【あの人の本棚】後編:世界は広いということを、本を通じて娘に伝えたい(ライター・小野民さん)

ライター 瀬谷薫子

誰かの家を訪ねると、つい眺めてしまう本棚。そこに詰まった本からは、持ち主の人となりがなんとなく想像できるから不思議なものです。

そんな本棚を通じて人を知るインタビュー。今回は編集者・ライターの小野民(おの たみ)さんにお話を聞いています。前編は子ども時代から今の仕事に就くまでの本との思い出を。後編は母になった今の、本との向き合い方を伺いました。
前編を読む
 

家族みんなの本がおさまる、大きな本棚

リビングの壁一面にずらりと並んだ大きな本棚には、大人の本から子どもの絵本まで、家族みんなの本が入っています。

誰のがどこという境目もなく、みんなごちゃ混ぜ。読みたいものを気ままに引き抜き、元々あったところとは違う場所に戻すことも。そんな自由な本棚が小野さんらしさです。

▲夫(発酵デザイナーの小倉ヒラクさん)の仕事に関わる本も、本棚の一角に

小野さん:
「夫は活字中毒なくらい読書が好き。この本棚にある本も、夫のものが一番多いです。

ふだん読む本はあまり被らないんですが、すすめられたら読んでみることもあります。珍しくすすめられた小説が『ある男』(新潮社刊)。読んでみるとすごく好みな話で、感性が近いのね、と安心しました(笑)」

仕事柄出張の多い夫とは、家でゆっくり過ごす時間が少ないことも。けれど本棚に置かれている本の内容から、なんとなくお互いの興味や、考えていることがわかることもあるといいます。

 

長女が生まれて8年。母から毎月送られてくる本

▲『たくさんのふしぎ』と『母の友』(福音館書店)

小野さん:
「母に、娘の誕生日プレゼントとして毎年、福音館書店の雑誌の定期購読をリクエストしているんです。それから8年、毎月まめに本を送ってくれています。

『たくさんのふしぎ』は、私が子どものころ大好きだった本。今は娘が読んでいます。今月はロンドンの宮殿がテーマで、この間は光るきのこの話でした。毎月テーマが本当に多彩で、面白いんです。

『母の友』はずっと好きな本。子育ての話題にはやっぱり興味があって、しっかりと企画されて作られている特集や、インタビューひとつひとつが興味深く、ずっと読み続けています」

 

自分と違う「子育て」の形も、もっと知りたい

小野さん:
「子育てにまつわる特集を読んでいると、みんな色々なことに悩んでいるんだなと感じます。最近はそんな気持ちに寄り添ってくれる本や雑誌が、世の中に増えてきていますよね。

私にとって子育ては、もちろん大変なときもあるけれど、とにかく楽しいもの。なのでしんどいなと感じたことは、実はあまりないんです」

軽やかにそう話す小野さん。それでも、本棚には育児に関する本がたくさん。人一倍の知識を取り込み、子育てについて考えてきたことが伝わります。

小野さん:
「子育ての形ってさまざまだと思うんです。私はずっと仕事をしているから、下の娘も生後半年の時から保育園に預けてきましたし、出張で不在にする時は、実家や友人の家に助けてもらうことも。さまざまな人に囲まれて育つことも、いいんじゃないかなと思っています。

思えば私の母も、いい意味で『お母さん』ぽくなくて、仕事をしている姿もかっこよかった。それが自分の子育てのお手本になっているのかもしれませんね」

小野さん:
「でも、もちろんそれだけが正解だとも思っていなくて、いろんなやり方があると思う。だからいろんな意見を聞いてみたいし、自分と違うところを知りたい。そんな興味が尽きなくて、育児の本はこれからも読み続けると思います」

 

本棚がなければ、全く違う家になっていたはず

小野さん:
「最近取材で、本棚のある家が少なくなってきているという話を聞いたんです。そもそも本自体を置いている家が減ってきているそう。電子書籍が増えてきたとか、いろいろな事情があるのだと思います。

でも、やっぱり私は『本棚』がある家の風景が好き。自分も本を作る仕事をしているから、みんなが一生懸命作ったものがここにあるのっていいなと思います。それに囲まれているのって、なんだか安心するんですよね」

小野さん:
「それに、ここには家族みんなの歴史が詰まっています。夫が若い頃、まだ私と出会う前に買った本だってあるし、私が小さい頃から読んでいた絵本もある。何十年とかけて、それぞれが手にしてきた本が並んでいて、それを娘がまたいつか手にするかもしれない。

そんな本棚が家のまんなかにあるって良いことだなと思うんです。もしもこの本棚がなかったら、今の家はきっと違うものになっていると思います」

 

娘に伝えたいのは「世界は広い」ということ

小野さん:
「大人の本も子どもの本も、分け隔てなくここにあるので、中にはちょっと刺激的な内容のものもあります。

でも、わたしはそれをあえて隠そうとはあまり思わなくて。仮に娘がそれを開いて、新しい刺激を受けたとしても、それはそれでいいのかなと思うんです。

この本棚の中みたいに、世界にはいろんな思想があって、混沌としていて、それが面白い。だから “正しい道” を選ばなきゃいけないと思わず、自由に生きていってほしい。

わたしが母として娘たちに伝えたいことがあるとしたら、『世界は広いよ』っていうことなのかもしれません。私もそんなことを、本から教わってきたと思うからです」

小野さんから聞いた本にまつわるエピソードには、いつも家族の面影がありました。

本は、ときに自分の気持ちを代弁してくれるもの。それを大切な人と共有することは、言葉を交わす以上に深いコミュニケーションになり得るのかもしれません。

本棚は家族をつなぐもの。そう思ったら、わが家にあるいつもの光景も、かけがえのないもののように思えてきました。

 

【写真】志鎌康平
 

もくじ


 

小野 民

編集者、ライター。大学卒業後、出版社にて農山村を行脚する営業ののち、編集業務に携わる。2012年よりフリーランスになり、主に地方・農業・食などの分野で、雑誌や書籍の編集・執筆を行う。人間4人、猫4匹と山梨県在住。


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