【セルフケア、はじめの一歩】後編:小さなおまもり見つけよう。気楽に付き合うハーブティーとアロマオイル

ライター 藤沢あかり

夏の疲れや不調も出てくるこの時季、健やかなからだとこころを保つためのセルフケアについて、植物療法士の鈴木七重さんにおうかがいしています。

前編では「基本のき」として、セルフケアに取り組むためのベースとなるお話をお聞きしました。

後編は、のんびり気楽に取り入れられる、ハーブティーやアロマオイルについてをお届け。ちょっと難しいなと感じたことがある人も、気負わずやってみたくなる。そんな向き合い方も一緒にうかがいます。
前編をよむ

 

もっと自由に、自分好みに。おいしいハーブティーはきっとある

七重さん:
「不調を和らげるための体質改善として、手軽に取り入れやすいのがハーブティーです。ハーブは、飲めばこの痛みが治る!というダイレクトな即効性を求めるものではなく、からだを根本からじっくりと良い状態に整えていくもの。習慣化が大切なので、まずは1ヶ月、できれば3ヶ月くらいは続けてみてください。

ただ、ハーブティーは味になじめず苦手だという声も多いです。『からだのために我慢して飲む』というのでは、効果が得られにくいですし、なにより続けるのがつらいですよね」

そうそう、そうでした。何より大切なのは、「気持ちいい」と自然に思える状態をたくさんつくること、というのは前回お聞きした通り。

七重さん:
「飲みにくいときは、ほうじ茶、黒豆茶、そば茶など、ご自身が飲みやすいと感じるお茶とブレンドするのもおすすめです。カフェインを気にしないのであれば緑茶でもいいですし、身近なお茶で試してみてください。はちみつを少し垂らして、甘みを加えると飲みやすいという方も多いです。

ハーブとひとくちに言っても、その種類は何百とあり、自然のものですから保存状態によっても味は変わります。だから、たまたまそのハーブティーが好みでなかった、ということは意外と多いんです。できれば色や香りがしっかりと濃い、鮮度のいいものを選べるように、信頼できる専門店などで購入するのをおすすめしています」

とはいえ、それで踏み出すハードルが高くなってしまうのであれば、まずは手軽なティーバッグから始めてみても大丈夫、と七重さん。まずは始めてみること、続けること。そして自分が「いい香りだな」「気持ちいいな」と感じられることが大切です。

 

ハーブティーも、いつものお茶と同じように

朝と夜のメリハリをつけることは、からだのリズムを整える第一歩。前編では、小学校で言われたような規則正しい生活が、実は健やかさの基本であることをお聞きしました。

そこで今回は、朝と夜、それぞれに合ったハーブのブレンドをご紹介します。初心者にも手に入れやすく、飲みやすい味わいにもこだわって教えていただきました。

▲手前から時計まわりに、ミント、ネトル、ルイボス。

ルイボス 小さじ2/3
ネトル 小さじ1
ミント 小さじ1/2
(約2杯分の分量)

茶葉をポットに入れたら、熱湯を注いで約3分。色と香りがしっかり抽出されたらできあがりです。

七重さん:
「ルイボスは代謝を高めてからだを温め、ミントは、胃腸の調子を整えて消化を助けてくれるんです。ネトルは血を浄化したり増やしたりする働きがあります。ネトルは花粉症対策としてもおなじみのハーブですが、見つからなければルイボスとミントだけで試してみてくださいね。

朝食後に1〜2杯飲んでもいいですし、タンブラーに入れてゆっくり楽しんでも。冷たくしたいときは、お湯の量を3分の1くらいにし、濃いめに淹れたものを氷の上から注いでください」

▲右から時計まわりに、エルダーフラワー、ラベンダー、カモミール、パッションフラワー。

エルダーフラワー 小さじ1
カモミール 小さじ1
パッションフラワー 小さじ1/2
ラベンダー 小さじ1/4
(約2杯分の分量)

七重さん:
「高ぶった気持ちのままでは、ゆっくり眠れませんよね。夜には、からだとこころをゆるめてリラックスし、質の良い睡眠を取れる状態をつくりたいものです。

ほら、茶葉もお花がいろいろ入っていて見た目だけでも癒されませんか? 入浴剤やポプリなどでもおなじみのカモミールやラベンダーは、リラックスのハーブとしても代表的なものです。エルダーフラワーにはからだを温める作用もあります。夕食後からベッドに入る1時間くらい前までに飲み終わるくらいのタイミングがおすすめです」

七重さん:
「ラベンダーは香りが強いので、ほんの少しだけ。うっとりとするようなお花の香りが魅力でリラックスにも効果的ですが、好みが分かれるので苦手なら省いても大丈夫です」

 

ルールよりも「おいしいな」の気持ちを頼りに

飲むタイミングは? 量は? 抽出時間は?と、矢継ぎ早に質問するわたしたちに対し、七重さんはこうも教えてくれました。

七重さん:
「あまり神経質にならずに、自分のやりかたを見つけてみてください。たとえば緑茶やほうじ茶にも、おいしく淹れるルールはありますが、家で飲むときには目分量だったりしませんか? まだ味が出ていなければ時間を置くし、濃いと思ったらお湯を足す。ハーブティーもそんな気軽な感じでいいんです。

もっと言えば、今日は濃いめがおいしいと感じても、明日は違うかもしれません。ひとつの正しい答えに合わせるのではなく、いまの自分が『おいしいな』『ちょうどいいな』と思えることを目指してみましょう。

自分のやり方に自分でOKを出せたらうれしくなれますし、心の内側も整っていきます。そういう気持ちを重ねていくことで、よりポジティブなこころも育っていけると思いますよ」

ハーブティーを淹れる手順を眺めていると、茶葉が揺らいでいる様子もきれいだなぁ〜と思う自分がいました。そんなことを何気なく伝えると、「まさにそれです!」と七重さん。

七重さん:
「同じように、波や小川のせせらぎ、キャンドルの炎やお香の煙など、自然界の動きにはリラックス効果があるんです。ハーブティーを淹れる行為そのものも、そういう『はぁ〜』と気持ちがゆるむ時間をもつきっかけにしてもらえたらうれしいです」

 

「はぁ〜」の瞬間を手軽に感じる、アロマオイルの取り入れ方

さらに、もっと手軽に気持ちをゆるめられるのがアロマオイルの活用です。

七重さん:
「最近は肌に直接つけられるロールオンタイプのアロマオイルもたくさん出ているので、取り入れやすいと思います。

それぞれ効果や用法がありますが、まずは直感で選んでみましょう。『リフレッシュ』『くつろぎ』といった説明書きを頼りにしてもいいですね。

好きな香りを見つけたら、仕事中ちょっと疲れたなと思ったとき、手首にさっと塗ってみてください。『はぁ〜、いい香り〜!』って、自然と深呼吸したくなりませんか?」

七重さん:
「集中が続くと、ぐっと肩がこわばり呼吸も浅くなりがちです。さらにその状態が続くことで、慢性的な肩こりや腰痛、頭痛などの原因になります。だからこそ、こうして意識的に『はぁ〜』の時間をもち、緊張をほぐすことを習慣にしてほしいです。

安眠系のくつろげる香りなら就寝前と決めつける必要もないんですよ。たとえば、人に会う前の緊張をほぐしたいときに、という使い方もおすすめ。ただし、ローズマリーやユーカリ、ティーツリーなどのすっきりとした香りは、からだを目覚めさせる効果があるので、寝る前には控えてくださいね」

 

セルフケアは、頑張るよりも気持ちのいい方へ

七重さん:
「難しく考えたり決まりにとらわれたりせず、自分でできる範囲で小さな工夫を散りばめていけたらと思うんです。

ハーブのブレンドも楽しめればいいですが、面倒に感じるなら買ってきてもいいし、ティーバッグから始めてもいい。アロマオイルも、無理に取り入れなくても大丈夫です。

自分にとって、どんなケアが適しているのか、ぜひ探してみてください。目的はハーブやアロマを取り入れることではなく、からだとこころを健やかに保つこと。だからこそ、からだの声を聞くことがなにより大切です。

そうしていれば、からだもこころも、いまより良い状態になっていけるのだと思いますよ」

▲使ったフレッシュハーブは、レモンバーベナ、レモンバーム、レモングラス。グラスに添えたレモンバーベナの緑も鮮やかです。

最後に七重さんがフレッシュハーブティーを淹れてくれました。さっき庭から摘んだばかりの、みずみずしいハーブを使っています。レモンのような香りと、さっぱりとした飲み口。まだまだ外は暑そうだけれど、この季節を楽しむ元気が湧いてくるようです。

「セルフケアって、がんばるものじゃないんです」という鈴木さんの言葉がよみがえります。からだもこころも、気持ちのいいほうに。一日の中でまずはひとつ、小さなことから始めてみませんか。

【写真】濱津和貴

 

もくじ

 

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鈴木七重(すずき ななえ)

植物療法士。心身の不調を植物の力で改善した実体験から植物療法を学ぶ。『∴chimugusui(チムグスイ)』を主宰し、植物療法のオンライン講座やオリジナルハーブティーをはじめとしたアイテムの企画・販売などを通じて、セルフケアの大切さを広く伝えている。著書に『ゆるめる・温める・巡らせる』『私を整える。』(ともにエクスナレッジ)
https://chimugusui.com Instagram:@chimugusui


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