【おとなの学び】第2話:1年に1回、習う場所もその都度変えて。ゆるやかに続ける「お花」のレッスン(冨澤緑さん)

ライター 嶌陽子

大人になってから始める習い事や勉強。大人ならではの “学び” の醍醐味、そして続けるためのコツは?そんなことを教えてもらう特集の2回目です。

第1話をよむ

今回は、手工芸ブランド「IFUJI」スタッフの冨澤緑(とみざわ みどり)さんが登場。ゆるやかなペースで学んでいるという、フラワーアレンジメントについてお話を伺いました。

 

20代で本格的に勉強したフラワーアレンジメントを再び

インテリアショップやアパレルショップに勤務したのち、10年間、雑貨店を営んでいた冨澤さん。現在は手工芸ブランド「IFUJI」の東京店のスタッフとして働いています。

冨澤さんが数年前から実践しているのは、1年に1回はフラワーアレンジメントを習いに行くこと。そうすることになったいきさつを話してくれました。

冨澤さん:
「実は20代の頃、数年間フラワーアレンジメントの学校に週1回通っていたんです。

学生の頃、母がお花屋さんで働いていて家にはいつもお花が飾られていました。その当時はそれが当たり前すぎて特別に思っていなかったんですが、母が仕事をやめて家のお花が少なくなった時に急に寂しくなって。私はすごくお花が好きなんだなって気づいたんです」

冨澤さん:
「そんなこともあり、社会人になってから職場の近くでたまたま見つけたフラワーアレンジメントの学校に毎週末通うようになりました。よく知らないで入ってしまったのですが、実はそこがインストラクター養成のための学校で、すごく厳しかったんです。

でも一度始めたら最後までやり抜かないと気がすまない性格なので、カリキュラムを卒業するまで数年間通い続けました。水切りの仕方や生け方の法則など、基礎をみっちり学びましたね」

冨澤さん:
「その時から家に花を飾る習慣はずっと続けていたんですが、ここ数年、お家時間が増えたこともあって、あらためてお花を習いたいと思うように。

学校に通っていたのはかなり昔のことなので、学んだことも忘れてしまっているし、今のフラワーアレンジメントのトレンドみたいなものを知りたいという気持ちもありました。

ただ、時間にそれほど余裕もないので、毎週通うのは難しいと思って。なので1年に1度、リフレッシュというかプチ旅行のつもりで行くことにしたんです」

 

習うお店も毎回変えて、それぞれの個性を味わう

冨澤さんが行くのはお花屋さんが開催している1回完結型のレッスン。SNSで自分の好みに合いそうなお店を探すほか、気になるフローリストが発信している情報から知ることもあるといいます。

冨澤さん:
「これまでにレッスンを受けたお店は麻布のMIDORI FLOWER、等々力のIria、神楽坂の小路苑です。少人数のグループレッスンに参加しています。お店や店主さんごとに雰囲気や考え方が違うし、用意してくださる花材も店主の方の個性があふれるチョイスなんですよね」

▲左は等々力のIria、右は神楽坂「小路苑」のレッスンで生けた花

冨澤さん:
「20代で学校に通っていた頃と違うなと感じたのは、お花の種類の多さ。今は本当にたくさんの品種がありますよね。

フラワーアレンジメントを習う喜びのひとつは、知らない種類のお花に出会えること。自分で買うとなると、つい同じような花ばかり選んでしまうんですが、レッスンに行くと、こんなお花があるんだ!という発見があるんです」

▲レッスンで生けた花は、自宅に持ち帰って飾って楽しめる。「ブーケをいくつかに分散させて飾ることもあります」

冨澤さん:
「もうひとつ、昔に比べて今は生け方が本当に自由だなあと思います。私が本格的な学校に通っていた、ということもあるかもしれませんが、昔は『この生け方はだめ』と言われることも。今はどんな生け方でも間違いではないんです。

だから形式にとらわれず、自分らしく、自由に生けられているのが楽しいですね」

 

学んだことを生かして、普段のお花を飾る楽しみも

冨澤さん:
「とはいえ、もちろんレッスンの中では『こんな方法もあるよ』という技やヒントを教えてもらえます。

ただ、1回のレッスンで教えてもらうことすべてを吸収することは、正直言って難しくて。なので、自分の記憶に残ったことを一つでもいいので持ち帰る。そんなやり方が今の自分には合っているのかなあと思っています」

冨澤さん:
「家でお花を飾る時も、レッスンで教わったことを思い出しながら飾ることがあります。あの時こうすればもっと生き生きして見えるよって教わったから、この1本をぴょんと飛び出すようにしてみようとか、そういえばお花に葉っぱを絡めてみるといいって教わったな、とか。

1回でもレッスンに行って、1つでも何か教われば、それが少しずつ積み重なっていくし、家でお花を生ける時にも生かせる。それが楽しいんですよね」

 

上手下手は関係ない。お花に触れるだけで元気になれる

▲家ではさまざまな器に花を生けている。「ジュースやプリンの空き瓶なんかも使っています」

冨澤さん:
「生けたお花を持って帰る、その帰り道もとても気分がいいです。帰りの電車の中でもつい眺めてしまいます。家に持ち帰ったお花は分散させて部屋のあちこちに飾ることも。レッスンの時だけでなく、その後もしばらく楽しめます。

部屋にお花を飾ると、そのまわりもきれいにしようと思えてくるし、そうすると気持ちも整うんですよね。

お家時間が増えた今、お花が1本あるだけで気持ちが全然違ってくるような気がします。1日ごと、また見る時間帯によって表情が変わるし、枯れかかって花びらが落ちている時ですら可愛いなと思います」

▲愛用している花切鋏は「SUWADA」のもの。

冨澤さん:
「お花のレッスンはぜひおすすめしたいです! 体験レッスンもたくさん開催されているし、私が行ったレッスンにも初めて習うという方がいらしていて、とっても楽しそうでした。

生け方の上手下手は全く気にしなくていいと思います。お花に触るだけで元気をもらえる、それが醍醐味なんだと思います」

 

自由な学び方は、大人になってからこそ

冨澤さん:
「子どもの頃もピアノや習字を習っていましたが、どちらも親に言われて始めたもの。今は本当に自分の心の赴くままに学んでいる気がします。

学ぶペースも自分次第。今の私にとっては毎週1回だとちょっと大変。かといって絶対に1年に1度だけと決めているわけでもなく、よい出会いがあれば半年に1度でもいいと思っているんです。

そんな自由な学び方は、大人になってからこそできるのかもしれませんね」

習いたいことがあっても、忙しくて定期的に通う時間がないと、つい諦めてしまうことも。時間も場所も固定せず、ゆるやかに学んでいる冨澤さんを見て、こんな形の “学び” があってもいいんだ、と思えてきました。

さて、続く第3話では当店のスタッフたちがどんなことを学んでいるのかを聞いてみることに。習い事に通っている人、自宅で勉強している人など、それぞれの形や楽しみ、続けるコツなどを教えてもらいます。どうぞお楽しみに。

 

【写真】川村恵理(1〜5、8〜13枚目)冨澤緑(6、7枚目)


もくじ

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冨澤緑

インテリアショップ、アパレルショップに勤務したのち、2010年より10年間、東京・三軒茶屋で暮らしを彩る生活雑貨のお店「klala」を営む。現在は台東区松が谷にある「IFUJI the box tailor」のスタッフとして活躍中。インスタグラムのアカウントは@midorinocoto


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