【木曜日になったら、純喫茶】熱々の軽食とおいしいコーヒー。冬の夜に訪れたい、ほっとできる純喫茶
難波里奈
これまで1700軒以上の喫茶店をめぐってきた難波里奈が、月1でおすすめの喫茶店をご紹介する連載 「木曜日になったら、純喫茶」 。
いよいよ寒さも厳しくなった12月は、「冬の夜に、ほっとあたたまる寄り道」をテーマにお届けします。
体の芯まで凍えるような冬の夜。たとえばこんなお店に立ち寄って、こわばる体をほぐしませんか?
慌ただしい年の瀬に、ほっと一息
冬の夜に寄りたい純喫茶
熱々を頬張りたい、絶品クロックムッシュを頂ける店があります。
12月18日で45周年を迎えたばかりの「カフェ ドゥー」は、純喫茶を愛する人たちの間で「クロックムッシュが美味しい店」として知られる目黒の老舗店。
人気の高いその味は、初代店主がパリへ遊びに行った際、友人が作ってくれたクロックムッシュの美味しさが忘れられず再現したメニューなのだとか。
現在お店を切り盛りするのは、二代目を引き継いだマスターの嵯峨さんです。
かつて銀座のとある喫茶店で働いていた嵯峨さん。
一度にたくさんの珈琲を淹れるやり方に納得できず、「やっぱり一杯ずつたてるのが美味しいから」とお店を去りました。
「カフェ ドゥーでアルバイトとして働くことになって、その時に『珈琲が透き通ってる!』って感動したんだ」
一度は企業に就職したものの、「組織が苦手でね。それにいつか自分の店を持ちたいと思っていたから」と、再び喫茶の世界へ。
その頃にはすっかりこの世界から抜け出せなくなり、今に至るそう。(当時の嵯峨さんは珈琲が飲めず、ミルクや砂糖を入れて飲んでいたというのも面白いエピソードです)
この夜、珈琲を片手に談笑しながら、45年前に発行されたある雑誌を見せていただきました。
そこには「目黒の珈琲店」という特集で紹介されていた、開店してまだまもないドゥーの姿。
当時、珈琲が一杯150円だったのに対して、クロックムッシュはなんと200円。現在の価格でいうと珈琲が450円に対して600円といったところでしょうか。
高級ではありますが、それでも食べてみたい憧れのメニューだったのでしょう。
▲スープとのセットも人気メニュー
冷えた体にやさしい熱々のクロックムッシュは、バターをたっぷり塗ったパンにハムとチーズを挟んだだけ、というシンプルさ。
それでいて、まるで特別なベシャメルソースでも入っているのではと勘違いするほど濃厚な味わいです。
「シンプルな具材だからこそ違いがはっきりと分かってしまうんだよね。材料は本当に良いものを使用します。美味しいものを提供するにはお金がかかるね」と、冗談っぽく笑う嵯峨さん。
なかには嵯峨さんがマスターになってから生まれたメニューもあります。そのひとつがミニグラタン。
「クロックムッシュの他にも何か軽食を出したいと思ってね。でも珈琲の香りを損ねるものは困る。グラタンならいいのではないかと」そう考えついてさっそく自由が丘のイタリア料理店で修行をしたというから驚き。そこで学んだレシピにアレンジを加えたものを提供していると言います。
▲カウンター席の壁に貼られているメニューの金額はもう20年もの間、値上げをしていないとか。毎月18日には、12/18の開店記念日にちなんでチーズケーキが100円引となる大サービスも。
年の瀬の慌ただしい夜。
路地にひっそりと佇むカフェ ドゥーは、小さめな店内に居心地のいい席と、あたたかな黄色い灯りで私たちを迎えてくれます。
熱々の軽食を頂きながら、ノリタケのカップに光る珈琲を一杯。
冬の寒空で冷えきった体をあたために、今夜はカフェ ドゥーへ寄り道しませんか?きっと、心も体もほっとほぐされるはずですよ。
カフェ ドゥー
住所:東京都品川区上大崎2-15-14 高木ビル1F
TEL:03-3444-6609
営業時間:9:00〜21:00(土日祝13:00〜19:00)
定休日:なし
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珈琲美学アベ
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TEL:0263-32-0174
【写真】岩田貴樹(最後2枚をのぞく)
難波里奈
東京喫茶店研究所二代目所長。東京生まれ。会社勤めを続けながら仕事帰りや休日を利用して足を運んできた喫茶店の数は、なんと1700軒以上。ブログ
「純喫茶 コレクション」 をはじめ、著書 『純喫茶へ、1000軒』 (アスペクト)、『純喫茶、あの味』 (イースト・プレス) を通じて喫茶店の魅力を伝えている。他にテレビや雑誌などで幅広く活躍中。http://retrocoffee.blog15.fc2.com/
▽難波さんの著書はこちら
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