【連載】あの人の暮らしにある「北欧」のこと。no.08:お茶の時間

ライター 藤沢あかり

夜の9時。
今日も一日おつかれさまの合図のように、小林さんは赤いポットを火にかけます。

たっぷりのお湯が沸くまでの間、どれにしようかとコーヒー豆を選ぶのは夫の役目です。好みの深煎り豆をミルにかけると、あたりはたちまちいい香り。

コーヒーをゆっくり淹れる隣で、ちいさな甘いものを準備するのは小林さんです。いただきもののマドレーヌ、ひとくちサイズのクッキー。でも、なんにもなければ、それでも大丈夫。大切なのは、仕事や家事の手を休めて、お茶の時間を過ごすこと。

 

デンマークのホームステイ先でも、かならずお茶の時間がありました。日に2度、壁を塗ったり床を張ったりの大工仕事や庭仕事の合間に声がかかります。

「そろそろ、お茶にしましょうか」

忙しいときや作業に夢中になっているときほど、お茶の時間はほっとできました。一緒にテーブルを囲み、温かい紅茶を飲んでいると、自然と会話が生まれます。心とからだがほぐれて、「よし、もうひとがんばり」という気持ちになるのです。

北欧のひとは、こんなふうにお茶の時間を大切にしているんだなあと小林さんは思いました。同時に、思い出すのは実家で過ごした風景です。

 

夕飯が済み、家族みんなが思い思いの時間を過ごす夜。そこにお母さんが呼びかけます。

「コーヒー入ったわよ〜」

その声で、家族それぞれが、なんとなくまた居間に集まりました。コーヒーメーカーで淹れるいつもの味、スーパーで買えるいつものお菓子。「子どもは飲んじゃダメ!」なんて言われず、かわりにミルクをたっぷり入れてもらうのが、小林さんのコーヒーの味でした。

10代の多感な時期も、慣れないデンマークのホームステイ先でも。お茶の時間が、こころをあっためてくれました。

コーヒー片手にお菓子をつまんで、なんでもない話をする。そのなかに、ちいさな打ち明け話や気持ちを軽くする瞬間が潜んでいたのかもしれないと、いまとなっては思うのです。

さて、おいしいコーヒーを飲みながら、今日は夫婦で映画を見ましょうか。ミルクはもちろん、たっぷりで。

 

 

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小林 夕里子(こばやし ゆりこ)

2007年に株式会社イデーに入社、VMD(ビジュアルマーチャンダイザー)として全国の店舗ディスプレイ監修や、ウェブやカタログのスタイリング、VMD講師も務める。著書に『暮らしを愉しむお片づけ』(すばる舎)。
Instagram : yuricook

 

Text : Akari Fujisawa
Photo: Ayumi Yamamoto

 

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