【梅雨のからだチューニング】前編:家事の合間にできることを。先生にきく、身体を軽くするストレッチ5選
編集スタッフ 糸井
梅雨から夏の終わりにかけて続く、気圧・寒暖差の激しい期間。そろそろエアコンのスイッチに手が伸びそうですが、それはそれでだるさを感じることも。
結局昨年は、仕事場や電車、お気に入りの部屋でも、なんだか落ち着かない場面が頻繁に訪れたように感じます。
でも、今年はもう少し自分とうまく付き合いたいんです。
特集『梅雨のからだチューニング』では、ちょっと身体がムズムズしたり落ち着かないときに、手軽にできる小さなお守りになるようなストレッチをご紹介します。
伺ったのは、以前当店の読み物でもご一緒した、ヨガ講師のサントーシマ香(かおり)さんです。
ストレッチの動きをよりわかりやすくするために、記事のところどころで簡単な動画もご用意していますよ。
身体をコントロールすることはできる?
サントーシマさん:
雨と夏日が交互に来るようなこの季節は、健康の基盤となる自律神経に普段以上の負荷がかかります。
以前の自分であれば多少の負荷があったって、身体が対応できていたような気がします。でも、生活の変化や加齢によって、自律神経機能は徐々に低下する傾向にあることがわかっています。
そこに日々の仕事や子育て、睡眠不足などがかさむことで疲れがたまり、いきなり身体がバグを起こしたり、不調という形でSOSを発信してくれるのです。
私自身も、梅雨から秋の台風シーズンはよく身体を見守っていて、できるだけ冷たいものや消化に重いものを避けて胃腸をいたわったり、無理をしすぎないように心がけています。
サントーシマさん:
眠りが浅かったり、身体が火照って気持ちが悪いときなど、ちょっと最近身体がおかしい気がしたら、自律神経を意識的に整えてみてください。具体的には、規則正しい生活リズム。日中には覚醒の、寝る前には休息のスイッチを身体に刻んであげましょう。
まずは、覚醒のスイッチについて。起きぬけの身体にやさしく『朝だよー、昼だよー』と教え、昼間のうちに交感神経をほどよく活性化させる方法です。
身近なものでいうと『日光浴』ですが、深い呼吸や、軽い運動も心がけるとより良いですよ。
穏やかで元気のいい音楽やラジオをききながら家事をしたり、駅まで歩いてみたり、軽い筋トレやヨガのポーズで全身の血流を巡らせて。筋肉をつかって身体を起こしてあげましょう。
ちなみに軽い運動とお伝えした理由ですが、寒い季節には暖をとる役目もあった運動も、暑い時は生きているだけでエネルギーを消耗しているためやりすぎるとより負担になることがあるから。この時期は、アクティブな運動よりも、ソフトな運動を。意識的な呼吸などから身体を調節するのでも十分ですよ。
今日は具体的に、おすすめのストレッチをいくつかご紹介していきますね。
身体をやさしく「快活に」
簡単、お守りチューニング
鼻から吸って、鼻から吐く。
家事のすきまで「腹式呼吸」を
『鼻から吸ってー、また鼻から息を吐いてー。
鼻からの腹式呼吸が、自律神経を整えてくれます。
ごろりと寝ころび、深い呼吸をするだけで
身体にフレッシュな空気が巡ります』
ポイント
呼吸には、腹式呼吸と胸式呼吸があります。集中力やパフォーマンスを上げたいときには胸式呼吸もよいのですが、今回のように整えるときには腹式呼吸もおすすめです。
何秒間しなきゃと決め込んだり、小刻みに『吸って吐いて』を繰り返すのではなく、好きなだけ時間をかけて、気持ちいいなと感じるくらいのペースでやってみてください。呼吸は、難しく考えず、焦らないことが大事ですから。
たとえば洗濯物を畳むついでに、床にごろんとして目を閉じてやってみるなど。もちろん座りながらでも。
✔︎お腹に手を当てる理由は?
腹式呼吸をしているときには、横隔膜が上下し、腹圧が変化しているんです。手を置くことで、その様子を直に感じられて、より深く集中した呼吸になります。触れているところにやさしく呼吸を送るように意識しましょう。
✔︎足の下にクッションを入れる理由は?
クッションを下にいれると、股関節を少しゆるめることができるので、より深い呼吸をうながすことができるのです。クッションではなく、膝を立てても。骨盤まわりに自然なカーブが生まれるので、これもおすすめの方法です。
ルームミストをシュッと一吹き。
呼吸も「たのしく」続けたい
『呼吸自体をたのしみたいときは、
お気に入りのルームスプレーをひとふき。
香りで、自然と呼吸も深くなり
気持ちのリフレッシュにも繋がります』
ポイント
呼吸の助けにもなる、香り。
香りは五感のなかで唯一、情報を処理するルートが他のものとは異なります。ダイレクトに脳の辺縁系(情動を司るエリア)に作用する力があるので、意識的に香りを使うことは、気分を調節することにつながりますよ。
香ったときに「気持ちいい」と感じる香りは人によって違いますから、ぜひ時間のあるときに、自分の好きな香りを探してみてください。
▲オイルやクリームの香りものもおすすめです。
片方ずつの鼻呼吸で
脳にぐんと、空気を注入
『これは呼吸の中級編
左右の鼻孔から、交互に呼吸します。
左の鼻の穴から吸ってー、そのまま左から吐いて
今度は右から吸ってー、右から吐いて、最後に両鼻から、と続けます。
吐く息のほうが気持ち長くなるようにしてみても』
ポイント
人間は口よりも、鼻から呼吸をするほうが、空気がずっと深く身体に届きます。普段、うっかり口呼吸している時間が長くなると、呼吸が浅くなり、身体のパフォーマンスが下がることも。なので、日中にも深呼吸できるブレイクタイムを作ってあげることがおすすめです。
✔︎片方ずつ鼻呼吸する理由は?
あえて左右の鼻孔を使い分けることで、両方の鼻の穴から吸うよりも、空気の通るパイプが半分に減って、空気圧が高まります。これにより、呼吸の流れを意識しやすくなり、呼吸を深める癖づけに繋がります。
▲日頃から、鼻孔近くをくるくるとマッサージしてあげるのも◎。狭くなりがちな鼻孔が整って呼吸のしやすさに繋がります。
▲鼻の下や鎖骨の付近に、少量のハッカオイルを塗ると、爽快感が増して気持ち良いそう。
巻き肩の改善にも。
ホイッパー気分で「首をくるり」
『背中のほうで腕やひじをつかんだら、
首を伸ばし、ゆっくり回しましょう。
頭のてっぺんがホイッパーになったイメージで、
上の空気をかき混ぜるように、やさしく続けます』
ポイント
腕を後ろに回すだけで、巻き肩の改善にもなり、一石二鳥のストレッチです。真横から見たときに、自分の首・肩・腰骨が垂直に並ぶように意識して、身体のベースを整えてあげるのが大切ですよ。
✔︎首を伸ばしながら優しく回す理由は?
あまりに首をつぶしながらゴリゴリと回すと、骨と骨が擦り合ってしまうことに。ろくろっ首になった気分で、頭蓋骨と胴体のあいだに空間が保たれた状態で、首をぐいんと曲げたりせずにしっとりめに回すようにしましょう。
▲このように前後左右にゆっくりと首を傾けたり、ねじったり伸ばしたりするのも心地よく、おすすめとのこと
肩甲骨のこわばりをほどいて、
身体のエネルギーを充電しましょう
『頭のうしろで手を組んだら、
脇を開閉するように、肩甲骨のストレッチです。
ひらく時は、かるく上をみあげて
とじる時は、頭をぐーっと下げるように』
ポイント
デスクワークなど仕事の時間が続くと、肩甲骨から肩、首の部分が緊張して、こわばりがち。座りながらできるストレッチなので、数分でも、気がついたときに取り入れるだけで、日頃の身体の軽快さに繋がります。
開閉するときに、組み手の位置を上下に調節し肩が力みすぎないようにだけ意識して。気持ちよさを感じながら、ゆっくり数回繰り返しましょう。
**
サントーシマさん:
「どれも簡単かつ、続けやすいものを紹介しています。とはいえ、これまでしていなかったことを日常に取り入れるのは、それ自体が大変でもあります。
深呼吸するのでさえ難しく感じるときもあると思います。そんなときは、目を瞑って10秒黙って呼吸を感じるだけでも充分です。他にも、自分の身体のどこかを手で触れて、なでるだけでも、『オキシトシン』というホルモンが出て、気持ちの落ち着きにも繋がりますから」
何ができるかは人それぞれ。けれど、自分にあった方法がひとつでもあるとお守りのように感じられる気がしています。
さて、次回は休息のリズムを整える、夜におすすめのチューニング法を紹介してもらいます。
(つづく)
【写真】鍵岡龍門
もくじ
サントーシマ香
ヨガ講師。アーユルヴェーダ・セラピスト。2005年全米ヨガアライアンス認定インストラクター講座を終了。その後インドや北米を中心に学びを続ける。現在はオンラインヨガの配信も行う。著書に「更年期のヨガ」(大和書房)、「ストレスフリーになる 休息のヨガ」(大和書房)、「疲れないからだをつくる 夜のヨガ」(大和書房)など多数。2児の母。Instagram:@santosimakaori
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