【楽ちんお掃除レッスン】前編:場所ごとの洗剤は必要なし? 4本あればOK、プロに教わる「普段の掃除」のキホン
編集スタッフ 野村
年末が近づき、いよいよ大掃除シーズン。
「やらなきゃ」という気持ちはあるけれど、大変さに諦めてしまったり、見えるところだけをとりあえず掃除して、あとは来年の自分に責任を投げてしまうことも。
もし準備や進め方で家の中がきれいに保てる「掃除の目安」が分かったら、今年の大掃除に活かせるだけでなく、来年以降もずっと強い味方になってくれるかもしれません。
そんな時に知ったのが、ナチュラルクリーニング講師の本橋ひろえさんのお掃除術でした。
ナチュラルクリーニングとは、環境や手肌にやさしい洗剤を使い、なるべく楽ちんにできるお掃除方法。
今回は本橋さんに、家掃除に必要な洗剤のご紹介や、コツコツ掃除継続の秘訣など、知れると心強くて、嬉しい知識やアイデアを教えていただきました。
場所別に洗剤を用意することをやめてみよう
まずは本橋さんに、掃除を苦手にしないための第一歩について教わりました。
本橋さん:
「掃除をしようと思う時、市販の洗剤の多くがお風呂用やトイレ用、キッチン用など、場所別に分かれているので、掃除したい場所用にそれぞれ洗剤を揃える方が多いと思います。
でも私がおすすめする掃除では、まず場所別に洗剤を用意することをやめてみよう、とご紹介しています」
本橋さん:
「洗剤の選び方は、『どこを』掃除するかではなくて、『なに(何の汚れ)を』掃除するのか、と考えて選んでいただくのがおすすめです。
たとえば人の体から出る皮脂は、お風呂、洋服、窓ガラス、どこについても同じ汚れなので、同じ洗剤で落とせます。
そういう風に考えると、場所別に洗剤を分けなくてもひとつの洗剤で色々な場所をキレイにできます。
なので、掃除をする時はまず一度、この汚れはどこから来た、何の汚れなのかを考えるクセをつけると、それに効く洗剤が選べて、家にたくさんの洗剤がいらなくなります」
家の中で一番多い汚れは、洗剤いらずで掃除できます
本橋さん:
「家の中にある汚れは、ざっくり分けると『洗剤がいらない汚れ』と『洗剤が必要な汚れ』の2種類です。
そして家の中で一番量が多いのが、『洗剤がいらない汚れ』なんです。たとえばホコリやチリなどですね。
こうした汚れは、毎日出てくるのでこまめな掃除が必要になりますが、掃除をするのは簡単。掃除機で吸ったり、ふきんで乾拭きしたりでOKです。
砂や泥汚れも、『洗剤のいらない汚れ』に分類されます。床や玄関に落ちている砂も、掃除機をかけたり、ほうきで掃けばきれいになりますし、泥汚れも大抵のものは水で流せば落ちます」
必要な洗剤は、4つだけ。
本橋さん:
「洗剤が必要な汚れの中で、代表的な汚れはこちらの4種類。
・アブラ汚れ
・水アカ・石鹸カス
・カビや雑菌汚れ
・シミ汚れ
なので、4種類の洗剤があれば、家の中の汚れはだいたい落とせます」
本橋さん:
「この中でも、圧倒的に多い汚れは『アブラ汚れ』。家の中で洗剤が必要な汚れのだいたい8割くらいがこの汚れなんです。
調理中に使う油はもちろん、食品からでる汚れや人の体から出る皮脂もここに含まれます」
本橋さん:
「少し化学っぽいお話になりますが、アブラ汚れは『酸性の汚れ』にあたります。だから、その汚れを落とすには『アルカリ性の洗剤』を使います。
市販の洗剤の裏面を見ると、液性という表示のところに酸性・アルカリ性・中性の区別が必ず記載されています。お風呂用やキッチン用などに限らず、『アルカリ性』と書かれてあったら、酸性のアブラ汚れに効果があるんです。
だから、アルカリ性の洗剤を1種類持っていれば、家中のアブラ汚れに対応できますね」
家の8割の汚れはこれでOK。
おすすめの洗剤その1・重曹
△重曹は、「はちみつ容器」など、口がすこし広い容器に移してあげると使いやすい
本橋さん:
「アブラ汚れを落としてくれる、おすすめの洗剤は『重曹』です。
ベーキングパウダーや入浴剤の材料などにも使われているものので、安心して使える洗剤。とってもおすすめです」
△写真では、約2リットルのお湯に、重曹を小さじ5を溶かして重曹水を作りました
重曹は、どのように使うと効果的なのでしょうか。
本橋さん:
「粉のまま使っても効果がないので、必ず水に溶かして、重曹水の状態にします。1%の濃度の重曹水を作るのをおすすめしています」
作り方と使い方
40℃前後のお湯1カップ(200ml)に、2g(小さじ約1/2)の重曹を溶かす。
完成した重曹水に、お掃除クロスを浸して絞り、拭き掃除に活用する。
ポイント
・重曹は水に溶けにくい性質があるので、40℃前後のお湯に溶かす。
・たくさん溶かすと洗浄効果が上がるものではないので、濃度は1%で十分。溶かし過ぎると、乾いた時に白い粉が残ってしまうことがあり、二度拭きの手間を増やすことにもつながってしまいます。
・重曹水をスプレー容器などに入れる場合は、1日で使い切るのがおすすめです。
本橋さん:
「準備した重曹水に浸してしぼったクロスを使って、床やコンロの拭き掃除に使っていただくのがおすすめです。
また、水に溶けにくい性質を利用して、クレンザーとして、シンクの掃除や浴槽の掃除にも活用できます」
水回りの強い味方。
おすすめの洗剤その2・クエン酸
本橋さん:
「水アカや石鹸カスに効果的なのが、『クエン酸』です。
水アカとは、お風呂の鏡にウロコ状に白く残る汚れや、加湿器の底や食洗機に残る白っぽくガリガリした汚れ。水が蒸発した後に残るミネラルやカルシウムです。
石鹸カスは、水道水中のミネラルと泡が立つタイプの洗剤が反応して出る汚れ。洗面器の内側にできるざらっとした汚れや、シャンプーボトルの表面に白っぽい跡などです。
だから、基本的にキッチンやお風呂、洗面所などの水回りでしか発生しない汚れですね」
本橋さん:
「水道水に溶けているミネラルなどはごく微量なので、1日ですぐ白く汚れがつくわけではないんです。半年から1年など、時間の蓄積でどんどん目立って落ちにくくなる汚れです。
なので、水回りの掃除は1ヶ月に1回程度のお掃除でも実は十分なんです」
クエン酸は、どのように使えばいいでしょうか?
本橋さん:
「重曹水を作った時と同じで、1%濃度のクエン酸水を作ります」
作り方と使い方
水1カップ(200ml)に、小さじ約1/2のクエン酸を溶かす。
完成したクエン酸水を、スプレー容器に入れて使う。
使い方のコツ
・洗面室の鏡や蛇口など水アカが気になる箇所に、スプレーでクエン酸水を吹きつけ、そのあとクロスで拭き掃除をしてあげると、たいていの水アカはきれいに落とせます。
・週に1回程度を目安にクエン酸水を使って掃除してあげると、きれいな水回りを保ちやすいです。
・スプレー容器に入れたクエン酸水は、2〜3週間で使い切るのがおすすめです。
本橋さん:
「頑固な水アカ汚れには、『クエン酸水パック』がおすすめです。
蛇口など、汚れが気になる箇所にクエン酸水をスプレーし、キッチンペーパーで包む。その上からもう一度クエン酸水をスプレーして、5分ほど放置します。
時間が経ったらペーパーをはがし、クエン酸水がついた部分を水気が残らないように、しっかりとクロスで拭いてあげると、きれいになりますよ」
カビやシミ汚れを落とすには?
消毒用アルコールと過炭酸ナトリウムがおすすめ
本橋さん:
「酸性やアルカリ性に分類されないのが、『カビなど雑菌類とウイルスの汚れ』と『シミなどの着色汚れ』。
雑菌を落としたい時には、除菌効果の高い洗剤を使う必要があり、重曹やクエン酸では効果が足りません。
そこで除菌効果の高いものとしておすすめなのが、消毒用アルコールと過炭酸ナトリウムです。
消毒用アルコールは、薬局などに売られている『消毒用エタノール(アルコール分80%程度のもの)』がおすすめ。過炭酸ナトリウムは一般的に「酸素系漂白剤」として売られているものを指します」
アルコールはお掃除にどのように使えばいいのでしょうか。
本橋さん:
「35%濃度のアルコール水を作って使うのがおすすめです」
作り方と使い方
110mlの水に、消毒用エタノールを90mlいれて、合計200mlのアルコール水を作る。
アルコール水を、スプレー容器に入れて使用する。
ポイント
・アルコール水は、お酒が傷みにくいのと同様に2〜3ヶ月は劣化しにくいので、スプレーボトルに入れて使うのが便利。
・ただし、アルコールは溶解作用が高いので、プラスチックボトル自体が傷む可能性があります。ボトルを選ぶときは、『アルコール使用可』と表記があるものを必ず使用してください。
本橋さん:
「アルコールには、アブラ汚れを溶かして落とす作用があるので、食卓周りの除菌に効果的です。
揮発性が高いので、拭き上げた後にアルコールが残ることもほとんどありません。二度拭き要らずで、掃除が苦手な方の救世主のような存在になってくれると思いますよ。
アブラ汚れには重曹もおすすめしましたが、アルコールで拭いておくと、アブラ汚れが落ちると同時に除菌までできちゃいます。
除菌まで必要ない床掃除には重曹、食卓周りなどの除菌をしたい時にはアルコールといった具合に、用途によって使い分けしてみてください」
本橋さん:
「過炭酸ナトリウムは、漂白剤として売られている通り、洗濯のシミ抜きや、除菌・消臭に役立つ洗剤です。
またギトギトのアブラ汚れにも効果的で、たとえばキッチンで使うふきんの除菌と漂白、換気扇やコンロの五徳の汚れ落とし、排水口の掃除などにも活躍しますよ。
60℃くらいのお湯(約2リットル)に小さじ1の過炭酸ナトリウムに溶かし、つけ置き洗いをすると効果的です」
***
本橋さんのお話を通して、家の中の汚れについての解像度がぐっと上がりました。
私の家では1歳の子どもがいるので、よく食べこぼしの掃除をします。いつもはウェットシートで拭くのが基本でしたが、その掃除に重曹水やアルコールスプレーが加われば、食べもののアブラ汚れをしっかり落とせて安心だなと心強く感じています。
続く後編では、洗剤の知識を持った上で、窓掃除やキッチン掃除の方法、コツコツ掃除継続の秘訣について教わっていきます。
(つづく)
【写真】井手勇貴
もくじ
本橋ひろえ
ナチュラルクリーニング講師。北里大学衛生学部化学科卒業後、化学薬品企業に就職。出産後、専業主婦となるが、自身と子どものアトピー体質をきっかけに、掃除や洗濯、洗剤を化学的に解説するナチュラルクリーニング講座をスタート。著書に『ナチュラルおせんたく大全』(主婦の友社)など。
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