【蒸篭のホントのところ】第2話:固くなったパンもよみがえる?料理家さんに教わる、蒸篭の良さと選び方。

編集スタッフ 齋藤

ずっと気になっているのに、種類も多く使い方もわからず、手が出せていなかったキッチン道具蒸篭(せいろ)。

今回はそんな蒸篭にフォーカスして魅力や選び方をお伝えする特集を、全3話でお届けしています。

第2話では当店の読みものでもおなじみの、料理家フルタヨウコさんのご自宅に伺いました。

「蒸篭を活用するだけで素材のおいしさが増しますよ〜」というフルタさんに、蒸すことの魅力や蒸篭の選び方を教わります。

 

レンジや茹でるのとは違うの?蒸篭の良さってなんですか。

フルタさん:
「蒸篭を使って、例えば冷凍ご飯を解凍することもできます。でも時間が10分以上もかかる上に、芯の部分が冷たいままなんてことも。

なのでご飯の解凍なら、わたしはレンジを使うことをおすすめします。蒸篭がどういう場面で役に立つのかといえば、やっぱり調理の一部として『蒸す』とき。

レンジと比べてしまえば時間がかかりますが、その分蒸気で包み込んで火を通すので、素材がふわりと優しい味に仕上がります。また冷め方もゆっくりですし、時間がたってもパサつきにくいんです」

フルタさん:
「そして茹でるのとはどう違うのかというと、水につけるわけではないので、水っぽくなりにくいと思います。

例えばブロッコリーは茹でると頭の部分に水分が入り込み、時間が立つとべちゃっとなることも。でも蒸せば、そういうことは起こりません。

レンジでも茹でても確かに調理はできますが、蒸すことで素材の違ったおいしさを味わえると思います。例えば豆腐も蒸してみるだけで、湯豆腐とは違うふんわりとした食感を引き出せるんです」

 

固くなったパンもよみがえる!温め直しなら肉まんやカンパーニュ。

▲蒸篭に油分がつかないように、パンの場合はクッキングペーパーなどを敷いて使うと良いそうです。

フルタさん:
「でも唯一解凍や温めるのに向いていると思うのが、肉まんやあんまんなどと、ベーグルやカンパーニュなどの固めのパンです。

肉まんなどはレンジで温め直すと、場所によって水っぽくなったり固いままだったり、皮が乾燥して堅くなったりしますが、蒸篭なら水分が偏ることもなく、全体がふわふわに仕上がります。

パンは日にちが経って固くなってしまったものも、蒸すことで水分が入り、またおいしく食べられますよ」

▲冷凍したカンパーニュも3分でふわふわに〜。

フルタさんにカンパーニュを蒸してもらったところ、3分ほどでアツアツふわふわに。試食してみると、そのまま食べるのとは違いとろけるような食感に生まれ変わっていました。

蒸篭を使えばこんな楽しみ方もできるみたいです。

大きさや素材もピンからキリまである蒸篭。フルタさんに、はじめて買う時のヒントを教えていただきました。

 


教えてフルタさん!
はじめての蒸篭の選び方


 

我が家にぴったりの大きさは?

▲左が30センチ、右が21センチです。

フルタさん:
「サイズは18センチから21センチくらいの1段で、ひとり分が目安です。ひとり暮らしでもおもてなし用にちょっと多めに作りたい時がある場合や、ふたり暮らしの方は、同じ大きさで2段のものを用意するといいと思います。

そして3人から4人家族くらいなら、24センチ以上がおすすめ。

3段までならムラなく蒸すことができるので、メインのおかずを作りたいのか、サブだけでいいのか、一度に何品も作りたいのかなどの用途によって、段数を決めたら良いと思います」

フルタさん:
「ちなみに茶碗蒸しなどを作りたいのであれば、器が入るように、蒸篭の深さもチェックした方が良いと思います。

蒸篭には重ねる部分に切り込みが入ったものと(写真左)、そのまま載せて重ねるもの(写真右)があり、そのまま重ねているもの(写真右)は深さがあるため、茶碗蒸しなどもつくることができます」

その他にも、蒸篭には中華蒸篭と和蒸篭があります。

和蒸篭の方が深さがあるため、茶碗蒸しなど高さのある器を使いたい場合は向いているようです。そしておこわをつくる際にもぴったりなのだとか。

 

高級な方がやっぱりいいの?素材別の選び方。

フルタさん:
「さまざまな値段のものがありますが、わたしのおすすめは、まず手の届きやすいものを購入してみて試してみること。使い方は簡単ですが、やはりかさ張るものなので、自分の暮らしに馴染むかどうか見極めた方が良いと思います。

素材によって耐久性や香りは異なるかもしれませんが、安いものだからといって調理にはあまり影響はないと思います。

わたしも最初の蒸篭は3000円くらいのもの。でも、すでにかれこれ20年近く使っていますよ」

蒸篭は一番手の届き安い値段が杉、次が竹、そして一番高級なのが檜(ひのき)です。

杉は香りの良さと耐久性に長けています。逆に香りはあまりない方がという方は、竹にすると良いよう。そして檜は木目の美しさと丈夫さ、さらに檜の香りが好きという方にはおすすめだそう。

 

蒸篭の他に必要なアイテムは?

フルタさん:
「基本的には、蒸篭とお鍋があれば大丈夫です。でも蒸篭と同サイズのお鍋を持っていない場合は、蒸し板を用意すると良いと思います。これがあれば、専用のお鍋は必要ないですよ。

さらに鍋に直に置くのと違い、蒸篭の焦げを防ぐことができます。

サイズは、蒸篭にぴったりなのものはもちろん、大きくても大丈夫です。大きいものは蒸気が多すぎる時、蒸し板の上で蒸篭を少しずらして蒸気の量を調節することもできます。

なので大きめの方が使い勝手が良い場合も」

 

調理法は?お手入れは?さらに気になるアレコレにせまります。

たくさんの種類がありすぎて、まずどこから考えたら良いのかすらわからなかった蒸篭選び。第1話でのスタッフの話や、フルタさんの選び方を参考に、ある程度の見当をつけることができそうです。

さらに、その使い心地も気になるところ。そこで最終話でお届けするのは蒸篭の使い方です。

フルタさんに白身魚の蒸し料理レシピを教わりつつ、準備から片付けまでをご紹介します。

(つづく)

【写真】木村文平


もくじ

 

 

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yoko

フルタヨウコ(料理家)

デザイン関係の企画編集、執筆、写真を手がける一方で、ケータリングを開始。オリジナルジャム制作の他に料理やイベント出店なども行う。現在はKURASHI&Trips JAM LABORATORYでのジャムプロデュースを務める。http://home-home.jp

 


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