【日々を綴る】前編:私が私に立ち返る場所。スタッフ2名の日記との付き合い方

編集スタッフ 岡本

朝、鏡で自分の顔を見たときや、パソコンを打ち込む手を見たときに。暮らしのふとした場面で、私なりに歳を重ねてきたことを感じる瞬間があります。

いろいろな選択を重ねてたどり着いた今だけれど、そのひとつひとつの日常はささやかでなかなか記憶には残っていないもの。

たしかに過ごしてきた毎日を手触りのあるものとして残せたら、そんな思いから「日記を書きたい」という気持ちを抱き続けてきました。

好きな日記帳に出合えなかったり、忙しくて書くのを忘れてしまったり。思うように日記と付き合えなかったこともあったけれど、それでもその切実な思いがなくならないのは、自分が自分の過去に励まされる、日記にしかない良さを信じているからかもしれません。

15周年企画として本日発売となった3年日記には、「自分らしく時を重ねていけるように」という願いが込められています。

なんてことない日々に寄り添い、書き記すことで、3年後には自分だけの特別な物語が出来上がる一冊です。

この特集では、4名のスタッフを通して、人それぞれの日記への向き合い方についてお届けします。前編では、これまでずっと日記を書いてきた2名が登場し、後編では、日記は三日坊主で終わってしまうというスタッフに話を聞きました。

「3年日記」はこちらから

 


スタッフ二本柳
「日記帳を持って
喫茶店へ行くのが癒しの時間です」


まず話を聞いたのは、2歳の息子の育児に奮闘中のスタッフ二本柳。幼い頃から日記は身近なもので、二本柳にとってなくてはならない存在なのだと話します。

スタッフ二本柳:
「日記を書く時間が、昔からとても好きなんです。

好きなおやつやコーヒーをおともにして日記と向き合う時間が日々の小さな楽しみになっています」

スタッフ二本柳:
「10代の頃からずっと日記を書き続けているのですが、今は子どもの観察日記になりました。

内容は取るに足らないことばかりですが、『書く』ことで日々の何気ない瞬間に意味が生まれるような気がするんです。

なんとなく過ごしていると1週間、1ヶ月があっという間に過ぎてしまって。毎日忘れたくないことが山ほどあるのに、人の記憶って切なくなるほど曖昧ですよね。

だから日記を書くことで、『記憶』の引き出しを少しでも増やそうとしているのかもしれません。ケの日の記憶がきらきらしていたら、人生も豊かになると思うので」

スタッフ二本柳:
「もちろん毎日がいい記憶ばかりではないけれど、日記に書いてみるとどんなことも物語になるから不思議です。

例えばその日に感じたちょっと嫌だったことや心が揺れ動いたことも、その出来事と少し距離を取れるというか。

渦中にいると大変! となることも俯瞰してみると、これも人生の『味』になってるかなと妙に納得できる気がしています」

 

子どもを縦軸で観察。3年日記と出合って

スタッフ二本柳:
「3年日記というものに出合ったのは、姉にプレゼントされたことがきっかけでした。

出産後、これは息子の観察記録としても良いぞ!と2冊目を購入。連用日記って同じページで1年前、2年前の『今日』を読めるのがとてもいいんですよ。

つい他の子と比べて落ち込みそうになったとき、2年前や1年前の息子の様子がすぐに分かるので『息子なりにちゃんと成長してるから大丈夫』って思える。連用日記を書いていてよかった、と私自身が一番励まされています」

スタッフ二本柳:
「私がこの日記を書いている理由はもうひとつ。いつか息子が大きくなったら渡したいなと思っているんです。

私自身もそうだけれど、子どもの頃の記憶ってそれほどはっきり残っていないですよね。ましてや生まれてから今の息子の年齢までってほぼ覚えていないもの。

でも自分も知らない『かつての自分』がこんなふうに一生懸命に生きていたんだって、この先の未来で知ることができたら、それって面白いんじゃないかな。もしかしたら彼を支えることもあるのかもしれないと。大袈裟かもしれないですけどね」

 

日記を書くとスッキリ。
わたしの好きな休日の過ごし方

スタッフ二本柳:
「できるだけ毎日書こうと思っているけれど、疲れていたり書く時間が取れなかったりする日ももちろんあります。

空欄があると少し気になるけれど『この日は日記を書く余裕がない1日だったんだな』という記録でもある。今使っている連用日記も空欄がけっこうあります(笑)

平日に時間を取るのが難しい場合は、週末に日記と本を持ってカフェに行き1週間分をまとめて書くときも。

これも書くスペースが限られている連用日記だからできる日記との付き合い方だなと感じています。

ゆっくり1週間を振り返りながら日記を書いていると心が落ち着いてスッキリするので、私の好きな週末の過ごし方ですね」

スタッフ二本柳:
「当店の3年日記は私のように外出先で書きたいという人にもぴったりだなと感じました。

カフェで書いていても周りが気にならない小説のようなデザインが素敵ですよね。

今書いている連用日記はもう3年目なので、書き終えたら次はこれを使いたいなと思っています。

筆圧や文字の大きさにもそのときの自分がそのまま表れる。日記だからこそ残せるものをこれからも書いていきたいです」

 


店長 佐藤
「人生に迷っていた時期に日記を書き始めて」


続いて話を聞いたのは、20代前半から日記を書き始めた店長の佐藤。きっかけは友人から贈られた一冊の日記帳だったのだとか。

佐藤:
「私が23歳くらいのときに、好きな歌手や作家など趣味が合う20歳ほど年上の女性と仲良くなったんです。

社会人になってからの友だちってなかなかいなかったから、貴重な存在でした。

彼女があるとき、日記帳をプレゼントしてくれて。それがきっかけで毎日寝る前にベッドで日記を書くのが習慣になりました。

内容は、母と歌舞伎に行ったとか、見た映画の感想とか、その日あった出来事など。今思えばきっちり一年続けた最初で最後の日記ですね」

▲重厚感のある当時の日記帳を開いて。

佐藤:
「これを書いていた時期は、今思うと人生で一番迷っていた時期。

自分には何ができるのか、どんな場所があるのか分からない。そういった時期に日記を書くことで、一日を振り返る癖がついたように思います。

人生のなかにある機微を受け流さずに捉える。捉えたものを言葉にして書き残すというこの流れが、当時悩んでいた自分に対してヒントになっていきました。

それまで自分には特筆するものがないって思っていたけれど、『私にもなにかひろってあげると面白いところがあるのかも』と、書くことを通して思えた実感がありました」

この一冊の日記を通して、日々を書き残すことへの大きな価値を感じた佐藤。その後はノートへと移り、自分の「好き」を育てるスクラップブックに形を変えていきます。

 

「私の居場所」だと思えたスクラップブック

佐藤:
「スクラップブックには、雑誌で見つけたかわいい雑貨を切って貼ったり、見に行った絵の展示を真似て書いてみたり、心に響いた文章を書き残したり、今見返しても自分の好きなものがぎゅっと詰まっていますね。

今のお店を始めるずっと前、会社勤めをしていた時期に書いていたので『ここには好きなものだけがある、私の居場所だ』と思いながら、書き残していました。

読み返してみると、好きなテイストや考え方が変わっていなくて、自分でも驚くほど。まさに『北欧、暮らしの道具店』のアイデア帳といった感じですね」


佐藤:
「私は自分が好きな分野で仕事に携われているありがたさもありつつ、やっぱり好きという気持ちだけでは乗り越えられない、逆に好きだからこそ辛いと感じるような、胆力を求められる場面があるのも正直なところです。

そういうときに、このスクラップブックを目にするとなんだかホッとするんです。やりたいことはここにある、と再確認できる。

過去の自分に背中を押してもらっています」

▲「『カゴは万能』って今と同じこと書いてる!」と、その変わらなさに思わず笑顔に。

 

日々を記録することが、未来の自分を救うから

一冊の日記帳を書き終えた2000年から始まり、スクラップブックや当店のコラムなど、何かしらの形で暮らしを書き残してきた佐藤。現在も日々を書き残すことを続けていますか? と聞いてみると、今はまた違うスタイルへと変化していることが分かりました。

店長佐藤:
「ここ7年くらいはウェブ上でシートを作り、自分のチームのことやお店の動向、自分自身のコンディションなどを月次で残しています。

こんな施策をしたらお客さまから嬉しい反応があったといった前向きな記録から、こんな心配事があるといった悩みまで、具体的な数字を含みつつも全体は物語のような感じです」

▲当店の3年日記を手に「この手触りは日記帳ならではの良さですよね」と話す佐藤。

店長佐藤:
「たまに振り返ると、このときの悩みは解決されてるなとか、一年前はこういうことに悩んでいたのかと、発見がたくさん。

今の時点だけを見ているとなかなか成長や変化って感じにくいけれど、過去と比べてみると、着実に前に進んでいるんですよね。

日々を書いて残している自分が、未来の自分を救う予兆になる。

これまで日記を書いてきてその実感があるから、形を変えながらもきっとこれからも書き続けるのだろうと思います」

***

日記を綴ることが暮らしの楽しみであるスタッフ二本柳。一冊の日記帳が転機となって「書く」楽しさを見出した店長佐藤。ふたりの日記との付き合い方についてお届けしました。

続く後編では、日記を書きたい気持ちから始めてみるもののなかなか続かなかったという、2名のスタッフが登場します。

書く時間を捻出できなかった、自分の字に飽きてしまったなど、これまで続かなかった理由を紐解いてみたら……。

今の自分にフィットする日記との付き合い方が見えてきたようです。

(つづく)

 

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【写真】鈴木静華

 

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