【愛着が宿る革】第2話:ものづくりの裏側へ。靴職人の革への想い。

編集スタッフ 齋藤

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革製品を通し、ものへの愛着や想いをお伝えする特集を、全3話でお送りしています。

1話目では「自分に合った革の探し方」を、革靴屋「そのみつ」の常木(つねき)さんに教わりました。

そして2話目の今回は「そのみつ」の代表であり職人の園田(そのだ)さんに、ものづくりへの想いやこだわりについて取材。

自分が持っているものがどんな想いで作られたのかを知ることで、愛着もまた増すように思います。

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実際に靴を愛用しているクラシコムのスタッフは「そのみつ」の「ひとつひとつを大切に作る」という想いに惹かれ、購入を決意したそう。

そしてそれ以来、買っては捨てていた靴選びの仕方を変え「永く使えるもの」を揃えるようになったのだとか。

そんな想いを抱かせてくれる靴を、園田さんはどのようなこだわりを持って作っているのでしょうか。

 

100足全部おなじ顔、そうではない靴を作りたくて

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23歳で革靴職人になり、およそ23年もの年月を、靴作りと向かい合ってきた園田さん。「革に触れることは、もう日常」と、自然でゆったりとした、けれど芯のある口調が印象的でした。

「そのみつ」の特徴はなんと言っても、オーダーを受けてから1点1点使う人の足に合った靴を作ること。どうしてこのようなスタイルになったのでしょうか。

園田さん:
「僕は元々、大手ブランドの靴を作っていました。大手となると、安定した品質を保ちながら、量を作ることが必要とされます。なるべく変化を少なくするために、革も薬品を使って質感を同じにしているものが多い。100足あれば100足、すべて同じ顔に仕上げなくてはなりません。

それももちろん、しっかりとした技術だと思っています」

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園田さん:
「でも僕はそれよりも、作ったその人にしか出せない空気感があるものに魅力を感じる。しかもそれが偶然ではなく、しっかりと継続できるだけの技術になっているものが良いなと思います。

当時は日本で革靴を作る工房なんてほとんどなかったから、みんなに止められました。革を小ロットでは売ってもらえなかったし、道具屋に行っても専用の道具すら置いていなかった。

でも自分の勘に従って、このやり方以外はない!と思っていましたね」

 

20年を超えて、ようやく靴作りが楽しい

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「靴作りの工程で難しい点はどこですか?」と聞いてみると、「全部」という答えが返ってきました。どんなに細かく面倒な工程でも手を抜いてしまうと、できあがった時の印象が全然変わったものになってしまうといいます。

園田さん:
「もちろん形にはなっているんです。ただ、全体の『空気感』みたいなものが、何か違うんですよね。だからどれも手は抜けない。

特に靴作りをはじめた頃は思ったような形にならなくて、とにかく苦しかった。自分の頭の中にあるイメージとできあがりが、どこに原因があるかわからないけれど違うんです。

僕が好きなのは、素材のことがわかった人が作ったもの。

その理想にかなったものづくりができるようになってきたのは、20年以上やってようやく最近のことです。

だからやっと、靴作りが楽しくなってきました」

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そもそも革は天然の素材。そのため同じものはひとつとして存在しなく、素材選びも日々試行錯誤だといいます。

園田さん:
「革もワインなどと一緒で、どういう場所で作られたかによって質感が異なります。例えば暖かい地方の革は、牛も汗をかき、毛穴が開くから質感もゆるい。寒暖の差が激しい地方の方が、しまりのある革が多いなどの違いがあります。

そして同じ業者で買っても、買う時期によって革の質が全然違うんです。だから絶対ということがない。作る段階になって『思っていたのと違う』なんて場合も、よくあることです」

 

「使う」ではなく、革と「良い関係」をつくる

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園田さんは革のことを「その人」と言います。

その理由は、革が持つ「個性」に隠されているようでした。例えば同じ「牛革」といえど、革によって固有の癖があるのだとか。

園田さん:
「革にも『じゃじゃうま』や『気合が入ってる』のまで、いろいろいるんです。

うまく伸びてくれなかったり、途中まではうまく伸びたと思っても、急に硬い部分があったり。そういう時は、その革に合う対応をします」

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園田さん:
「熱風を当てたり、力を入れたり、時には強制的に成形をしなくてはならない時もある。なんでもかんでも撫でているだけでは、形になりません。

そもそものデザインを変えるなどできることはするけれど、それでもしょうがない時はありますね。

でも、無理矢理成形するなんて、できればやりたくないんです。

理想はお互いに、無理がないこと。革と良い関係が作れればいいなと思います。

そのためにも、素材選びは重要です」

 

手間の分だけ、永く使えると信じて

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園田さん:
「靴作りは革という平面のものを立体にしなくてはなりません。そのため立体の状態に馴染ませる時間が必要になります。その時に、熱い釜の中に革を入れ、熱を加えることで時間を短縮するという方法があります。

ただ僕は、強制的に作ったものはそれだけ早くダメになるんじゃないかなぁと思っているんです。例えば流行もそうですが、パッと勢いでやったものは、パッとダメになる。

革の成形もゆっくり馴染ませたものの方が、崩れ方もゆっくりだと思います。そのため『そのみつ』では2〜3日は置いて、自然に形が馴染むのを待つようにしているんです。

元は生き物だから、なるべく無駄にはしたくない。どうしたら永く使えるか、考えています」

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第1話、第2話を通して、革の種類から作り手の想いに至るまで、その魅力をお送りしました。

素材の個性を見極め、しかるべき手間暇をかける。そうした丁寧な作り手の気持ちは、手にした人にもきっと伝わる。まるでリレーみたいに、想いは繋がっていくのかもしれません。

そして職人まではいかなくても、使い手にも少しでも知識があれば、革製品をもっと大切にできそうな気がします。

そこで次回の第3話は「革のお手入れ」について。基本のお手入れから、飽きてしまった時のちょっとしたカスタマイズの方法まで聞いてきました。

第3話も、ぜひお楽しみに。

(つづく)

【写真】木村文平


もくじ

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そのみつ

東京都谷中に店舗と工房を構える革靴屋さん。(工房は外からの見学のみ可能)多彩なパターンと好みの革の組み合わせを選び、足を採寸してからオーダー。約4〜6ヶ月の期間をかけ、職人がひとつひとつ丁寧な手作業で制作してくれる。

http://www.sonomitsu.com/


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