【ふたりのチームワーク】第1話:結婚して13年。大げんかして分かった「夫婦の役割分担」って?

編集スタッフ 塩川

1_1606_futari_A-121写真 米谷享

わたしたちは、暮らしのあらゆる場面で「誰か」と共に生きています。

一人じゃないからできること、一人じゃないから伝わらなくて大変なこと。

家族や友人、職場など。自分とは違う「誰か」のことを理解し「これがいい」とルールを見つけるまでには、ぶつかったり悩むことも沢山あります。

新連載「ふたりのチームワーク」では、さまざまな「おふたり」にお話を伺い、心地よい暮らしや仕事を作るためのヒントをお届けします。

今回はお互いフリーランスのフォトグラファーとして、暮らしまわりの雑誌や書籍で活躍されている、大森忠明(おおもり ただあき)さんと砂原文(すなはら あや)さんご夫婦に、ご登場いただきました。

 

仲が良いのに、お互いのことを知らない?

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大森さんと砂原さんは、3歳になる娘の青(あおい)ちゃん、猫2匹と暮らしています。

ご自宅にお邪魔し、雑談をしながら取材の準備をすすめていくと、じーっとリビングを見つめ、何かひらめいたような表情をする大森さん。

「テーブルの向きを変えた方が、光の入りがよくて撮影しやすいんじゃない?」と話すと「確かにそうだね」とふたりで素早くテーブルを動かします。

フォトグラファーの夫婦らしい、自然なチームワークを目の当たりにしながら、取材はスタートしました。

1_1606_futari_A-6-2▲テーブルを動かすおふたり。写真・左が大森さん、右が砂原さんです。

同業者でとても仲の良さそうなおふたり。ですが「お互い相手の事は、よく知らないんです」と少しドライにも聞こえる一言が飛び出します。

「仲のいい夫婦って、お互いの全てを知っているものなのでは?」と思っていたわたしは、大森さんと砂原さんのチームワークがどうやって作られたのか、ぐっと興味が湧きました。

 

家族を引っ張る妻と、調整役の夫

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出会って約20年、結婚して13年のおふたりは、同じ大学の写真サークルで知り合いました。学年は妻である砂原さんが一つ上になります。

「わたしの方が先輩だから」と新入生の大森さんに話しかけ、お付き合いのはじまりや、大森さんがフリーのフォトグラファーになるきっかけも、砂原さんの存在が大きかったそうです。

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「引越しなどの大きな決断なども、わたしが率先して決めることが多いんです。パッとひらめいてパッと決めちゃいます。

それを大森がじっくり『こうじゃない?ああじゃない?』と考えながら、細かい部分を調整してくれるんです」

1_1606_futari_A-2-2▲砂原さんがお花を生けると……

1_1606_futari_A-45-2▲さりげなく花瓶に水を注ぐ大森さん。

おふたりのチームワークは大学時代のなごりもあり、先輩である砂原さんが家族を引っ張るリーダーに、後輩である大森さんが調整役に回ることが多いのだとか。

そのバランスは、どちらかが偉そうにしていたり、不満を抱えたりという訳でもなく自然に見えます。今のちょうどいい役割分担を見つけるには、とある「きっかけ」がありました。

 

ふたりのルールは「大げんか」から生まれた

1_1606_futari_2▲一人暮らしの部屋を空っぽにしたときに、結婚祝いで買ったカメラで撮った、思い出の写真。(撮影:砂原文)

おふたりは2003年に結婚し、一緒に暮らしはじめます。そのタイミングで砂原さんは、3年間アシスタントをしていた師匠の元から卒業し、一人前のフォトグラファーとて独立しました。

一方、大学在学中から釣り雑誌を中心に、プロのフォトグラファーとして働いていた大森さん。

結婚当時はお互いまだ20代ということもあり、仕事がないこともしばしばで、どちらかの撮影にもう片方が手伝いに行くことがありました。

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「わたしは師匠の影響もあり、タレントさんの撮影を頼まれることがありました。タレントさんは忙しい方が多いので、撮影の時間が短いんです。

当時はフィルムカメラでの撮影です。フィルムの交換って時間がかかるんですよね。そんな時にアシスタントに来てもらいました」

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「その頃の僕は、釣り雑誌で撮影はしていましたが、アシスタントの経験がなかったんです。最初はどういうスタンスで、現場に行けば良いのか分かりませんでした。

『こうした方がいいんじゃない?』とか、『レンズこれだろっ!』と互いに言い合っていたら、現場に2人のカメラマンがいる状態になり、他のスタッフさんたちも混乱して、場の空気がどんどん険悪になるんです……」

同業者だからこそ、良いものを作るために譲れない一線が、お互いにあったのでしょう。当時のことは口を揃えて「大ゲンカだった」と話していました。

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「このままじゃダメだと思い、すぐに話し合いをしました。そして『現場にリーダーは2人いらない』という結論になったんです。

アシスタントの人は夫婦といえど、あくまでアシスタント。カメラのファインダーを覗かない。カメラマンとしての発言はしない。そういった、夫婦間の約束をしました」

 

「言わない」という選択肢が、あると知った

1_1606_futari_A-272▲左が砂原さん、右が大森さんの機材。大森さんのストラップには大ファンと話す、エレファントカシマシ宮本さんのサインも。

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「過去の大ゲンカがあるから、家で仕事の話になっても、同業者だからといって、カメラマンとしてのアドバイスはしないんです。

仕事の時のいい写真って、カメラの腕だけで決まらないんですよね。その現場に行ってないから分からないし、場の空気はいろんな人が関わってみんなで作るものなので。

だから出来上がった写真だけを見て『こうした方がいいんじゃない?』と思わなくなりました。言っても相手を傷つけるだけだなと。それにもう、済んじゃってる事ですから」

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こうして決めたことは、ふたりの最初で唯一のルールとなり、夫婦生活にずっと根付いています。

大ゲンカがあったからこそ、「役割分担」が明確になり「相手のことを思いやる気持ち」が生まれたように思えます。

チームはどちらもリーダーでも、リーダーが居なくても上手くいきません。引っ張る人、フォローする人。その2つが成り立ってこそ、チームらしくなるのではないでしょうか。

大森さんと砂原さんが「お互いの全てを知らなくてもいい」と言える、ヒントが少しずつ見えてきました。

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おふたりには2013年に、新たな家族として娘の青ちゃんが生まれます。出産後、チームワークにどんな変化が訪れたのでしょうか?

2話目では出産を通じて変わったこと、変わらなかったことについて迫ります。

(つづく)


 

もくじ

 

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大森忠明・砂原文
(フォトグラファー)

お互いフリーのフォトグラファーとして、暮らしまわりの雑誌や書籍で活躍。3歳の娘と猫2匹と暮らす。当店のリトルプレス『暮らしノオト vol.21』では、砂原さんのインタビューを掲載中。撮影は大森さんにご協力いただきました。
http://laaufilm.com/


▽大森忠明さん・砂原文さんが撮影した書籍は、こちらからご覧いただけます

 


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