【ロングなふたり】前編:入社前はどんな道を歩んでいたの? スタッフ同士でおしゃべりしてみました(青木 × 齋藤)
ライター 長谷川賢人
ふだんはせわしなく、仕事と向き合うクラシコムのスタッフたち。ゆっくり、じっくりと、お互いのこれまでを振り返って話す時間は……実はそれほど多くありません。
でも、あらためて話してみると、人となりがもっとわかったり、新鮮な発見が得られたりするもの。そこで、スタッフ同士でインタビュー(というより、おしゃべり?)してみる機会を持ってみることにしました。
今回の出番は、“よしべ” ことスタッフ青木と、スタッフ齋藤。ふたりとも、クラシコムで10年以上、仕事を続けてきました。
青木は、「北欧、暮らしの道具店」実店舗のオープニングスタッフとして、2009年に入社。店舗が2014年に閉店してからは、編集スタッフとして商品ページの制作などに当たっています。最近では、インターネットラジオ「チャポンと行こう!」 のパーソナリティでもお馴染みです。
齋藤は、建築設計事務所の勤務を経て、2011年にクラシコムへ転職。26歳の頃からスタッフとして働きはじめて12年。この期間に産休も経験し、また会社としての変化も感じてきました。現在はマネージャーとして、当店の読み物に携わる編集スタッフをまとめる立場でもあります。
そんな社歴が “ロングなふたり”、自身のなかで「変わったこと、変わらないこと」はあるのでしょうか?
一緒に働いているスタッフでも、知らないことっていっぱいあるのかも
齋藤:
そういえば、みんな「よしべ」さんって、あだ名で呼んでいますけど、もしかしたら本名だと思ってる人もいそう。
青木:
「よしべさんは漢字でどう書くんですか?」って聞かれたことありますよ(笑)。
齋藤:
スタッフも、きっとお客様も、よしべさんが持っている明るい雰囲気のせいか、しっくりきちゃってるんでしょうねぇ。
青木:
でも、私自身はもともとおとなしくて、子どもの頃なんて全然喋らなかったし、内弁慶なところだってあったし。
齋藤:
大人になるにつれて、だんだん変えていけた感じですか?
青木:
騙しだまし自分をご機嫌にしていたら、周りからも明るく見えるようになっちゃったのかもしれないですね。そのときの環境や、周りの人とのマッチングで変わってきたんじゃないかなぁ。
齋藤:
この話、初めて聞きました。知り合って長いですけど、知らないことばかりなんですよね、実は。今日は、クラシコムで働き始めてから、変わってきたこと、変わっていないこと、新しく気づいたこと、大事にしてきたこと……みたいなものを見つけあっていけたらなぁ、と思っています。
青木:
昔話もしながらね。
齋藤:
私がスタッフとして入社したのは、まだ実店舗がある頃でした。よしべさんからラッピングを教えてもらったり、お店番のことを聞いたりする時間が楽しくて。
青木:
夫(※クラシコム代表の青木)が「実店舗を作るからお店番をやってみない?」と声をかけてくれたのをきっかけに、久しぶりに働くことになったんですよ。その頃って、まいにちの育児が本当に大変で、頭を振り乱して頑張っていたとき。
お客様とおしゃべりしたり、お買い物される様子を見たりと、お店を通していろんな人と繋がることで、育児で頭がいっぱいだった私も気分を変えられたんです。
齋藤:
そうそう。でも、たしか青木さんも同じようなことを言っていたのを覚えています。育児で手一杯で、休みの日のほうがたいへんだって。
青木:
息子が大きくなるにつれてどんどん楽になっていますが、当時は2人してげっそりしてました。一人になれる時間の取り合いをしていましたもん(笑)。
“改良好き” な自分との出会い
齋藤:
それこそ、私にとっての「よしべさん」は、クラシコムに入ってからの姿しか知らないんです。靴をつくる専門学校に通っていた……みたいに、端々で耳にしたことはあっても。入社前は、何をされていたんですか?
青木:
何もしてなかったんです。靴の学校に通ったのも、もともとは「作ってみたい」という気持ちがあったから。中学生のときに、洋服作りや編み物が好きになって、母親から習ったり本を見たりして、楽しんでいたんです。それで、高校生の頃にせっかくなら靴まで作ってみようと試してみたら、ぜんぜんできなかった! でも、これは作れたら面白くなるなぁ、と思って。
インターネットもまだ身近ではなくて、私の情報源といえば地元の図書館でしたけど、蔵書には靴作りに関する本がなくて。調べてみたら、東京に専門学校があるとわかりました。ぼんやりと美大に進むよりも靴作りのほうが面白そう、でもすぐには学費が賄えそうにはないから、まずは洋服屋や居酒屋のアルバイトでお金を貯めて、20歳くらいで上京してみました。
それで、いざ学校へ通って1年間学んだら、なんだか気が済んじゃった(笑)。
齋藤:
えーっ! その1年間、ぎゅうぎゅうに詰め込みすぎたんですかね?
青木:
どうなんだろう。でも、一人暮らしも初めてで、お金もないけど、何もかもが楽しくて。
ただ、靴作りは、気が済んでしまっているものを、さらにもう1年間学んで仕事にするのは……「私にはちょっと難しいぞ」と感じたみたい。それで、またアルバイトをする暮らしに変えました。そこから、私の地面はずっとふわふわですよ。
齋藤:
アルバイトをしながら、次の「何か」を見つけようとしている感じですか。変わらないこともありましたか?
青木:
「何かを作ること」は好きで変わらなかったですね。それで、靴作りは革を使っていましたから、柔らかい布にしたらどんな風になるんだろうと試してみたら、可愛いルームシューズができたんです。
齋藤:
よしべさんのルームシューズ、見たことあります。たしかに可愛かったなぁ。
青木:
そこから、履き心地を良くするための改良を続けていって。今になって言葉にすると、私は「できたものをさらに良くしていく」という “改良好き” なんだと気づきましたね。
そうして良いと思えるシューズができたので、アートイベントで出品してみたら、売れたんですよ。
齋藤:
「手作りルームシューズ」の本も出されたんですよね?
青木:
そうそう。手芸店の一角で展示販売会やワークショップを開いたり、出版社の方が声を掛けてくれたり。本がきっかけで、一度だけテレビの手芸番組に呼んでいただいたり……そんなトントンと進む展開に驚いていました。
あとあと気づいたことなんですけど、私っていつも、自分のちょっと斜め上くらいから「もうひとりの私」が見ている感じなんです。せっかく道ができているように見えるのに、そこからどうしたらいいのか、どうしたいのか、自分でもわからずに足元がふわふわしていて。
私はどうやら「次につなげよう」という意志が極端に欠けているし、「やりたいこと」を原動力に自分自身で道を切り拓いていくのも苦手なんだってわかってきて。
だからこそ、声をかけてもらえたり、誰かに望まれることに応えたりするのは、たくさん感謝をしながら、絶対にやったほうがいいんだなっていうのが、現在も続いてますね。
齋藤:
“改良好き” なのは、思い返してみると、子どもの頃からですか?
青木:
そうかもしれないです。日々の料理もそうだし、焦げた鍋を磨いてみたりするのも、「次はもっとこうすればうまくいくはず」という好奇心があるからなんでしょうね。でも、クラシコムのスタッフって、結構みんな “改良好き” じゃないですか?
齋藤:
うんうん、わかります! ちょっとずつよくしていくことが楽しかったり。
青木:
若い頃はこんなふうに言葉にはできていなかったけど、きっとそうだったんだろうなぁ。
一年のうち、363日くらいは憂鬱です
齋藤:
よしべさんって、失敗しちゃったりしたとき、落ち込むタイプですか?
青木:
落ち込みますよ〜。でも、そういうガッカリした感じは引きずらないほうかなと思っていて。
むしろ、ベースがどんよりタイプなんですね。一年365日のうち、363日くらいは憂鬱です(笑)。あとの2日は完璧に天気の良い朝がきたときだけ。
齋藤:
意外です……! 雨の日でも良いことを見つけたり、お気に入りのアイテムを活かしたりするのが上手で、どんなタイミングも楽しめているイメージでした。
青木:
自分がちょっとイマイチで、みんなよりちょっと何かができなくて……という思いがずっとあるけれど、だからこそ「うまくいくといいなぁ」って明るい方を見たいのかもしれないですね。だから、心が晴れるようなことや好きなものが目に留まったり、可愛いものに執着があったり、自分のご機嫌を取るものに執念があったり。
私は「ご機嫌でいたい」という気持ちが人一倍強くて、それは反対方向の力がすごく強く根っこで働いているからなんでしょう。毎朝のように「今日もしんどいなぁ」と頭の端っこで感じつつも、「でもきっと良い一日になるぞ〜」とも思っているんですね。
そんなだから、朝よりも眠る前の方がコンディションがいいかも(笑)。その日に何とかできることは何とかしたはずですし、何とかできなかったことは、明日の私が頑張るので。
青木:
それに、30代を過ぎた頃から、体なんてどこかいつも痛いじゃないですか(笑)。でも、「今日は首が痛くなくてよかった〜」みたいに嬉しくなったり。
齋藤:
あるある……よくあります(笑)。だから、大丈夫だなぁ、と思えたり。
青木:
良くないところや狭いところだけを見るとツラいけれど、自分を客観視したり広い視野で見直したりすると捉え方も変わるんですよね。「今日のスケジュール、ぜんぶ忙しいなぁ」なんて思うと大変でも、一日を「点」で見ていくと「楽しい」と感じることもたくさんあって。移動中の電車で和んだ光景があったなぁ、とか。
齋藤:
ちょっとずつ見える景色が変わっていきますね。
青木:
そうそう、景色が「可愛い」に自動で変換されるようになってきていて。それが自分をすごく助けてくれてるなぁ、って。たぶん、良い思い出がいっぱい欲しいんでしょうね。ツライことを思い返すときも、可愛くて良い思い出がそばにあれば、すこし楽になれるから。
今、手元にあるものをひとまず大事にできていたり、大事にしようと働きかけたりしているのは、結構すごいことなのかもしれない、と最近は考えるんです。そう思えたら、手元にある仕事もさらに大事にできるようになってきた気がします。
齋藤:
私にはいつも朗らかに見えていたよしべさんも、そんなふうに日々を過ごしていたんだなぁ……と知れるだけで、なんだか頼もしいし、ホッとします。
会社も、私にとっての「可愛い」の一部に
青木:
齋藤さんは、自分から「やるぞー!」ってクラシコムに転職したわけじゃないですか。入社してくるスタッフも「こうしたい!」という気持ちを持つ人が増えていて、ふわふわと進路を決めてきた私は「すごいなぁ」って感じるんです。
齋藤:
すごい、ですか?
青木:
「決める」って、それだけで大きなストレスですし、色々考えた末の結果じゃないですか。だから、考えて決めることが苦手な性分の私からすると、それだけですごいと思えるし、どこかでは「羨ましいなぁ」とも思っていて。
ふと、そういう気持ちに負けてしまいそうに考えるときもあります。でも、私は「今、ここに居たい」と思える仕事ができていて、クラシコムという場所は居心地が良く、おしゃべりしても面白い人ばかり。
そんな巡り合わせの中にいることを思うと、自分から「何かをしたい」と願うよりも、「この可愛い世界の一部になれたら楽しいぞ」という動機が、今は一番強いかもしれないです。
齋藤:
会社も、よしべさんにとっての可愛い世界の一つになってきているんですね。それはクラシコムで働き続けるなかで、変わってきたことなんでしょうね。
青木:
うんうん。毎日は本当にバタバタしていても、一人ひとりとのコミュニケーションを思い出して笑顔になったり、着用レビューの写真を撮っていると癒やされたり(笑)。
齋藤:
着用レビューの撮影って、短時間でその人に向き合いながら、良いところやアイテムの可愛いところを撮っていって……それも、よしべさんにとっての「可愛いもの集め」なんですね。
青木:
そうだと思います。「可愛い思い出集め」かな。足元がふわふわしているなりに続けてみると、こんなふうに居場所ができていったのは、13年働いてきて得たものかもしれないです。
私の話もたくさんしてきたので、次は齋藤さんがクラシコムに入るところから、おしゃべりしてみましょうか。
(つづく)
【写真】川村恵理
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