【暮らし上手の収納術】後編:だから、続けられる。 自分も家族も気持ちがいい収納

編集スタッフ 松浦

物が多くても美しく収納し、大好きなアイテムに囲まれて暮らしたい。

そんな気持ちを叶える特集 「暮らし上手の収納術」 をお届けしています。 伺ったのは、木工デザイナーの旦那さんと、DIYユニットZUBOとして活躍されている、カナヤミユキさんのご自宅。ここ神奈川のお住まいと都内のアトリエを行き来しながら、娘さんと3人で暮らしています。

後編では、一際目を引く壁一面の収納スペースを中心に、リビングダイニングの収納をお届けします。

 


だから、続けられる。
自分も家族も気持ちがいい収納


「なかなかものが捨てられないんです〜」とカナヤさんの言葉とは裏腹に、ミニマムな人の暮らしを想像させる、すっきりとしたリビングダイニング。その秘密は「隠す」収納にありました。

決められた場所にきちんと帰ってくるものたち。そんな理想の収納を家族で続けていく秘訣をカナヤさんに伺いました。片付けがちょっと楽しくなる工夫がいっぱいです。

 

食器類はカタチで分けるとすっきり

奥のキッチンと手前のダイニングを繋ぐように、壁一面に広がる真っ白な扉。日常使いの器から、カナヤさんのお気に入り、家族の思い出の品が、ここに収まります。

器類は、食事の支度がしやすいよう、ダイニングテーブルに面して収まっています。

カナヤさん:
「娘の友人を招いてパーティーすることが多かったので、3人暮らしにしては器が多いかもしれませんね。集めてるっていうわけではないんですが、必要だったら自然と増えていきます。同じ形や、素材、色で分けると、なんだか見た目にも楽しいですよね」

 

思い出の品は、ギャラリーのように並べてお気に入りのスペースに

器類の隣は、書籍や小物などカナヤさんのお気に入りスペース。まるで呉服屋さんのように重なる平たいボックスには、カナヤさんが「なんとなく捨てられない」という、ファブリックや、海岸や森で拾った石や木のみが標本のように並びます。

お気に入りをただ収めるのではなく、形や大きさに沿って並べるだけで、愛おしさも倍増。なんだか自分だけの展示スペースのようでワクワクしますね。

 

細々した道具は、小箱でパズル気分の収納

場所を移し、こちらはカナヤさんの仕事関連のものが収まるデスク。DIYで欠かせない文房具たちがパズルのようなボックスに収まります。

カナヤさん:
「仕事柄、端材がたくさん出てきます。このボックスは、そんな端材を使って夫が作ってくれました。こうやってピタリと合うのがなんだか気持ちがいいですよね」

 

階段下も収納の宝庫

階段下にもDIYで作られた収納が。裁縫道具や文房具、書類など日常で使うものをここにまとめています。

化粧箱屋で作ってもらったという、引き出しぴったりの箱には、文房具などちょっとしたときに便利な小物がすっぽり。小さなホームセンターみたいで、なんだか楽しげです。

階段下のこの引き出しにはCDがぴったり。奥行きもあるので、しっかり収納できます。

引き出しの隙間のホコリが気になって、後からつけたという扉。内側にはマグネットが止められるようになっているので、ちょっとしたメモをするのに重宝しているとか。

カナヤさん:
「娘が小さいときは、学校でもらってくるプリントをここに貼っていました。ちょうど内側だから見えなくていいでしょ? いまでは、展示のポストカードや忘れてはいけない書類を貼って、私のメモがわりです」

 

ストレスフリーな片付けの秘密は「とりあえずボックス」を作ること

捨てられない性格と話しながら、カナヤさんの住まいはすっきりとした佇まい。気づけば、テーブルや棚の上など、なんとなくものを置きたくなってしまう所にものがありません。

カナヤさん:
「テーブル隅って、どうしてもものが溜まりがちですよね。そこにものがあるだけで、『あ〜片付けなきゃ』って自分も嫌だし、子供に注意するのも疲れる。

うちでは、そうならないように、この『とりあえずボックス』を作っています。一人、引き出し1つ。これがあれば、特に考えずにものの一時的な居場所を作れます。家族みんなが心地よく暮らすルールの1つですね。

家族で暮らしているとその「心地よさ」を保つのが大変。誰かが一人で仕切ってやれば、美しくまとまるのは当たりまえですが、家族で暮らしている限り、いろんな感覚の集合体なんです。娘は娘の、夫は夫のセンスがある。

だから、美しく収納することが全てではないと思っています。家族みんなのちょどいいバランスが『心地よさ』だなって」

 

みんなで気持ちよく暮らしていたいから

カナヤさん:
「DIYの仕事をしているけど、これを入れるからこの大きさにしようと、わざわざ収納のために設計することはありません。使っていくうちに、『これはこう使おう』ってルールはできますし、そのルールは暮らしながらどんどん変わっていきます。

ちょっと前の話になりますが、猫を飼っていたんです。朝起きたらキッチンのかつお節がひっくり返されていて、それからは荒らされないように、壁で間仕切りを作ったりしていました。今と同じ家でしたけど、動物1匹家にいるだけで、家具の配置もはガラリと変わるんです。

夫婦ふたりだったとき、娘がまだ小さかったとき、ネコがいたとき。家族が成長すれば、暮らし方も変わる。収納のルールもそんな変わっていく暮らしに合わせて、日々更新されていくものだと思います」

もっと使いやすく、もっと暮らしやすく。今日のこのカタチは、そう考えるカナヤさんの日々の工夫があってこそ。

うんと先のことを考えるのは大変だから、その時々にフィットする収納のかたちを少しずつ叶えていけたらいいのかもしれません。

(おわり)

【写真】木村文平


もくじ

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カナヤミユキ

1999年来、夫と共にDIYの精神を主軸にものつくりを続けている。現在は主に服飾のデザインやテキスタイルデザインなどを担当している。50歳で免許を取得して以来ドライブが趣味に、夫と一人娘と3人暮らし、娘が大学生に進学してからすっかり子育て卒業。週末に金工スクールに通い始め、新たな世界を探索中。https://www.zubo.jp/


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