【嫁姑のカタチ】前編:意外な助けは、「くだらない電話」の中に(和田明日香さん・平野レミさんの場合)

ライター 小野民

気が合って始まる友達や恋人との関係の一方で、自分が生まれる家庭や、パートナーの家族との出会いは、偶然か運命か……。避けられない、だけどよい関係を築いていきたいからこそ、ちょうどいい距離感に悩みがちです。

なかでも、結婚して新しくできる義理の家族の存在はちょっと特別。「嫁姑問題」なんて言葉はタコができるほど耳に入ってきます。

かくいう私も数年前から「嫁」の立場。少し離れた場所に住んでいることや、誰に対してもフラットな義母のおかげで、自称ダメ嫁ながら関係は良好ですが、それでも細々とした事柄について、上手に付き合うコツを探し求めてしまいます。

そこで、特集「嫁姑のカタチ」では、ずばり嫁姑の関係について知りたいと思いました。会いに行ったのは、料理家の和田明日香さん。お義母さんは、あの平野レミさんです。

 

和田明日香さんと平野レミさんの、ちょうどいい嫁姑関係

以前、レミさん、和田さんの2人で出演されている番組を拝見した私は、和田さんの、義母に対する敬意を感じさせつつも気のおけないやりとりに、興味をひかれていたのでした。

お話を聞きに訪ねた和田明日香さんのご自宅は、さわやかな風が吹き抜けていました。「すてきなおうち!」と感激していると、「裸足でビールを飲むのが気持ちいい家ってオーダーしたんですよ」と豪快に笑う和田さん。

のっけから飾らない気さくな人柄で、ふわっと周りの空気を軽くしてくれます。家の雰囲気も、和田さんと呼吸を合わせたような心地よさです。

「いきなり単刀直入にうかがいますが……」と、本題の質問をぶつけてみました。義理のお母さんである平野レミさんとは、どんな関係ですか、と。

和田さん:
「ふふふ、嫁姑関係の質問、よくされますよ。レミさんは少し変わっているかもしれないけれど(笑)。なんの違和感もなく関係性は始まりました。

お義母さんとの関係に悩んでいる方も多いと思いますが、みんな真面目に付き合わなくちゃと無理をしているのかもしれません。私もレミさんと意見が違うなと思ったら『お義母さんはそう思うんですね。私は違います』って言うようにしているんです。

人によって正義は違う。相手の正解を一度は受け止めたいけれど、だからといって自分がそのなかに押し込まれる必要はないし、自分のやりかたで自分の結果を出せばいいはず。

必要以上に自分を痛めつけないように、違和感があったらそのときに伝えて、引きずったり思い悩んだりはなるべくしない。人間関係で気をつけていることです」

 

産後うつを救った、くだらない電話のおしゃべり

はっきりとものを言いつつも、やわらなか印象の和田さん。お話を聞いていた取材スタッフから思わず漏れたのが、「どうしてそんなに健やかなんですか」という問いでした。

和田さん:
「どん底のときもありましたよ。一人目の子どもを産んだ後は、いわゆる産後うつのようになりました。何をやっても自信を持てなくて、何に対してなのか、原因が何なのかもはっきりしないのに、常にイライラしていて。

今考えると産後でホルモンのバランスが崩れていたんです。本当に誰にでも起こることなのに、自分だけだと思って責めていました。こんなに自分の日々をシェアするようになっているのに、この苦しみがなかなか共有できないのはなんでなんでしょうね」

▲居間の大きな観葉植物は、レミさんからの贈りもの。和田さん曰く「何もしないのにどんどん育ってくれるいい子」。

▲レミさんから「誕生日プレゼントに何欲しい?」と聞かれ、「お米券」と答えた和田さん。飾り気のない嫁姑の会話が微笑ましいです。

和田さん:
「その頃、レミさんは本当にくだらないことでよく電話をかけてきて、たわいもないバカ話で笑わせてくれましたね。実の母は洗濯や買い物をしに来て、私をひたすら寝かせてくれて。

レミさんも母も、それぞれらしいやり方で、私のことを気遣ってくれていたと思います。私の周りにいる人たちは、なんだかみんな無理をしていないんです。

きっと、『やりたいことをやっていれば、いいことあるよ』って気持ちがベースにあるんですね。自分のできること、やりたいことの範囲で気遣ってもらっているうちに、ちょっとずつ私も自分らしく戻ってきたような気がします」

 

「ここだけはがんばる」をクリアして、自分を褒めてあげる

和田さん:
「レミさんには、子育ての日々にもたくさんの気づきをもらっています。

毎日あまりに忙しくて、たたんでいない洗濯物がベッドに山積みになっていることがありました。その光景を見て、私が『こんなんじゃダメなお母さんだ』みたいなことを夫に言ったら、『大丈夫。うちの実家にはこの山があと3倍くらいあったから、懐かしいよこの光景』って。

確かにレミさんに『洗濯って大変』って言うと、『なんで?機械が全部やってくれるじゃん』って言うんですよ(笑)」

▲長女が考えてくれたという和田さん夫婦のサイン。

「今は、逆境を乗り越える体力と気力がついてきたかな。たとえば、帰るのが遅くなっちゃってすごく疲れている。それでも、自分のスイッチをぐいっと入れて、乗り切れるようになりました。

早炊きで36分後にご飯が炊けるまでに何品できるか、冷蔵庫を見てパズルみたいに組み立てて、ご飯が炊き上がった瞬間におかずが並ぶと、『ママ、今日はやったよ!』って、ビールを飲む(笑)。そうすると料理する前より不思議とくたびれていないんですよね」

レミさんに仕込まれ、さらには3人の子どもの母となった和田さんにとって、簡単に手早くおいしい料理を作ることは、ままならない自分を認めてあげることにもつながっているようです。

和田さんの平日夕方のルールは、17時には仕事を終えて子どもたちのお迎えに行き、19時には一緒にごはんを食べること。この時間割は、仕事が少しずつ忙しくなってきたときに決めたものです。

レミさんも、和田さんも自分が好きな「料理」に軸を置いて、毎日慌ただしい子育てをなんとか乗り越えてきたのでしょう。

やりがいのある仕事と子育て。それらの天秤は簡単に釣り合いがとれるものではありません。だからこそ、和田さんのなかで「一番やりたい仕事は子どもにごはんを作って食べさせること」という軸は、子どものためはもちろん、母親を健やかに保つものなのかもしれません。

後編は、姑と嫁をつなぐ「料理」のお話。料理経験のなかった和田さんが、いかにして料理が好きになり、食育インストラクターとして仕事をするようになったのかをうかがいます。

(つづく)

【写真】上原未嗣


もくじ

 

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和田明日香

2010年より義母・平野レミのもと修行を重ね、食育インストラクターとして活動中。3児の母で、こどもと一緒に楽しめる料理を得意する。TVや雑誌でのレシピ紹介や、コラム執筆など、多方面で活動中。著書に、『嫁姑ごはん物語』(セブン&アイ出版)『和田明日香のコストコごはん』(光文社)など。2018年ベストマザー賞を受賞。

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ライター 小野民

編集者、ライター。大学卒業後、出版社にて農山村を行脚する営業ののち、編集業務に携わる。2012年よりフリーランスになり、主に地方・農業・食などの分野で、雑誌や書籍の編集・執筆を行う。現在、夫、子、猫3匹と山梨県在住。

 


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