【台所でおつかれさま】第8話:できれば楽しく、いつまでも。「食べる時間」は毎日素直に過ごせたら(スタッフ木下)
編集スタッフ 糸井
台所ではどんな時間が流れているでしょうか。料理はもちろん、ラジオを聴いたりドラマを観たり、椅子を置いて仕事をする人もいるかもしれません。
そこには、無意識のうちに自分をケアする習慣が隠れていることも。台所に立つ自分をちょっと俯瞰して見ると、日々大事にしていることが見えてくる気がします。
この連載ではスタッフ宅にお邪魔し、そんな「台所」にまつわるエピソードをきいていきます。今回訪ねたのは、スタッフ木下宅です。
#08
スタッフ木下の台所
3LDKに、子どもと3人暮らしの木下。
引っ越したばかりの台所は、リビングとゆるく繋がったオープンキッチン。晴れるといっぱいの自然光が入ってきます。
目に映るのは、大きなダイニングテーブル。白いテーブルクロスが敷かれ、周りのグリーンも爽やかです。
木下:
「これまで、住んでいたどのキッチンにも窓がありました。でも、今回はなし。その代わり、顔を上げるとリビングのベランダがあるんです。
手持ちの家具や家電は、ダークトーンばかり。せめてダイニングテーブルは軽やかになればと、白いリネンを敷くようになりました。大胆に何かをこぼしてしまっても洗濯機に入れるだけだから、意外と手軽なんですよ」
賃貸だからこそ。引っ越しとキッチンの付き合い方
聞くと、この5年で3度の引っ越しを経験しているのだとか。
台所のしつらえや収納スペースを、その度に整えるのは大変そう。何か、台所選びの基準や整理のコツを見出しているのでしょうか?
木下:
「物件探しの段階でキッチンに求めるものは、さほどありません。
その分、こだわるのが『最初のポジション作り』。他の部屋と違い、しょっちゅう大掛かりな模様替えができないので、キッチンだけは特に最初の下準備を欠かさないんです。
この家も、収納スペースが多い方ではないからこそ、どこに置くとベストな収まりになるのか探りました。
まず、キッチンのアイテムを1軍〜3軍に分類。1軍以外は押し入れや、ガレージに入れることにしました。なにも、全てをキッチンに収納する必要もないかなと。せっかくのお気に入りだから、手放すことはできるだけしたくないんです」
この3日だけは、メモ魔になります
そうして作るのが、引っ越しの度に2、3日がかりだという「キッチンの設計図」のようなもの。
木下:
「物件が決まれば、何度もメジャーを持っていき、引き出しの寸法から何までとにかく測って、メモします。
ここは冷蔵庫。シンクから振り返ったときに何メートル以内にこれが届くように……とイメージしながら。
キッチンは『作業スペース』と見なしているので、まるで厨房のようなストレスフリーな動線を目指すんです。この時間は、引っ越しの楽しいイベント。とても大変なんですけれど(笑)」
▲このように図を何ページも作り、調味料からくず入れまで細かく場所を決めるのだそう。
木下:
「理想のキッチンを目指そうとするとキリがないけれど、だからこそ用意しているのが、どんなキッチンが来てもどんとこい、という気持ちかもしれません。
システムさえ作れるなら、どんなキッチンに引っ越してもまた自分のキッチンになるから、大丈夫。そう捉えるようになりました」
▲今回のキッチンにはどうしても収まりが悪かった、というゴミ箱。キャスター付きの台車に置き、位置を変えやすくしてみているそう。
フレンチのシェフに憧れ、使い始めたスプーン
白いコンロの奥には、たくさんのカトラリーが目立ちます。
木下:
「調理中に何本も取り出すのが『Kay Bojesen(カイボイスン)』のディナースプーン。
昔料理番組で、フレンチのシェフが調理中、味見や計量に何本もスプーンを使い分けるのを見て、なんだか格好よかったんです。試してみたら定着し、お味噌をすくったり、野菜を炒めたりと、なんでもスプーンになりました。
コンロの正面奥には、調味料を。塩に砂糖、それから小麦粉と片栗粉がすぐに取り出せて便利なんです」
木下:
「はじめて自分のキッチンを持った記念に迎えたのが、『DANSK(ダンスク)』の白い鍋。20年ほど経ちますが、今でも毎日使っています。
釜定さんのシャロウパンも、同じ年月愛用しているもの。パンやお肉を焼き付けると、すごくおいしくなるんですよ」
▲奥から、ダンスク、Smithey Ironware、釜定のシャロウパン。フライパンについては、手持ちがこの2枚だけなのだとか。
木下:
「フライパンや鍋はあまりたくさん持っていなくて。3口コンロを埋めるように、毎日フル活用しています」
こういう状態なの、とコンロに置かれた鍋はみな、なんだか逞しかったです。
窓ぎわ、この時間が欠かせません
木下:
「食べたり、呑んだりする時間が何より好きなんです。
最近のお気に入りが、ベランダのテーブルを使いながら、室内で過ごすこと。夕暮れ時、空を眺めながらお酒を嗜むと最高で。室内にいながら、外をちょっと感じられる加減がちょうどいいんです」
木下:
「休日朝の、自分だけのキッチン時間も好きです。集中して、すごく丁寧にカフェラテを淹れたり、最高のトーストを焼いたり。
席につき、口にする瞬間のご褒美があると思うと、自分への食の努力が湧き出るんです(笑)」
人生色々、でも食べる時間をまず楽しめたら
▲取材前、台所にまつわるものを探していたら出てきた食日記。20年前は、毎日全部つけていたのだとか。ここにメニューを書き込み、一週間分の買い出しをするスタイルだったそう。
お昼ごはんを食べてから、帰り道まで。夜は何を食べよう? と考えるのも、楽しみなのだとか。
木下:
「手元にある雑誌をパラパラと開きながら、どんな気分かなって。でも、2日頑張ったら1日手抜き、の感覚で。
実家の母いわく、『ただいま』と家に帰ると、すぐに冷蔵庫を開ける子だったそうで。小さい頃から、台所が好きだったんですね。
今日は何があるかな、とのぞく冷蔵庫の中身や、卵を焼くのにはまったときは『今日は砂糖を多めにしよう』なんて実験みたいにできる場所が、自由で、好きだったんです」
▲母からもらった古いレシピ本。昔から好きなのが、レシピを見ることなのだとか。テキストを追いながら、工程を想像し、頭のなかで料理が完成すると、幸せな気持ちに。
木下:
「暮らしには色々あるけれど、『食べたいものを楽しむ』ことは欲望に素直でいれたらなと。食事中は、あまり暗い時間にはしないように。喧嘩も持ち込まず、できれば楽しく、そのためのインテリアも整えていけたらと。
ここはまだ殺風景だから、あたたかみのあるところを作りたいですね。まずは壁にエプロンをかけたり、壁の色を壁紙シートで変えたり。賃貸の範囲のなかで、引き続き楽しめたらと思います」
そんな木下と台所との関係でした。
さて次は、どのスタッフの台所を訪れましょうか。次回の更新もお楽しみに。
【写真】濱津和貴
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