【フィットする暮らし】シェフ 相場正一郎さん 第3話:先回りをやめて、「今やっていること」だけを考える。
編集スタッフ 二本柳
聞き手・文 スタッフ二本柳、写真 鍵岡龍門
自分らしく心地いい暮らしをつくっておられる方を取材し、お客さまにお届けするシリーズ「フィットする暮らしのつくり方」。Vol.09は、イタリアンレストラン『LIFE』のオーナーシェフ・相場正一郎さんにお話を伺っています。
サーフィンにカメラ、キャンプ、音楽も… 際限なく挙げられる相場さんの趣味の数々。
ハードな飲食業で働くなか、パワフルに好きなことを追求しつづける相場さんの「フィットする暮らしの作り方」をお聞きしました。
もくじ
先回りをやめて、「今やっていること」だけを考える。
父親の影響で多趣味な性格に。
相場さん宅のそこかしこに点在する、たくさんの趣味道具。
サーフボードからスケートボード、ギターにカメラ、時計… どこを切り取っても、その遊び上手ぶりが伝わります。
そんな趣味人の相場さんを生んだ背景には、同じく多趣味だというお父さんの影響がありました。
家具職人であるDanny Hessが作るスケートボード。
相場正一郎さん:
「父親は僕と同じように自営業をやっていて平日休みのスタイルでした。アウトドア好きな性格だったので、ときどき平日に学校を休んで山に連れて行ってもらったりすることもあったんです。
仕事のかたわら何かしら趣味に打ち込んでいた父親を眺めて育ってきたから、気付けば自分も同じようになっていました」
始まる前から心配するのはもったいない!
とはいえ仕事のない休日は、なるべく家族との時間を過ごすという相場さん。一体いつ、趣味の時間を取っているのでしょうか。
相場正一郎さん:
「趣味は基本的に平日をつかっているんです。
例えばランチタイムに仕事が入れば夜はサーフィンに。ディナータイムに仕事があれば早朝にサーフィン。そんな感じで、仕事の合間に趣味の時間も確保してます」
なるほど。でもそれって…すごいスケジュールですよね。
多くの人が日曜日でさえ翌日からはじまる1週間に備えて夕方から心と体をととのえるという中で、相場さんのワークスタイルは型破りともいえそうです。
相場正一郎さん:
「実は、そんなに変わらないと思っているんです。
翌日のことを先回りして考えれば、遅くなる前に帰ろう…となるかもしれない。『明日も仕事があるから』と。でも、実は20時に帰っても24時まで飲んで帰っても、翌日から始まる仕事のパフォーマンスって大して変わらないんじゃないかって思うんです。
日曜の夕方から整えなくたって、月曜日からペースを作っていくのでも遅くないんじゃないかと。
仕事のことは仕事が始まってから考えればいい。先回りして心配することをやめると、時間って意外と見つかるものかもしれません。
もちろん、僕みたいに家庭のある人はまた別の意味で早く帰らなくちゃということがあると思いますが…」
アウトドアだけでなく、音楽好きな一面も。
趣味のひとつである山道具も。
遊ぶときは遊びのことだけを。仕事のときは仕事のことだけを。
そんな風にシンプルに物事をとらえていくと、余計なストレスは無くなるのかもしれません。
そう考えれば平日だって、わたしたちも仕事から離れた時間はサーフィンに・・・
とまでいかずとも、自分の好きなことに熱中する時間が平日にあったっておかしくはないのです。
つづけるって、難しい。いつも新鮮な気持ちを持ち続けるために。
写真はかなりの腕前。カメラマンとの作品撮影も欠かさない。
そんな趣味に妥協を許さない相場さんを、10代の頃から隣で見てきたのが妻の千恵さん。
千恵さんから見ると、相場さんがこうして色々なことに興味を持ち続けるのには理由があるようです。
相場千恵さん:
「『LIFE』も開店してから13年になりましたが、仕事に限らずあらゆる物事において『つづける』ということが1番むずかしいことだと思うんです。
それがどんなに自分の好きなことであっても、つづけるのって難しい。
それでもつづけるためには、やっぱり変わらないようでいて常に変わっていなければいけないんですよね」
「例えばイベントにしてもメニューにしても、新しいスタッフと付き合うなかでも何か新しいことをやってみて、『あ、よかったな。つづけてきてよかったな』って。微量でもいいから自分で感動をする。
その繰り返しで、物事ってつづけることができているんだと思うんです。
そのためには色々なことに興味を持って、そこでの新鮮な気持ちを仕事や暮らしの “変化” につなげていかなければいけないと思ってます」
雑貨好きが転じて、『LIFE』でオリジナル雑貨や服飾も販売。
どんなに「好き」ではじめた仕事や習慣も、それがルーチンに化したとき、そのうちそれを続けること自体が「苦痛」になっていくことがあります。
好きで始めたはずなのに… そんな落胆を避けるために私たちができること。それが、常に新しい発見を見出すための新鮮な目を養うことなのかもしれません。
仕事の合間をぬっては、海に出かけたり、山に登ったり…
好きな仕事からも時々離れ、相場さんが興味の対象を切らさずにいることは、繰り返す毎日の暮らしにいつも新鮮な思考をもたらしてくれているよう。
そしてそんな新たな風が『LIFE』というお店が長年愛されつづけていたり、相場さん一家がいつまでも仲良くいられたり、あらゆる「つづける」ことにつながっているようでした。
(つづく)
もくじ
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