【人生の波もよう】3話目:仕事も人間関係も。自分の足で立てたから気づいた「真ん中のしあわせ」
ライター 藤沢あかり
人生には、やる気がみなぎりなんでもバリバリこなせるような時期もあれば、理由はわからないけれど気持ちがついていかない、うまくいかない、なんだか不安に思う、そんな時期もあります。
きっと、それは誰しもあること。上がったり下がったりの心身の波や、ライフスタイルの変化。年齢を重ねることは、さまざまな変化と付き合っていくことなのかもしれません。
だからこそ、できることなら、いまの自分をちゃんと受け入れながら、未来が楽しみになるような希望も持ち合わせていたい。同じように大波小波に揺られながら少し前を行くひとや、目指す場所が見えていたら、きっと大丈夫。そう思ったときに、イラストレーターの柿崎こうこさんのことが浮かびました。
2話目では、40代の終わりに経験した「壁打ち」による人生の棚卸しのお話でした。自分のことを洗いざらい出し尽くし、別の誰かに一緒に見てもらうことで気づいた「いまのわたし」のこと。
最終回の3話目では、その気づきを経てたどり着いた、50代のいまを楽しく過ごす新しいチャレンジについてお届けします。
第1話はこちら
「もう少し、夢をみたっていいのかも」
仕事、からだ、お金など、現実を見つめ、あらゆることに向き合った40代の終わり。
そうやって自分のなかの大事なものを知り、暮らしの基盤をしっかり整えてみると、なんだか気持ちも暮らしもゆとりが出てきたのだといいます。
柿崎さん:
「家賃を抑えて固定費を削減して……そうやってお金や仕事のことを考えるのは大切だし、それは必要なことでした。でも、ずっと現実的な部分のことを考えてきて、このあたりでもう少し夢をみてもいいなと思ったんです。
これからは、自分がほんとうにしたいのはどんな暮らしだろう?って考えてみることにしました」
いま、柿崎さんは理想の暮らしに近づくためのやりたかったことを、少しずつかたちにしています。
▲左がお兄さんのまるおくん、右が妹分として加わったしろちゃん。
そのひとつが、長年の夢だった猫との暮らし。時期をずらして保護猫を迎え入れ、いまは「まるお」と「しろ」の2匹が毎日を楽しませてくれています。ちらりと見えるかわいらしいリボンの首輪は、柿崎さんの手づくりです。
柿崎さん:
「動物と暮らすこと自体がはじめてですが、猫好きの友人からいろいろと教えてもらったり、留守中のお世話を助けてもらったりしながらやっています。
猫グッズも探し出すと楽しいんです。使っているうちに、こうだったらいいなという気持ちも出始めてきて、自分の好みの首輪やベッド、爪研ぎなどのグッズを企画するのもいいなあと、新たにやりたいことが出てきました」
助けは借りても依存はしない。自分の足でしっかり立ちたい
3年前からは、子ども食堂でのボランティア活動もはじめました。お弁当づくりのお手伝いを経て、いまは裏方のサポート業務に携わっています。
柿崎さん:
「それまでもボランティアに興味はあり、なにかできないかと思っていたんです。子ども食堂という存在も、ずっと気になっていたこと。でも、なかなか一歩が踏み出せなくて……。そんなときに、引っ越してきたこの街で、こども食堂のボランティアを見つけました。
はじめてみると想像以上に大変なこともいっぱい。でも、誰かのためのようで、実は自分のためにもなっている気がします。
こんなことできません!って思い込んでいたことも、やってみたら意外とできるんだとわかったし、反対に『これ以上はできません』という線引きを、きちんと相手に伝える大切さも感じています。長く続けていきたいからこそ、チャレンジしながらも、無理はしすぎないことも大事ですね」
柿崎さん:
「猫のお世話をはじめ、古くからの友達の助けを借りていることもたくさん。でも、友達にも家族や仕事など、それぞれに大切なことがあります。
心のうちを話し合ったり、お願いごとをしたりするのと、依存的な関係は違うと思うんです。昔は、仕事も人間関係も、向こうから声をかけてもらうのを待つとか、誰かに楽しませてもらいたい気持ちがどこかにありました。
いまは自分を深く知ることで、何が好きで、どういうときがしあわせなのか、はっきりわかりました。以前に比べて、心の底から、ちゃんと自分の足で立つという覚悟ができたからこそ、仕事もプライベートも自分らしく楽しめるようになってきたのかもしれません」
上がりすぎず下がりすぎず、「真ん中のしあわせ」がちょうどいい
ではどんな瞬間が、いまの「しあわせ」なのでしょう。柿崎さんの朝は、神棚がわりに貼っているお神札に手を合わせることからスタート。これが、その日のしあわせバロメーターでもあるようです。
柿崎さん:
「毎朝続けていると、自分のメンタルに気づけます。今日は元気だと思える日もあれば、ちょっと落ち込んでるな、こころがもろくなっているなと思う日もある。
そんななかに、『あぁ、ものすごく今日はしあわせだ』と最高に満ちた気持ちに包まれる日があるんです。そういう日は、なにか特別なことがあるかというと、そうではありません。
なにも心配事がない。人間関係もうまくいっていて、やるべき仕事がきちんとある。猫たちが元気に過ごしていて、わたしの体調もいい。そんな波風やこころのざわつきがない状態、真ん中がいちばんしあわせだと、最近やっと気づきました」
一方で、昨日はあんなにもしあわせ!って思ったのに、今日はとことん落ち込んで不安だらけで、という日もあります。でも、「それが人間だとも思うんです」と話します。
柿崎さん:
「どんなに落ち込んでも、また真ん中、平穏に戻れるときが、かならず来ます。最近は、そう思えるようになりました」
また、真ん中に戻れる。そう確信できるのは、これまでの道のりがあったから。こんなことに気付けるのは、年齢を重ねる良さのひとつに思えます。
「動く」と「考えない」、この2つでもやもやと上手におつきあい
こころが晴れず、もやもやしているときはどうするのかというと、まずはそのありかを探ってみるのだそうです。
柿崎さん:
「どこから来ているんだろうと考えると、だいたい理由や原因に行き着きます。もしそれが、自分がなにか行動することでクリアになるのなら動きます。
もし素敵なイラストを見て、うらやましくなったなら。そういうときは、『がんばろう!』っていう気持ちに変えて、自分もSNSに絵の一枚でもあげてみたり、後回しにしていたホームページの更新をしてみたり。なにかひとつでも、手を動かして前に進めるようにしています」
▲学生時代に励んだ空手を、40代に再スタート。「これも、無心になって体を動かす時間につながっています。老若男女問わず、普段は関わる機会のない世代と触れ合えるのも楽しいです」
柿崎さん:
「あとは朝の散歩や、床の拭き掃除のように、とにかく体を動かして発散するのもいいですね。とにかく、じっと布団をかぶって考え込むことだけはしないのがポイントかもしれません。
原因が見つからない漠然とした不安や、いま考えても仕方ないようなことであれば、考えるのはさっさとやめちゃうのが一番です。こういうときは、だめだめ、自分で不安をつくってるぞ〜!って思うようにしています」
▲たっぷりのお茶をいれて、のんびりYoutubeタイム。自分のこころをストレッチする方法をいくつも知っておくのも大切です。
これからやってみたいこと、気になっていることはありますか?
そんな問いかけに、柿崎さんはイキイキとした表情でたくさん挙げてくれました。
柿崎さん:
「ギターをやってみたいんです。ひとりでも弾いたり歌ったりできるっていいですよね。ベランダ菜園も興味があるし、風水も勉強してみたい。少し前から始めた動画配信も、まだまだ手探りですが、やめないことを目標に、続けていけたらと思っています。
やっぱり、家が大好きなんです。ひとりでも楽しめること、自分がわくわくすることを、もっと見つけていきたいです」
40代から50代にかけては、人生のちょうど折り返し地点。木にたとえるならば、ここらで根っこを見直してみるときなのかもしれません。ときには柿崎さんのように、誰かの目で観察してもらうのも良さそうです。
揺るぎない根っこさえあれば、どんな波がきても大丈夫。この先の枝葉をどう伸ばすかは思いのままだし、花や実をつける日も、楽しみに思えてなりません。
【写真】吉田周平
もくじ
柿崎こうこ
イラストレーター。日々の食、美容、健康、快適な暮らし方をテーマに、雑誌や書籍、広告媒体で活躍中。近著に「50歳からの私らしい暮らし方」(エクスナレッジ)、2024年春、大人の健康と美容をテーマにしたイラストエッセイを刊行予定。
instagram:@kakizaki_koko https://www.kakizakikoko.com/
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