【台所でおつかれさま】第6話:キッチンは、いちばん自由でオープンに話ができる場所であってほしいと思うんです(スタッフ山根)

編集スタッフ 糸井

台所ではどんな時間が流れているでしょうか。料理はもちろん、ラジオを聴いたりドラマを観たり、椅子を置いて仕事をする人もいるかもしれません。

そこには、無意識のうちに自分をケアする習慣が隠れていることも。台所に立つ自分をちょっと俯瞰して見ると、日々大事にしていることが見えてくる気がします。

この連載ではスタッフ宅にお邪魔し、そんな「台所」にまつわるエピソードをきいていきます。今回訪ねたのは、バイヤーのスタッフ山根宅です。

 


#06
スタッフ山根の台所


山根は、2人の子どもと妻との4人暮らし。昨年引っ越してきたこの家は、時間をかけてフルリノベーションしていたのだとか。

白を基調としたリビング、その奥にひっそりと、黄色くあたたかなライトがもれている空間があります。まるで穴ぐらのような、リビングからは見えそうで見えないその場所が、山根家の台所。

その台所の奥には、小さなパントリーもあるそうです。

家の改装をするにあたっての間取りは、建築士の知人と相談しながらも、ほとんど自分で考えて作っていったのだとか。

山根:
本当に、素人からのスタートでした。でも、人生でこんな機会もないから楽しみたいなと……わからないなりに本やネットで調べて進めていきました。台所づくりは、特に時間をかけましたね。

どこから手を付けていいか迷うほど、天井の高さやシンク、タイルなど、決めることが山積み。仕事が終わって寝る時間まで、来る日も来る日も、ネットで理想の台所の画像を集めて……。

本当は、いまのような真っ白な空間ではなく、所々にウッド調を差し色で加えたかったのですが、素人の僕にはちょっと難題でした。その代わり、戸棚のサイズやパントリーなど、間取りで叶えたかったことは全部詰め込めたんです。

山根:
どちらかを選ぶなら、僕は、食べるよりも料理を作るのが好きなんだと思います。思い返すと台所には、小学校3年生の頃には好んで立っていたのかな。学校の家庭科の時間も大好きでした。

今でも料理って、実験みたいで息抜きになるんですよ。平日休日問わず、どんなに忙しくても、なんだかんだ台所にいますね。

その時間、ごきげんでいるのに欠かせないのは、音楽。料理のトーンに合わせた音楽を流したり、最近のお気に入りの1曲をリピートして歌いながら、料理をしています。

 

場所から「安心」をつくりたくて

山根:
台所は、ちょっと閉じこもった場所にしたかったんです。これまでの経験上、キッチンは、ものがごちゃつきがちだったので、リビングからあまり見えすぎないところに作りたいなと。

リビングからキッチンにすっと入ると、こぢんまりと、壁に挟まれたように、閉じこもった空間に変わる。それがなんだか安心するんです。

 

無理なくできる収納のさじ加減は、このくらい

山根:
収納のこだわりは、ほとんどのアイテムを隠して収納できるようにしたこと。毎日使うお茶碗類だけは置けるくらいの、小さな飾り棚をつけたことですね。

そうすれば、8割のものは何もしなくてもすっきり隠せて、残りの2割の力で『ここだけは見栄え良くしよう』と頑張れる。僕、全部のものにこだわりをもって選ぶのが苦手なんです。

すべてがお気に入りだったら、一気に見せる収納もいいなと思いつつ、自分に無理なくできる収納はこのくらいのさじ加減だなと思って。

▲ストック食材などは、無印良品のボックスに収納。どれにも当てはまらないものをパッと入れられるように、『なんでも』というラベリングボックスを。

▲奥のパントリーには、カーテンで間仕切りを。

山根:
SNSなどでたくさんの台所をみるなかで、自分の好みは、厨房感があるような、淡々と料理に集中できる空間なんだなとわかりました。

たとえばキッチンで一番使うのって、キッチンカウンターから目線の高さまでくらいのスペースだと思うのですが、そのスペースがライトアップされるようにしたいなと、間接照明を設置。

天井の照明も、全部を明るく照らすのではなく、少し低めにして。野菜を切ったり、洗い物をしたりする動作に目がいくようにしています。

 

ごきげんをつくるアイテム選び

▲引き出しを丸ごと使って、IKEAのゴミ箱を収納。パッと使いやすい場所、かつ見えない場所に置きたくて、と山根。

山根:
お皿は、あまり色々持っていないのですが……欠かせないのは『saturnia(サタルニア)』のオーバルプレート。なんでも雰囲気良く盛り付けられて。パスタはもちろん、カレーや、中華でも雰囲気があるんですよ。

それと、平茶碗。これも凄く万能で、お茶漬けやどんぶりにも、小鉢として副菜を盛るのにも使えるんです。気に入って、途中で買い足しました。

▲左から、『saturnia(サタルニア)』のオーバルプレートと、『白山陶器』の平茶碗。

山根:
砥石を使って、包丁を研ぐ練習もはじめました。

ある日父から『金物屋さんで見つけた、いいものがある』と包丁をもらって。せっかくだから、大事に使いたいなと。YouTubeで参考動画を探して、月に1度くらいのペースで続けています。

忙しいとき、包丁の切れ味がいいとストレスがなくて、ちょっとごきげんになれます。

 

ふるさとのようにほっとする台所で

山根:
あの……ホームパーティーをしたときって、みんながごはんを囲んでいるなか、そのうちの数名が台所で片付けやドリンクを用意しているシーンってあるじゃないですか。

昔から、そのときの台所に流れる時間が好きなんですよ。大勢が集まっている端の方で、ちょっと聞こえなかったり、気にされていないような場所にある、静かな安心感というのでしょうか。

話すために集まっているわけじゃなく、手を動かす目的があるからこそ、そういう場所での雑談は、一番自由で、心がオープンになっている気がするんですよね。

だから、自宅のキッチンもそうできたらという気持ちがあって。妻と仕事や子どものことについて話すのも、キッチンで作業しながらが多いんです。

山根:
そのおかげか、リビングや他の部屋のインテリアは『もっとこうなっていたい』とか『模様替えしたいな』と考えるのですが、キッチンに関しては、このままでいてほしい。疲れていても、この空間にすっと入ると心は静かに、気難しい頭は柔らかに。例えが変ですけど、ふるさとに帰ってきたときのような、ほっとする感じがあるんです。

家のリフォームをして、上手く行かなかったところもある。キッチンにも、思ったよりもパントリーが小さくなっちゃったとか、たくさんあります。けどまあ、概ねよし、とできています。

これからも、自分が料理をして、そこに妻や大きくなっていく子どもがいて、程よいトーンで喋ったりして。そんな風に過ごしていきたいですね。

 

そんな山根と台所との関係でした。

さて次は、どのスタッフの台所を訪れましょうか。次回の更新もお楽しみに。

【写真】濱津和貴


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