【自分サイズをさがして】第3話:ポイントは「袖丈」と「ボタン」。シャツのプロに、選び方を聞きました
編集スタッフ 野村
色々な物事に目移りしやすい、自分の飽きっぽい性格が少し悩みのタネ。だからこそ、ひとつの仕事に熱意を持って取り組み続けている人の姿に憧れを抱きます。
どうやって自分にとって磨き上げたいと思うテーマを見つけて、生業として自分の中心に持ち続けているのでしょうか。
そんなことについて話を聞いてみたいと思い、今回は、オーダー専門のシャツ屋『holo shirts.(ホーローシャツ)』を主宰する窪田健吾さんにインタビューをしました。
1話目ではどうしてお店を始めたのかについて、2話目ではお店を続けるために悩み、向き合ったことについて、じっくりお話を伺いました。
3話目となる今回は、窪田さんに接客していただきながら、シャツ選びのポイントについて教えていただきました。
服選びの楽しさが詰まっているのが「オーダー」です
窪田さん:
「服のオーダーの一番の目的は、お客さんが一番使いこなしやすいサイズやデザインはどんなものかを、一緒に見つけいていく作業だと思っています。
オーダーを通して、『服を選ぶのって楽しい』と服との付き合い方をアップデートしてもらえたら嬉しいですね。
『holo shirts.』のオーダー会では、試着と生地選びを繰り返しながら、シャツ選びをしていきます。
まずはXS〜XLまでご用意しているシャツを試着しながら、しっくりくるサイズを見つけていきます。必要であれば、採寸をして袖丈や着丈の長さも調整します。
サイズが決まったら、次は生地選びです。普段の服装や持っている洋服の好みを聞きながら、ご自身の中の『好きなスタイル』を整理して、今回のシャツをどんな風に着たいかをイメージしながら生地の提案をしていきます」
オーダー体験、してみました
どんなふうに着たい? を表す「サイズ選び」
私・野村もシャツが好きで日常着としてよく着ます。そこで窪田さんに接客してもらいながら、シャツのオーダーを体験してみました。
私がいつも選ぶのはぴったりよりやや大きめのラフなサイズ。おすすめのサイズやどんな風に着こなせばいいかを尋ねてみました。
窪田さん:
「野村さんの体型ならMサイズがぴったりだと思います。ですが、大きめに着るのが好きならワンサイズ大きめのLサイズか、もしくはさらにワンサイズ大きいXLもおすすめですよ。
もしXLを着るなら袖が余ってしまうと思うのですが、袖丈のみ短くしたり、あえて腕まくりをして着る前提で長いまま合わせてもらったり、ボタンの留め方で調整できるように袖口のボタンを2つ付けたり、と自由にアレンジできますよ」
合わせるボトムスをイメージして、「生地選び」
窪田さん:
「合わせるボトムスは今日履いているような濃色のものが多いですか? そうであれば、生地は秋冬を意識すると温かみのあるベージュ系のものは合わせてもらいやすいと思います。
太めのパンツと合わせることが多いのであれば、カジュアルなイメージのリネン素材のもので合わせるのもおすすめです。もし細身のパンツがお好きなら、きれいめに合わせられる綿100%のシャツが似合うかもしれないですね。
これらはほんの一例ですが、こんな風に一緒に相談しながら、好みのシャツの選択肢を狭めていって、1時間ほどかけてオーダーしていきます」
シャツの「袖丈」にも注目
窪田さん:
「着丈や身幅などのサイズももちろん大切ですが、シャツの見え方が変わってくるポイントのひとつは袖丈なんです。
長さを手の甲あたりにくるように合わせれば落ち着いた印象になります。袖はまくらず、ボタンで留めて着る方におすすめ。
もしもっとラフに着たい場合は、腕まくりをしても肘より下の位置で袖が残るようにあえて長めにしておく、という合わせ方もできますよ。
袖丈をぴったりに合わせて腕まくりをすると、どうしてもまくり終わりが上の方にきてしまうので『ラフすぎてしっくりこない』と感じることもあると思います。
こんな風に袖丈の長さで着こなしを考えてみるのは、普段のシャツ選びでも応用できるポイントかもしれません」
窪田さん:
「『holo shirts.』では、袖丈を長く残したとしても、袖口のボタンの留め方でも袖の余り方や見え方は変えられるので、袖口にボタンを2つ付けて、シルエットを変えた着こなしを提案することもあります。
オーダーシャツと言っても、サイズをぴったりに採寸して合わせる作り方だけではないんです。袖の長さに合わせて、いろんな着こなし方も楽しんでもらえたらいいなと思っています」
ボタンを観察してみると、もっと楽しい
窪田さん:
「シャツのオーダーの際に、サイズや生地以上にみなさんがよく悩むのは『ボタンをどうするか』です。
たとえば柔らかい印象の『ナットボタン』と呼ばれるものだと、表情がカジュアルなのでシャツ全体もそうした印象になります。ラフに合わせたシャツや羽織りとしても使えるデニム地のシャツなどと相性がいいと思います。
一方で『貝ボタン』のような光沢感のあるボタンをつけると上品な雰囲気に。きれいめに着たい綿のシャツなどにおすすめです」
▲手に持っているのが「貝ボタン」、シャツに縫われているのが「ナットボタン」。同じ生地のシャツでも、使うボタンひとつで表情がガラリと変わります
窪田さん:
「サイズのこと、生地のこと、普段どんな服装が好きか。
そんなコミュニケーションを元に、どんな風に着たいシャツなのかイメージを固めていくので、その情報と照らし合わせながら、それに合ったディテールを提案しています。
普段の服を選ぶ時にそんなところにも注目できたら、もしかすると服選びの視点が広がったり、着てみてイメージと違ったなんて機会も減ったりするのかなと思います」
しっくりくる服は、いろんな着方が想像できる
窪田さん:
「サイズ合わせはもちろん、オーダーを通して服について考えるきっかけが生まれたらいいなとたくさんの方の服を仕立ててきました。
しっくりくる日常着は、着方がひとつに限定されないものだと思うんです。
腕まくりをしてもおしゃれに着られるシャツがいいとか、前を開けて着ても似合うとか、日常の中でいろいろな着方が想像できる服は、たくさん袖を通してもらえるはずです。
なのでオーダーを通して服を手に取ることで、いろんな着方ができるとか、次に服を選ぶ時の視点がひとつ増えたとか、そうしたプラスアルファになることも一緒に持ち帰ってもらえると嬉しいなと思っています」
「holo shirts.」のオーダーを体験してみると、服の選び方により自由さが生まれた気がしました。
私の場合、今までXLのシャツは袖や着丈が長くて、どう着こなしていいか分からず手に取らないアイテムでした。でも腕まくりを前提に着たり、袖口をキュッと留めてあえて袖が余ったシルエットを楽しむ着こなしをしたり、といくつも選択肢を取れる懐の深いサイズかもしれないとイメージが変わりました。
あのシャツは、ラフに着こなしたいからXLを選んでみよう。オーダーを通して、これからの服選びをいつもよりワクワクと楽しもうとしている自分と出会えた気がします。
服選びのことも、そして飽き性な自分との付き合い方も、「好きだと思えること」の境界線を広げていくことでもっと楽しめるのかもしれません。
(おわり)
【写真】メグミ
もくじ
窪田 健吾
2014年11月にオーダー専門のシャツ屋「holo shirts.(ホーローシャツ)」を開業。「普段着のシャツをオーダーメイドで」という思いで、その人が気持ちよく着られる洋服を仕立てる。店舗を持たず、全国各地を巡りながら受注会を開き、オーダーを受けている。
HP:https://holoshirtsoando.square.site/ Instagram:@holoshirts
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