【大人の涙】第3話:涙は自分と向き合うヒント?上手な付き合い方とは

編集スタッフ 奥村

大人になるにつれて、「泣くこと」に後ろめたさを感じるようになったわたし奥村。きっと同じように涙をぐっと我慢した経験のある人も、少なくないのではないでしょうか?

今回の特集ではそんな大人になってからの「涙」との向き合い方を、全3話で探ります。

第2話では心理カウンセラーの竹内好美(たけうち よしみ)さんに、ストレスを感じた時に泣くと心が落ち着くなど、涙の意外なチカラを教わりました。

けれど、いつでも泣いてストレスを解消できるわけではないのが現実です。そこで第3話では、涙との上手な付き合い方を聞きます。

 

大人が心地よく涙と付き合うには?

いくら泣くことがストレスを軽くすると言っても、涙が出やすい人もいれば、出にくい人もいます。

涙の出にくい人が無理に「泣こう」と頑張れば、また別のストレスが生まれるかもしれません。

それぞれが心地よい距離感を保ちながら涙と付き合っていくには、どうすればいいのでしょうか?

竹内さん:
「大事なのは日々感じたストレスを、そのまま溜め込まずきちんと消化すること。泣くことはそのための1つの方法であって、涙を出すこと自体が目的ではありません。

なかなか泣けない人は、無理して泣く必要はありません。それ以外でストレスを軽くする方法を見つければいいんです。

涙もろい人も、手放しで泣けない状況の時に、心を楽にできる手段を知っていれば大丈夫ですよ」

 

泣かないクセがついていたら、まずはリラックスしてみて

竹内さん:
「カウンセリングをしていると、『大人になってからほとんど泣かなくなった』という方にもお会いします。

もちろん、泣く以外のストレス解消方法を知っているから涙を流す必要がないのかもしれません。けれど、実はストレスが溜まっているのに、無意識に泣く行為を抑えようとするメカニズムが身体に定着していることもあるんです。いわば『泣かないクセ』がついている状態です。

涙は、身体がストレスを感じていることのサインでもあります。だから普段あまり泣かない人こそ、知らぬ間にストレスが溜まっていないか、自分と向き合う機会を持つことが必要かもしれません」

では涙を無意識に抑えず、流しやすくする方法はあるのでしょうか?

竹内さん:
「照明を少し暗くして、好きな音楽を流したり、アロマを焚いたり。1人きりで心を落ち着けて、リラックスできる時間を作るのがおすすめです。

人は日常生活で、無意識に緊張しているもの。心地よい空間に身を置けば、緊張がとけて自分の気持ちと向き合いやすくなり、自然と涙も流れやすくなりますから。

泣くという行為には、意識だけでなく環境も深く関わっています。心をスッキリさせたい気分の日には、部屋のしつらえから涙の『お膳立て』をしてみてはいかがでしょうか」

 

泣き虫なわたしが、涙と上手く付き合うには?

では反対にすぐに涙を流してしまう人が、上手に涙と付き合っていくにはどうすればいいのでしょうか?

竹内さん:
「心理カウンセラーとしては『涙は我慢せずに流してほしい』というのが本音です。でも、泣いてはいけない場面や涙をこらえたくなる事情は誰にでもありますよね。

そんな時、涙もろい人は自分の『涙のツボ』を知っておけたら気持ちが楽になるかもしれません」

「涙のツボ」とは、こんな状況に陥ると泣くことが多いというパターンのこと。

過去に自分が泣いてしまった場面を振り返り、その時の思考回路を理解することで、同じ状況に陥りそうなときにもより落ち着いて対処できるようになるといいます。

竹内さん:
「それでも泣きそうになった時は、腹式呼吸をしてみるのもひとつの方法です。泣く寸前は身体が興奮状態にあり、浅い呼吸をしてしまいがち。深い呼吸に変えるだけで、気持ちが落ち着いてくるはずですよ」

わたし奥村が思い当たった涙のツボは、「冷静でいられなくなったとき」。予想外の出来事で感情が乱れたり、パニック状態になったとき、思わず涙がこぼれることが多かったように思います。

冷静さを失いそうになったら、「今の自分は泣いてしまうかもしれない」と客観的に状況をとらえること。そしてそれでも涙がこらえられないときは、腹式呼吸をしてみる。この2つを意識するだけで、涙もろい自分との向き合い方が少しだけわかったような気がしました。

 

大切なのは、心のしこりを吐き出すこと

また、泣くこと以外にも心を軽くできる方法はあるといいます。

竹内さん:
「カウンセリングで実践しているのは、いま自分が不安に思っていることや心に引っかかっていることを、ありのまま口に出してみる療法です。

友達や家族に話を聞いてもらうのもいいですし、人に弱音を吐くのが苦手な人は、部屋に1人きりでいるときに言葉にしてみても。あるいは、気持ちをノートに書き出すのも1つの方法です」

竹内さん:
「この方法は、涙をこらえた後にも必ずやってほしいこと。泣きそうになった時に生じたわだかまりは、泣かなかったことでストレスとして溜まってしまうもの。だから、何かの形で消化できるよう意識しましょう」

心に閉まっていた出来事を言葉にして、自分の気持ちを客観的に整理する。それは『泣く』プロセスと同様に心を軽くする効果があるよう。この療法を通じて、何か腑に落ちたように涙を流す方もいるといいます。

大切なのは、心のしこりを吐き出すこと。その方法は涙だけではなく、気持ちを言葉にしたり、ノートに書き出したり、自分にとって心地よい形を選べばよいのだと知りました。

 

「涙」は、自分と向き合うヒント

大人になっても泣き虫なことが、コンプレックスだったわたし奥村。涙はわたしにとって、自分が大人になりきれていない象徴のようで「厄介なもの」でした。

でも思えば、流れた涙の理由について、深く考えてみることはなかったように思います。

自分は何にストレスを感じやすくて、どんな状態を心地よいと思うのか。涙はわたしにとって、そんな自分の気持ちを知るヒントのひとつだったのかもしれません。

これからも涙をこらえたい時はあるだろうし、こらえきれずに結局泣いてしまうこともあるはず。どちらの自分も肯定しながら、その根本にある心のしこりをその都度吐き出して、自分と向き合っていけたら。

大人にとって「涙」は厄介なものじゃなく、自分を知るためのヒントなのかも?  そう思えてきました。

(おわり)

【写真】木村文平(8枚目以外)


もくじ

 

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竹内好美

心理カウンセラー。「竹内好美カウンセリング事務所」代表。東京大学文学部卒業後、20年間、広告代理店でコピーライター、クリエイティブディレクターとして活躍したのち、部下のメンタルの問題をきっかけに心理カウンセリングの道に進む。現在、東京や名古屋で不定期に「号泣セミナー」を主催し好評を得ている。http://jibunworks.web.fc2.com/

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