【BRAND NOTE】前編:1年分の言いそびれた「ありがとう」や「ごめんなさい」を年賀状に託して。
みなさんは年賀状を出していますか?今回はCanon PIXUS(ピクサス)のプリンターをつかった年賀はがきにフォーカスしました。2児の母であり文筆家の大平一枝さんは、年賀はがきに1年分の言いそびれた「ありがとう」のお礼と「ごめんさない」のお詫びを込めて出すようにしているそう。なかでも子供の通っていた小学校の先生に励ましと感謝の気持ちを綴った年賀状は、一時は元気をなくしていた先生を勇気づけるものとなりました。今年の年末は、メールではなく大切な人へあたたかいメッセージをはがきにしたためて送りませんか?
編集スタッフ 二本柳
最近、年賀状を出していますか?
ポストを開けて、自分宛に届いた年賀はがきを読むのがたのしみだったお正月。
子供の頃はあれほどワクワクしていたのに、歳を重ねるごと無精な性格に磨きがかかり、最近はほとんど書かなくなってしまいました。
でも今年の元旦、10年ほど前にとてもお世話になっていた部活の顧問から1枚の年賀状が届きました。
「つい最近、あなたのことを思い出した。元気にしているのか?」 と。当時はまだSNSも普及しておらず、60歳をこえるその女性とは、私の環境が変わったタイミングで音信不通となっていました。
思いがけない便りは、嬉しいような寂しいような思いで胸をいっぱいにしてくれる一方で、 私が 「今」 という点だけを見ていた間、どれほどの時が過ぎてしまったかを証明しているようでした。
これまでの過去に助けてもらった様々な出会いを、私はここ最近で一度でも振り返ったことがあっただろうか……と。
たった1枚のはがきを、どうして自分から出せなかったのだろう。
今回BRAND NOTEでご一緒することになったのは、家庭用プリンターの「PIXUS TS8030」 です。
CANONが手がけるPIXUS TS8030は、写真や文字をクリアに印刷することが得意。だからとくに年賀状におすすめしたいプリンターなのだとか。
実はクラシコムのスタッフに聞いてみても、すでにPIXUSを愛用して年賀状作りをしているスタッフが複数いたほどでした。
1年の締めくくりに差し掛かる今の時期だからこそ、そんなPIXUSとのお取り組みを通じて 「年賀状」 の作り方アイデアから、この習慣の意味まで……改めて向き合ってみることにしました。
デザイナー波々伯部宅で愛用しているPIXUSプリンター。
前編となる本日は、そもそも減少の傾向にあると言われる年賀状の習慣そのものから問いなおすことに。
当店の週末エッセイでもお世話になっている文筆家・大平一枝(おおだいら かずえ)さんは、年賀状を 「いいそびれた 『ありがとう』 を伝えるのにちょうどいい場」だと話してくれました。
その理由とは?
BRAND NOTE「PIXUS TS8030」 編、前編は大平さんの書き下ろしエッセイからスタートです。
「いいそびれた『ありがとう』のかわりに」
文筆家 大平一枝
その先生は娘の担任で、海外の日本語学校教員を経て念願の日本の小学校教員になったという変わり種だった。若く、見るからに情熱に燃えたガッツのある女性である。子どものいいところを見つけるのが得意で、担任する1年生の娘のクラスみんなから慕われていた。
ところで、クラス替えと担任の発表は4月の始業式というのが普通だ。つまり、担任が外れたり、転任しても、3月の年度末には発表されないので、お別れが言えない。このしくみだけはなんとかならないものかと思うが、いたしかたない。
12月。娘はたどたどしい字で、その先生に年賀状を書いていた。ふと私も思いたち、娘とは別に彼女に年賀状をしたためた。なぜかというと、2学期後半は夜9時や10時に学校の近くで彼女とすれ違うことが多く、少々心配だったからだ。わずかに、目の輝きがくもりつつあるような気がして、はらはらもしていた。故郷から離れて一人暮らしをしながら、夜遅くまで子どもたちのために頑張っている新任教師を、おこがましいが、半ば親御さんのような気持ちで見守っていたのだ。おりしも、テレビニュースでは、教員の心の病が増えていると繰りかえし報道されていた。考えてみると、教員は苦情を言われることはあっても、「ありがとう」と保護者から直接言われる機会はなかなかない。
私は何事も一生懸命な彼女にどうしてもその一言を伝えたかった。とはいえ、参観日や面談の時にいきなり「いつもありがとうございます。がんばってください」というのも変だ。
だが、年賀状なら、さりげなく、励ましや御礼や気持ちを伝えられる。短い言葉でも、文字に載せた思いはきっと心に届く。そう信じて投函した。
大平さんの歴代の年賀状の一部。
偶然翌年も娘の担任となった2〜3か月後のこと。懇親会か何かの折りに、彼女は声をかけてきた。
「おかあさん、あのときはありがとうございました。子どもたちからはもらうけれど、保護者の方から年賀状をもらうなんて思ってもいなくて本当に嬉しかったです。私、ちょっと疲れていたときで……。玄関であれ読んで泣いちゃいました」
そこには1年前の4月に見たままの、元気な先生のきらきらした瞳があった。いや、さらに自信と経験に裏打ちされた誇りさえ感じられるはつらつとした笑顔だった。たった1枚の年賀状でそうなったはずはないが、一瞬でも彼女の元気のかけらになっていたらいいなと思った。
あれから12年。彼女はいくつかの学校に赴任し、いまや立派なベテラン教師だ。卒業後は食事をしたり、中学受験の相談をしたり、逆に彼女の恋愛相談に乗ったりとおつきあいも、年賀状も続いている。
手紙ほど肩肘張らず、メールほど浅くない年賀状は、1年のいいそびれた「ありがとう」や「ごめんなさい」や「がんばって」を伝えるのにちょうどいい距離感の伝達ツールだ。
ビュンビュンと忙しく過ぎゆく日々の中で、心の奥にしまい込んだまま忘れそうな出来事を1年の最後にとりだして、みつめなおす。言えなかったありがとうがあれば、そっとはがきに託す。私は100枚ほど出すが、毎年そのうちの何枚かには、そんなちょうどいい塩梅の御礼やお詫びを託している。
文筆家・大平一枝
しっかり御礼しようと思ったまま時間が過ぎてしまったことや、「あの時は、ごめん」 と言いたくて頭に引っかかっていたこと。
大平さんの言う 「1年分のいいそびれた感謝やお詫び」 は私にも思い当たる節がありました。
私はまず、10年ぶりに声をかけてくれた年賀状の差出人に 「ありがとう」 の気持ちを伝える1枚を書いてみようと思います。それから連絡が途絶えてしまっていた懐かしい友人にも。
1年の最後に、これまでの人との出会いを改めて振り返ってみるのも良いかもしれませんね。
次回は、そんな年賀状をクラシコムスタッフ2名が手作りすることに。相手を思う気持ちが伝わるような、とっておきの1枚をPIXUS TS8030で作ります。
(つづく)
▼PIXUS TS8030の年賀状スペシャルサイトはこちらからご覧いただけます。
【写真】 岩田貴樹
もくじ
文筆家 大平一枝
長野県生まれ。編集プロダクションを経て、1995年ライターとして独立。大量生産・大量消費の社会からこぼれ落ちるもの・こと・価値観をテーマに、女性誌、書籍を中心に各紙に執筆。『天然生活』『暮しの手帖別冊 暮らしのヒント集』等。近著に『東京の台所』(平凡社)、『日々の散歩で見つかる山もりのしあわせ』(交通新聞社)。最新刊は、紙をめぐるクリエイターらの心の物語を描いた 『紙さまの話: 紙とヒトをつなぐひそやかな物語』(誠文堂新光社)。プライベートでは長男(21歳)と長女(17歳)、二児の母。
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