【はたらきかたシリーズ】古道具店「LET ‘EM IN」店主・原尊之さん 第2話:手のひらの興味に、自分を閉じ込めない。

編集スタッフ 長谷川

151103letemin_work_10聞き手・文 スタッフ長谷川、写真 廣田達也

この連載では、東京・国立にある古道具店「LET ‘EM IN(レットエムイン)」の店主、原尊之(はらたかゆき)さんの働き方を伺っています。

第1話ではインテリアショップでの勤務と店長を経験し、4年間にわたる開店準備に入るまでを振り返りました。第2話では、古物商の免許を持つ人だけが入れる「古物市場」で得た気づきなど、「物の見方と考え方」をメインに伺います。



 

誰も見向きもしなかったものを競り落とした。

ネットオークションで家具を売りながら、LET ‘EM IN開業のための商品もストックし始めた原さん。仕入れのために訪れる古物市場で驚きの体験をします。

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原尊之さん:
「競り落としたら『おぉー!』と歓声が起きて(笑)。今まで誰も見向きもしていなかったものを買う、若くて変なやつがきた、みたいな感じがあったんですよ。

僕はすき間を縫って面白いものを買ったわけではありません。素直にかっこいいと感じたのだけれど、業界の先輩たちから見ると『不思議なものを買うやつだな』と思われたみたいです。

ということは、僕が買った物はたぶん誰も見つけていないし、扱っていないのだろうと。そこからは、ひたすら “なぜこれがいいと思ったのか” を言語化して、勘と感覚で良いと思える物を広げていこうとしましたね

第1話でも「なんとなくで終わらせず、自分の感情を言葉にする」ことの大切さを教えてくれた、原さんらしいエピソードです。

 

良いものに気づくためには、悪いものも見る。

古物市場は原さんにとって鍛錬の場になっているといいます。UFOキャッチャーのぬいぐるみから、北欧デザインの名作チェアまで、さまざま集う古物市場はまさに戦場。

その場で商品の値付けをイメージして、競り勝たなければいけません。原さんも古道具店15年の経験から、ひと目見れば生産国や年代をほとんど当てられるそう。

そして、時には「ただ者ではない感じ」を放つ家具もあるのだとか。それに気づく直感力を磨くには、良いものも悪いものも見ることが大事だと言います。

原尊之さん:
「椅子の脚が見えた段階で『あの脚はヤバイ!あの背もたれもちょっと普通じゃない』なんて思うこともあります。

それに気づくためには、良いものも悪いものも見ないといけない。悪いものを見ないと“良いものの良さ”がわからないですし、良いものを見ないと“悪いものの悪さ”にも気づけなくなる。

でも、良いとか悪いとかっていうのは相対的なことで、“良さの質”が違うだけのこともある。格安の家具には工夫があり、名作の家具には凄みがある。それを理解しているかどうかです」

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消極的な選択で、自分の感覚を広げていく。

そして原さんは、自ら積極的に選ぶだけではなく、「消極的な選択」をいつも大事にしています。

原尊之さん:
「自分で積極的に選びとったものって、実は狭い世界だけを見ていることもあります。

たとえば、目の前に『今日はこれを食べなさい』と、なんだか気が進まない、どこの国のものかもわからないような料理が出てきた。空腹だし、食べざるを得ない。口にしてみると、あれ、結構いけるぞ。もうひと口食べてみたら、前よりも美味しく感じられる……。

そんなふうに、人の感覚はちょっとの外部要因があって、初めて広がっていくところがあるのかなって思うんです。

古物市場でも本当は欲しいものしか見たくないし、そのほうが手っ取り早いんですが、市場では欲しいものが競りにかけられるまで順番を待たないといけないんですね。強制的に見たくないものを見る場に居させられると、『この物はそんなに悪くないな』って思えたりすることもある。

欲しいものだけをピックアップして持っていくと、それだけで体験が終わってしまう。そこで、我慢して見ざるを得ないものまで見ることで、いろんな気づきがあって、すごく面白いです。

勤めていたインテリアショップで売る物の良さを考え抜いた経験も同じですね。今でもいろんなものを面白がれるための鍛錬として、意識して物を見るようにしています。

LET ‘EM INを始めて7年ぐらい経って、『消極的な選択』はお店のテーマになっているし、仕事以外の面で自分のテーマにもなっているところもありますね」

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僕の生活を振り返ってみたら、最近は原さんの言う「ちょっとの外部要因」が足りていなかったな……と感じました。

たとえば、いつも手にするようになったスマートフォンは、「消極的な選択」とは逆のところにあるのかもしれません。好きなもの、見たいものを手元ですぐに検索できるけれど、情報を受け取ったら体験はオシマイ。興味に合う情報がオススメされてくるアプリも便利だけれど、我慢して見るようなものを避けてしまっているともいえる。

ふいに出会ったもの、知らないことを、「そうせざるを得ない状況」と思って大事にしてみる。そこから出会った感情を深掘って、言葉にしてみる。興味を持てなかったことからも、面白がれるポイントを探す。

そうすれば日々が楽しくなるだけでなく、良いと感じたものの良さをもっと深く納得できたり、人に伝えやすくなったりできそうです。

 

ノックしている“人や文化”を取り入れる。

原さんが「消極的な選択」を大切に考えるのは、LET ‘EM INの店名にもつながります。もともとはポール・マッカトニーが1976年に発表した楽曲のタイトル。日本では『幸せのノック』と訳され、愛されている歌です。

LET ‘EM INを言い表すなら「中に入りたいと思っている人を入れてあげる」といったニュアンスなのだそう。

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原尊之さん:
「お店のスタンスを、短いセンテンスで表現できるフレーズはないかと探していました。この曲は『誰かが扉をノックしている、開けてみたらキング牧師だった、中に入れてあげようよ』といった歌詞なんですね。それが僕のやりたいことや感覚にぴったり合いました。

相手を理解して、自分を信じてもらい、お互いに歩み寄ることで、いろんな壁がなくなって、いろんな要素が混ざり合える世界になると思うんです。

そのためには、今まで面白くないと思っていたものも、面白いと思って中に入れてあげることです。“自分とは違う要素をもっている人や文化”に、何か共感できることを見つけて、生活やマインドに取り入れていこうと。

『そういう世界を実現するために自分はどう貢献できるか?』をいつも忘れないようにしたいですし、その気持ちをお店としても表現したいんですね」

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原さんがLET ‘EM IN開業のため最初にストックしたのは、スチールのフレームに木が混ざったような、1950年〜1960年代の日本製の電気スタンドだったそう。異素材を取り合わせて日本で生まれた商品からお店が始まっているところにも、僕は原さんの表現したいことの一端を見た気持ちになりました。

第3話では、「空間としてのお店の良さ」などを深めていきます。お気に入りのお店がもっと好きになれるヒントが、そこにあるかもしれません。将来、お店を持ちたい人にも、良い気づきがあるはずです。

(つづく)




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