【続ける力】後編:「こなす」だけじゃない仕事を大切に。それで心が軽くなることもありました
編集スタッフ 野村
今までとは違う仕事に挑戦した。自分でやりたかったことを仕事にした。30代になって、周りからそんな話を聞くことが増えました。
何かを始めた人たちを見て憧れる一方で、私はこのままでもいいのかな、と焦る気持ちがあります。
そこで今回、同じ職種・仕事を続けると決めた同年代の方のお話を聞きたいと思いました。
お話を伺ったのは、ヘアスタイリストの原澤 雅(はらさわ みやび)さん。前編では、現在の仕事に至るまでのきっかけや気づきを聞いていきました。
後編では、同じ仕事を続ける中で感じた悩みや不安について、尋ねてみました。 前編を読む
年少者だからこその、悩みはあるけれど
ヘアスタイリストとしてもうすぐ9年目を迎える原澤さん。仕事を続けてきて感じた悩みは不安はありますか、と尋ねてみました。
原澤さん:
「悩みや不安は常にあります。
私は20代ということもあって、色々な現場で一番年下であることも多くあって。だから経験や技術の面で周りの方より劣っているかもしれないと弱気になりそうな時があります。
どんなお仕事でもそうですが、自分より優れた技術を持っている方、業界の中でキラキラと輝くカリスマのような方はたくさんいらっしゃいます。
そうした現場で、『どうしよう』とか『これでいいのかな』と思ってしまうこともありました」
原澤さん:
「でも、弱気な気持ちをそのまま口に出しちゃうと本当にその通りになっちゃうこともあるかなと、仕事の時にはなるべく表に出さないように。
それと誰かと自分を無理に比べなくていい、と心がけるようにもなりました。
たとえ私にカリスマのような技術はなくても、自分にもできていることに目を向ける。他のところで補える自分なりの強みがあれば大丈夫、と言い聞かせていれば、弱気になりすぎずに楽しく仕事ができる日も多くなってきたんです」
「こなす」だけじゃない仕事が大切
当店の商品ページや読みものページの撮影で原澤さんとご一緒する際、モデルさんにヘアメイクをしている一角は、緊張感が解けた、居心地の良い柔らかな雰囲気に包まれているように感じていました。
そう感じていたことをお伝えすると、原澤さんは「自分なりの強みになればと、心がけていたことでもあったので、嬉しいです」とお話を続けてくれました。
原澤さん:
「仕事をする上で、『ただこなす』だけじゃなくて、ホスピタリティが大切だよと、アシスタント時代からずっと教えていただいていました。
お客様をカットする時には、居心地がいいなと思ってもらえるように。モデルさんにヘアメイクをする時は、撮影を一緒に楽しめるように。
そうした雰囲気作りや空間作りも、大切な仕事の一部なんだ、と思うことは私の仕事の基本になっているかもしれません」
原澤さん:
「特に美容師やヘアメイクの仕事は、手元の動きだけで相手に色々と伝わってしまいます。
例えばドライヤーをあてている時にも手早くやろうとしてしまうと、今急いでいるのかなと感じさせてしまって居心地はあまり良くないですよね。
些細なことかもしれませんが、こなすだけになっちゃいそうな時ほど、ホスピタリティが大切という言葉を思い出すようにしています」
言葉にしてみることの大切さ
勤めていたヘアサロンからの独立を決めた時にも、悩みや不安は抱えていたはず。どんな風に向き合っていたのでしょうか。
原澤さん:
「誰かに相談できればいいのですが、弱音を表に出さない分、相談することも少し苦手です。あまり悩みや不安を人に言えないんですよね。
自分の中で、こうしたい、というところまで気持ちを固めて、最後のひと押しを家族にしてもらうことがこれまでは多かったです」
原澤さん:
「お店をやめて独立すると決めた時も、『これからヘアサロンをやめて、独立しようと思う』と両親に伝えると、『自分が楽しいなと思える方向に進めるなら、やってみればいいじゃん』と背中を押してもらえました。
その一言があるだけで、不安に思っていた気持ちがほどけて、よし頑張ろうと思えます。
誰かと話して、言葉にしてみることってすごく大切ですね」
「次はわたしもやってみよう」と続けられたら
原澤さん:
「お客さまや仕事で関わってきた先輩たちなど、周りの方達に刺激をもらいながら『次は私もやってみよう』という力が湧いているんだなと思いました。
海外で活躍する先輩の姿に刺激をもらって、いつか海外での仕事が私にもできればと語学の勉強も始めたり、趣味が通じたお客さまと一緒に、美容師をするだけではできなかった新しい仕事やイベントも催すことができたり。
時に誰かの助けも借りながら、自分のあり方を限定しないで、これからもヘアスタイリストとヘアメイクの仕事を続けられたら、と思っています」
「こなす」だけじゃない仕事を大切にしてきた原澤さんだったからこそ、周りの人たちと関わり合いながら、支えられながら、今のお仕事を充実させ続けてきたのかなと感じました。
ひと呼吸置いて、目の前の仕事をこなすだけじゃなくて、丁寧に取り組んでみる。
たとえばそんな小さな一歩からでも、私に始められることはまだまだたくさんある、と新しいスタートを切る気持ちになりました。
(おわり)
【写真】鈴木静華
もくじ
原澤 雅
ヘアスタイリスト。都内ヘアサロンでアシスタント、
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