。

その感覚があったから、何度日記に挫折しても流れていく日々を書き残したい、と思っているのかもしれません」

暮らしの当事者として過ごしていると当たり前に感じることも、時間という距離を置いて見ることで「けっこう頑張っていたんだな」と自分を客観的に見ることができる。日記ならではの魅力に触れ直したところで、実際に3年連用日記を使ってみてもらいました。

 

箇条書きの買い物リストが、日記代わりに?

スタッフ糸井:
「久しぶりに日記を書いてみて感じたのは、やっぱりデジタルでは残せない人間らしさが表れるんだなあということでした。

『文字』には書いたときの自分がそのまま残っていて少し気恥ずかしいのですが、ときに内容以上に、そこから伝わるものがあるんだと実感します」

何度も日記を挫折してきた糸井なりに続けやすい方法を模索したところ、文章ではなく箇条書きスタイルがフィットしたのだそう。

スタッフ糸井:
「この数年は手書きではないものの、SNSアプリのメモ機能を使ってその日の買い物リストや観に行った映画、心地よいと感じた言葉を箇条書きで残していました。

その方法を日記でも試してみたら、以前のようなプレッシャーを感じずに書くことができたんです。

日記=文章というイメージだったけれど、『トマト、卵、味噌』など、食材の羅列が書いてあるだけでもその日のスーパーの雰囲気とか作った料理が思い出されるなあと思って。

短い言葉でも目にすると、そのときの感情や景色がぶわっと蘇って日常を残すことの面白さを感じています」

 

誰かではなく、自分の大切なことだけを

スタッフ糸井:
「日記って、自分が自分のために残すものなのだと再確認しました。私が書き留めたいくつかの言葉は、私が読み返すと特別な意味を持ってその時の風景や思い出がよみがえるけれど、他の誰かにとっては気にも留めない言葉たちです。

私だけに意味があるものを書き残していくって、なんだか特別な感じがします。

3年分の同じ日付を1ページに残せる連用日記は、その年ごとの変化が現れやすいのがまた面白いところ。今は箇条書きスタイルがしっくりきているけれど、3年間のあいだで日記の残し方も変わっていくのかもしれないですよね。

どんな書き方でもいい。柔軟に捉えて自分自身にプレッシャーをかけすぎず日記と付き合っていけたらと思います」

 


スタッフ岡本

「育休からの復帰が再チャレンジのきっかけに」


前後編でお届けしてきた日記の特集、最後は私自身の話です。

日記を書き始めては途中でやめてしまうという流れを何回繰り返しただろう? と思うほど、日記を書きたいという思いも三日坊主な性分も変わらずにここまできました。

きっと私は日記に向いてないんだと諦めモードだったここ数年。

でもやっぱり……ともう一度手に取りたくなったのは、二度目の育休から復帰するタイミングでした。

働くことに対するワクワクと、家事や二人育児をしながら仕事ができるんだろうかという不安が交互にやってきては、感情を揺さぶる。そんな日々を送っていた今年の春、ここまで気持ちがあっちへ行ったりこっちへ行ったりすることって人生のなかでもそうないぞ、と思ったのです。

大きな区切りを前に戸惑っている今の気持ちを忘れずにいたい。そんな気持ちから書き始めたのを覚えています。

▲4歳の息子の恐竜コレクション。

とは言っても、これまで通りに書き始めたらまた切ない結末を迎えることは分かっていたので、今回はぐんとハードルを下げて書き始めることを決めていました。

例えば実践してみたのはこんなことです。

・続けられなかった理由を自分なりに考えてみる
・書くタイミングを決めてみる
・同じペンを使って統一感を出す
・空白の日は忙しさの現れだと捉える
・イラストだけの日があってもOKとする

どれも小さなことではありますが、先回りしてマイルールにしてみたら、今のところ無理せずに書き続けることができています。

 

短い文章から、きらりとした瞬間を見つけて

日記を再開してみて、たった数分でも自分と向き合う時間がつくれたことが小さな自信に繋がっている気がします。

「今日は夕食のおかずを1品多く作れた」
「取材ですてきな方に会えて楽しく話せた」
「子どもが一人で着替えられるようになった」

忙しない毎日を送っていると自分のままならないところばかりに目がいっていたけれど、そんなことはないのだと、日記に記された自分の姿が教えてくれるのです。

人それぞれの向き合い方で日々を書き記すことが暮らしを豊かにするきっかけになるかもしれない、と日記の持つ力を改めて感じています。

 

3年間、暮らしの相棒に。
これから先も自分らしく時を重ねて

今年で15周年を迎えた当店。葛藤したり心から喜んだり、お店をつくるスタッフたちにもさまざまな出来事がありました。

きっとお客さまも私たちと同じように、日常のなかにかけがえのない瞬間を積み重ねてきたことと思います。

これから先の毎日も自分らしく過ごせるように。この連用日記にはそんな想いを込めました。

日々にそっと寄り添う存在として、手に取っていただけたら嬉しいです。

(おわり)

 

 

【写真】鈴木静華

もくじ


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