【はたらきかたシリーズ】篠田真貴子さん(ほぼ日刊イトイ新聞)第2話:自分を助ける手段をたくさん持っておく
編集スタッフ 長谷川
聞き手・文 スタッフ長谷川、写真 田所瑞穂
「ほぼ日」こと、ほぼ日刊イトイ新聞を運営する東京糸井重里事務所で、小学6年生の息子さんと小学2年生の娘さんを育てるお母さんであり、取締役CFOを務める篠田真貴子さんにお話を伺っています。
財務や会計だけでなく、人事制度、組織づくりなどにも関わり、忙しい日々を送る篠田さん。仕事と子育ての良いめぐりを生むためには、どのような工夫や考えがあるとよいのでしょうか。
連載第2回では、第一子を授かった篠田さんが先輩からもらったというアドバイスや、仕事と育児をうまく進めるためのアイデアを教えてもらいます。
もくじ
「時間」を軸に、住む場所を考える。
第1回で篠田さんの1日のスケジュールを振り返りました。17時半に退社し、18時すぎに帰ってくる娘さんを迎え入れられるほど、職場と自宅はとても近い距離にあるといいます。
篠田真貴子さん:
「長男を妊娠したときに先輩たちから、『職場と住まいと保育園が30分以内でまわれる』ことを勧められました。この3拠点の距離は短ければ短いほどいいと。
その当時は今より遠くに住んでいて、地域保育園も特にゼロ歳児は話にならないほどの待機児童数でした。そこで産休に入った1週目の週末に、通勤がしやすく、保育園に入園する確率も高かった今の家に引っ越したんです。結果的に、先輩の言う『30分圏内のトライアングル』に来られました。
たとえば、子どもが熱を出した時にも30分以内でお迎えできますから、間に合えばその日に小児科へ行けるんですよね。それができないと、そのあとの仕事に半日から1日は影響が出てしまいます」
都心の良さは、1時間だけ顔を出せること。
現在、篠田さんは東京の都心部にお住まいです。「とにかく時間の確保を大事に考えています。お家賃が高いとか、子育ての環境とかの問題はあっても、時間には替えられないと初めから強く思っていました」と篠田さん。
都心部に住むことのおまけとして、友達に会いやすくなる良さもあるようです。
篠田真貴子さん:
「子育てと仕事をしていると、なかなか友達と会えませんよね。でも都心だと、みんなが飲んでいるところと自宅が近いんですよ。友達に会える機会は貴重だし、大事にしたいので、子どもが寝てからの二次会のみ合流とか、22時〜0時のうちに1時間だけ顔を出すとかしています。
夫が早く帰ってきたときは協力してもらって、19時半から1時間だけ参加して、21時には帰って子どもを寝かしつけたりすることも。まさに『スキマ社交』みたいな感じです」
ひとりでやろうとせずに、手段を持っておく。
篠田真貴子さん:
「仕事をしていて、子どもがまだ赤ちゃんで大変な頃は、ベビーシッターさんに来てもらっていました。子どもがふたりになって、一時は家事の外注も。そういう面では出費もすごいんですけれど、時間に余裕がわずかでも生まれますからね」
篠田さんがいつも意識しているのは「自分が不機嫌にならない」こと。お金についても、旅行やネイルに使っていたものを、子どもが生まれてからはベビーシッターや家事代行などに切り替えたといいます。
他にも、「いざというときに子どもを見てもらえる手段」をいくつか持っておくと良いそうです。
篠田真貴子さん:
「同じマンションに、私の妹一家も、弟一家も、住んでいるんですよ。
私がどうしても夜遅くなってしまうときは、彼らの家でごはんを食べさせてもらったりお風呂に入れてもらったりできて、本当に助かりますね。子ども同士の年齢が近く、いとこ同士で遊びたいので、親としてもちょっと気がラクです。習い事もいとこ達と同じところにしていて、一緒に行き帰りすることもあります。
私はきょうだいに助けられていますが、保育園で仲良くなったお母さん同士でサポートしあう方もいますね。
私の職場では、事前に約束した成果物の品質と納期を守れば、いつどこで仕事をしてもいいという基本のスタンスがあります。子どもが体調不良で保育園や学校にいけないときは、私はなるべく家で子どもをみながら仕事をしますが、どうしても出社が必要で預けるあてがない場合は、職場に連れていきます。
社内のミーティングなら子どもを横に座らせたりしてね。そしたら『次はいつ会社に行けるの?』なんて、出社に意欲的な子どもになりました(笑)。
子どもにとっても、私が仕事をしているリアリティが、良い影響になるんじゃないかなと思っています。自分の将来を考えるときに、『働く』ということがポジティブなイメージからスタートできるのかなって」
自分の手がまわらない時に、助けあえるための手段やコミュニティを持っておくのが大切なんですね。そのサポートがあるだけでも、気持ちがいっぱいいっぱいにならずにすみそうです。
子どもにとっても、よその家の子どもや職場の大人たちとのふれあいが、コミュニケーションの訓練になるのでしょう。
「上司がわかってくれない」と嘆く前に、自分の働き方をまず決める。
篠田さんは長男の出産を経て復職した際に、それまでの人事企画の仕事から、ファイナンス管理部門へ異動しています。決め手は、内勤であり、育児との両立がしやすいと考えたからです。その経験はいま、結果的に東京糸井重里事務所のCFOという形につながっています。
引っ越しをしたのも、手段やコミュニティを持つのも、すべては篠田さんが考えた「仕事と育児の両立」を叶えるために必要なこと。篠田さんは乗組員(ほぼ日のスタッフ)にも「どういう働き方をしたいか」を問いかけると言います。
篠田真貴子さん:
「産休明けや育休の相談をするときに、乗組員それぞれに『どういう働き方をして、この会社でどういう成果を出したいと思うのかを、”あなた”が提案してください』と伝えています。
その内容がお互いに満足いくものか、それでは足りないのか。対話を重ねた上で、実現するように制度の運用や工夫は一緒にやりましょうと。
一般的かどうかはわかりませんが、私自身も、私が知っている『お子さんがいて仕事をどう両立させようか』を考えている方も、働く環境を自ら作っていると思うんです。
それこそ10時から15時までと時間を短くして、最低限の生活の糧になる報酬と、最低限の社会関係があれば自分はOKです、というふうに決めるのも、立派だと思うんですよね。勤務時間は短くても周りによろこんでもらえる職場関係を、自分自身でつくるためのスタートが切れるから。
そこを曖昧にしたまま、制度がないから、理解がないから……みたいに何もしないのはもったいないし、そこから先に行くのは難しいのではないかなと思います。基本的に上司は『わからないのが当然』です。嘆いたり悲しんだりせず、ただの事実として受け止め、感情を挟まない方がいい。
働きかたを変えたい、模索したいという動機は、どちらかといえば子どもを持って仕事をしたいという親の側にあるはず。そこは人のせいにできないと考えるのが自然ではないでしょうか」
子育てと仕事を両立したい親たちだけでなく、篠田さんのもとには「部下のことがわからない」上司たちからの相談もくるのだとか。どうやって話し合いを進めていけば、お互いにとって良い関係をつくっていけるのでしょうか。
責任を全うするために必要なこと、子育てと仕事を両立する人たちへのメッセージなど、第3話に続きます。
もくじ
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