【等身大の花くらし】前編:今日はスーパーで花を買おう。 komoさんに聞く、花と暮らすはじめの一歩
編集スタッフ 藤波
花を飾るといつもの部屋もおめかしして見えて、しゃんとした気持ちで過ごせる気がします。
でも、センスに自信がなかったりすぐに枯らしてしまうのが心配だったりして、なかなか飾る習慣が身につきません。
新緑がまぶしく、植物が生き生きしている季節。今年こそは花との距離を少しでも縮めたくて、花のある暮らしをめいいっぱい楽しんでいる方にお話を聞いてみようと思いました。
「正解も間違いもないから、自分の好きなように楽しめるのがお花だと思うんです」と話すのは、作業療法士として働きながら休日に個人で花屋をしているkomo(コモ)さん。
雑誌で見かけたまるでお花屋さんのような空間の部屋にひとめぼれして、いつか伺いたいと思っていました。
聞いて驚いたのが、これまで花屋で働いたことはなく、数年前まではむしろ花に縁遠い人生だったのだとか。花を楽しみたいけれどはじめの一歩で悩む気持ちに、うんうんと共感してくださいました。
前編では、花を買う前から飾るまでの悩みごとを聞いてみました。独学で花を暮らしに取り入れてきたkomoさんだからこその、初心者目線に立ったアドバイスをたくさんもらえましたよ。
近所のスーパーで買うのもおすすめなんです
日頃から花を飾りたいと思っても、近くにちょうどいい花屋さんがないことも。定期的に飾るとなると、金銭面も気になるところです。
komoさん:
「花屋さんが近くになかったり、入店するのに敷居の高さを感じている方がいたら、まずはいつも行くスーパーで手に取ってみるのがおすすめです。仏花だけでなくちゃんと季節ごとにラインアップが変わりますし、スーパーによって仕入れに違いがあったりして楽しいですよ。
それから、個人的におすすめなのが地域のJA(農業協同組合)。花の状態がよく値段も比較的安いので、僕も重宝しています。
花屋さんに入るのが緊張する方は、まずはいつものお買い物ついでに出会った花を買ってみてもらいたいです」
komoさん:
「花を飾るからには長持ちしてほしいものですが、花の丈夫さは種類によりけりです。日持ちしやすい花はどれか店員さんに聞いてみるのがいいんじゃないかなと思います。
この時期に出回っているもので比較的日持ちするのは、チューリップ・カーネーション・レースフラワーなど。
カーネーションは母の日のイメージが強いかもしれませんが、咲くまでがゆっくりで、咲いてからも日持ちします。チューリップは咲いてからだんだん頭を垂れていくのでその変化を楽しめますよ」
お手入れの心得は、たった2つだけ
買ってきた切り花が思ったより早く枯れてしまった経験があります。せっかくなら長く楽しみたいのですが、選び方以外にお手入れのコツはあるのでしょうか。
komoさん:
「お手入れでなにより大切なのが、茎がぐんぐん水を吸える状態にしてあげることです。一つ目の観察ポイントは、花びんに生けたとき茎の先端がきちんと水に浸かっているか。
二つ目は、茎の先端が傷んでいないか。たとえ毎日水を替えても、栄養素や水分が通る管が傷んでいては吸水効率が下がってしまうんです。
家に帰るまでのわずかな時間でも茎は空気に触れているので、花びんに生ける前に先端を斜め方向にちょきんと切るのがおすすめ。これを「水揚げ」と言います。
このときハサミが錆びていたり切れ味が悪いと逆に茎が腐りやすくなるので、必ず園芸用のものを使ってくださいね。最近では100円ショップでも手に入りますよ」
▲komoさん愛用の園芸バサミは「坂源 ハンドクリエーションF170」
komoさん:
「花を飾っていると花びんの水が濁ってくることがあると思うのですが、これはバクテリアが繁殖している証拠。そんなときにも水を替えるついでに「水揚げ」をすると長持ちしやすくなります。
もう一つ、切り花にとって一番の大敵になるのが暖房や直射日光です。温度が高いと開花を早め枯れるまでのスピードが加速するので、夏の直射日光、冬の暖房が直接当たらないところに置くようにして、室温管理に注意してください。
街の花屋さんでは冷蔵庫に入っているくらいなので、クーラーの冷風にはむしろ強いです。これからの時期は花にとっても特に過ごしやすい季節。直射日光に当てないようにだけ注意してもらえば、気楽に楽しめると思いますよ」
枝物は初心者さん向け?
どーんと食卓の真ん中に置いてみましょう
▲リキュウバイを2本飾ったようす。使った花びんは『ニトリ』のもの
雑誌などで見かけるおしゃれな部屋で、どっしりとした枝物が飾ってあるのに憧れます。おすすめの種類や飾り方について知りたいです。
komoさん:
「僕、枝物が大好きなんです。大ぶりなものが多く難しそうなイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、そんなことはありません! 初心者さんにこそチャレンジしてもらいたいですね。
花屋さんでよく見かけるアセビやドウダンツツジは定番ですが佇まいがよく日持ちします。ウンリュウヤナギはこのまま地面に植えたら木に成長するほどとにかく丈夫。お客さんで1年以上もった人がいたくらいです。
あまり飾るスペースがない方には、小さめの枝物もおすすめ。枝物ですが白いかわいい花をつけるリキュウバイは、1〜2本でも寂しくならず華やかに見えますよ。
個人的にお気に入りの飾り場所は、食卓の真ん中です。グリーンがあるだけで気持ちがいいし元気をもらえて、普段の食事がもっとおいしくなる気がしていて」
▲左:ウンリュウヤナギ、右:リキュウバイ
komoさん:
「枝物を飾る際、水に完全に浸る部分の枝や葉は腐ってしまうのであらかじめ剪定するのがおすすめ。剪定した短い枝は捨てずに小さな花びんに飾れば、余すことなく枝を楽しめますよ。
水揚げをした際に底の切り口にハサミで縦に切れ込みを入れると、より水を吸いやすくなって生き生きした状態を長くキープできます。
水替えの理想は毎日ですが、水が少し濁ってきたかな?というタイミングでするだけでも十分。水替えの際についでに花びんや茎のぬめりを落とすとさらにグッドです」
花びんこそじゆうに。
空きびん × 一輪挿しからはじめませんか?
選択肢がたくさんあるからこそ迷うのが、どんな花びんを選べばいいのかということ。komoさん宅にはたくさん花びんがありますが、どんなふうに選んでいますか?
komoさん:
「純粋に好きだな、思い入れがあるな、というものを使ってもらうのが一番だとは思います。僕の場合は古道具が好きなので、持っている花びんもアンティークな雰囲気のものが多いですね。
だけど必ずしも用途が花びんのものを選ぶ必要はないと思っていて、たとえばワインやビールの空きびんだって立派な花びんだと思うんです。
ラベルが気に入ったものや友人からお祝いでもらった思い出の空き瓶を残して花を飾っているのですが、これが暮らしの中にけっこう馴染んでくれていて。口が狭いからこそ花の先端をびんの内側に沿わすことができて、意外とどんな長さの花も飾れます」
▲左上から時計まわりにカラー・ライスフラワー・ニゲラ・ラナンキュラスkomoさん:
「どこにでも置けて花との距離をぐっと縮めてくれるのが一輪挿しです。このために花を買うのもいいですが、どちらかというと剪定した枝物や生けるときにポキンと折れてしまった花の居場所として使うといいなあと思っていて。
飾り方は自由でOKですが、花の重さには注意です。花びんと水の重量に対して花が重いとだんだん水から出てきてしまうので、平たくて小さな一輪挿しにはなるべく軽い花を選ぶとバランスもいいと思います。
僕は古道具の小さなビーカーやカップ酒の空きびんも一輪挿しのように使っていますよ」
komoさん:
「食卓だけでなく寝室やお手洗い、本棚なんかにちょこんと飾れるのも小さな一輪挿しの良さですよね。
恥ずかしながら僕はけっこうズボラなほうだと思いますが、それでも花のある生活をたっぷり楽しめています。実際に気をつけているのは、今日お伝えした『水揚げ』と『室温管理』くらい。
始めてみると神経質になりすぎなくても気軽に楽しめるので、ぜひはじめの一歩を踏み出してみてもらえたら嬉しいです」
あふれんばかりのお花愛が伝わってくるkomoさん。取材していると、「私もお花を飾りたい!」という気持ちがどんどん大きくなっていきました。
続く後編では、およそ1000円以内でできる小さなブーケの作り方についてご紹介します。お楽しみに。
【写真】上原朋也
もくじ
komo
花屋と作業療法士のダブルワーカー。comons(コモンス)として、さいたま市にある古着と植物を扱うショップ「tokiwa」に定期出店するほか、自宅の「和室アトリエ」でスワッグ作りのワークショップを開催。音楽とキャンプのイベント「OTO camp」の主催も。Instagramは@komo1220から。
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