【フィットする暮らし】第2話:人生の「大反省会」で学んだこと
編集スタッフ 塩川
写真 木村文平
シリーズ「フィットする暮らしのつくり方」Vol.12は、イラストレーター&アートディレクターの兎村彩野(うさむら あやの)さんにお話を伺っています。
都心から1時間ほど離れた神奈川県の鵠沼海岸で、ご主人と共にデザインの仕事し「働きながら暮らす」を実践している兎村さん。
自分の軸をしっかりと持ち、今の心地のよい暮らしに行き着くまでは、離婚を経験し「なんでダメだったんだろう」と人生を振り返る大反省会がありました。
第2話
人生の「大反省会」で学んだこと
26歳の時に、兎村さんは1度目の結婚をしました。「最初の1年間は仲が良かったんですけどね」と当時を振り返ります。
兎村さん:
「2年、3年と夫婦生活を積み重ねる中で、お互い化けの皮がはがれて素の自分に近づいていったとき、あまりにも気持ちが合わなくなってしまったんです。
相手のことがどんどん嫌いになってしまい、できるだけ顔を合わせないような生活は、向こうも苦痛だったと思います」
気持ちのすれ違いから3年半の結婚生活を終えた兎村さんは「過去のことを、こんなに振り返ったことはない」と感じるほどの大反省会を開きました。
自分の「嫌なところ」を受け入れるようになるまで
兎村さん:
「2年間の大反省会で気づいたのは、本当の自分を知るには客観的に自分を見つめる以外、絶対できないんだなということでした。
とことん自分と向き合って、嫌な自分と握手するのは精神的にも大変でつらかったです。でもそんな自分を治すでも矯正するわけでもなく、受け入れてハグできるくらい優しくなれたら、人にも優しくできるように変わっていきました。
今まではあまり人の話を聞かないような性格だったんですけど、この時はじめて周りの人の言葉が、心に沁み込むように感じました。良いことも嫌なことも言ってくれるのが友達で、どうしてわたしのために言ってくれるのか、ようやく意味がわかって……。
自分のことを自分で考えることはもちろん重要ですが、考えるときのヒントとして友人の言葉を大切にできるようになりました」
ひたすら自分を見つめる大反省会は、誰もが率先してやりたいことではないでしょう。
できることならば、見ないように蓋をしておきたい「自分の嫌なところ」。わざわざ向き合わなくても、毎日をやり過ごすことはできます。
しかしこの期間があったからこそ、兎村さんは「自分を理解し、俯瞰して見れるようになった」と話してくれました。
大反省会中、どんどん変わっていく自分を面白く感じられた兎村さん。考え方が変わると行動が変わり、言葉が変わり、選択肢が変わっていきました。
素直な自分に近づく中で「もう結婚はいいかな」と一人で生きることを決意します。
老後までを視野に入れてライフプランニングをはじめ、自分だけの会社を作り「よし!もう一度人生、新たに生きていくぞ」と環境を整えスタートラインに立った時、仕事の縁から今のご主人と出会いました。
「人生の同僚」と語る、ご主人との出会い
兎村さん:
「悩んでる時って、きっとぐちゃぐちゃのテトリスみたいなものなんです。それを自分を見つめながら考えて、人の話を聞いたりしながら一個ずつ消していきます。
努力しながら凸凹を合わせていって『ここまで整ったな〜』と思った時に夫と出会って、人生の縦棒がスッと入ったように思えました。
テトリスのように、今までの思い込みや価値観がバーンと崩れるように消えて、まっさらになっていくというか……。この時はじめて、目の前に光が差したんです」
仕事も暮らしも一緒。まさに人生の同僚とも言えるご主人と出会った兎村さんは、3回目のデートでこの家を見つけ、一緒に暮らしはじめたというから驚きです。
「夫と出会ってこれから先、人生が悪くなることが全く見えない。ずっと一緒に何かを作り続けたいんです」そうまっすぐ話す兎村さんを見ていたら、はらりと涙がこぼれおちました。
自分にピタリとはまるような「何か」を見つけた人は、迷いがなくスッキリとした印象を受けます。
「何か」は恋人や友人かもしれませんし、仕事や趣味かもしれません。それがピタリと合わさった時、光を感じられるような感覚は、わたしもかつて味わったことがありました。
好きな人やことに「これだ!」と気づく瞬間。それは総じて努力をしているうちに、自分の心に素直になれた時なのかもしれません。
期待ではなく「信頼」をする
大反省会時代に兎村さんが学んだことが、もう一つありました。それは、人への接し方です。
兎村さん:
「昔は人との距離がすごく近かったんです。相手に何かを求めていましたし、期待していました。でも期待って、時には人を追い込んでしまう怖い感情だと思うんです。
振り子みたいに、期待が大きいとその分反動でがっかりしてしまう。人間って期待しちゃう生き物だから、それを自覚した上で気持ちをコントロールしています。
なので今は、人に対してゼロかちょっとマイナスぐらいの感覚で接するようになりました。
ちょっとマイナスは『信頼をしているから、何があってもまあ良いか〜』と思えるような状態なんです。
もし頼みたいことがあったら、怒ったり命令するんじゃなくて、素直に『お願い』するようしています。
『お願い』は、家庭にも仕事にも育児にだって応用できるコミュニケーション方法だと思いますよ」
この話を聞いて、わたしは「ハッ」としました。
我が家は結婚して4年目。ちょうどお互いの化けの皮がはがれてきて、最近では悲しいかな、ぶつかることが増えてきたように思えます。
相手に注意するのが面倒になり「言わないでもやってくれるだろう」と、どこか期待をしてはガッカリし、そんな積み重ねに少し疲れていたんです。
インタビュー後さっそく実行し、少しのことでも「お願い」として言葉にするようにしました。まだはじめて数日ですが、心が軽くなったのは確かです。
失敗と向き合ったからこそ「自分を知る」ことができた
この日兎村さんからは「受け入れる・寄り添う」と二つの言葉を何度も耳にしました。そんな風に言葉にできるのは、兎村さんは自分のことをよく知っているからでしょう。
自分を知ることは「簡単なようで難しいなぁ」とわたしは日々感じています。
良いところも悪いところも丸ごと受け入れるには、思い込みや欲を取り除いて、心の奥底にいる自分自身と向き合わなければなりません。
兎村さんはご主人と出会い、まっさらになったところから、第二の人生のスタート地点に立ちました。
3話目ではどのようにして、二人の暮らしの形を作ったのかを伺っていきます。
(つづく)
もくじ
TO2KAKU 兎村彩野
(イラストレーター&アートディレクター)
1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始し、17歳でフリーランスになる。現在は夫婦2人のデザインユニット TO2KAKU(http://to2kaku.com/)として、誰かの「作りたい」気持ちをカタチにしている。
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