【自信をつける掃除術】第1話:「きれい風」だって、立派な及第点。意識したいフィジカル掃除とメンタル掃除のこと
ライター 嶌陽子
「きちんとした掃除」って、なんだろう?
今年も残すところ1ヶ月半。お正月休みが楽しみな一方、この時期よく目にする3文字に、やや気分が重くなってしまいます。
それは“大掃除”。
家中をきれいにする掃除術の紹介記事を見ると、「なるほど!」と思うのと同時に、自分がいかにきちんと掃除ができていないかを痛感させられてしまうんです。
特に子どもが生まれてからここ数年は毎日バタバタで、掃除は基本的に目につくところをきれいにするくらい。窓やベランダなど、手をつけてないところを目にしては、落ち込むことも。
そんな思いを、編集スタッフの二本柳に話すと、「私も!」との声が。夫と二人暮らしの二本柳も、すみずみまで掃除できているとはいえず、そのことに後ろめたさを感じているのだとか。
どうやったら“掃除上手”になれるんだろう? そもそも“きちんとした掃除”って、どういうもの? 今回は、そんな疑問について考えていきます。
家事の専門家・藤原千秋さんにお話を聞きました。
お話を伺うのは、藤原千秋(ふじわら ちあき)さん。住まいや家事のライター&アドバイザーです。雑誌やウェブサイトでの記事を執筆するほか、家事に関する著書や監修書も多数手がけています。
私生活では3人の娘をもつ母親でもあるという藤原さん。子育てのかたわら、さぞやきっちり掃除をこなしているのかと思いきや、口から出てきたのは意外な話ばかりでした。
「きれい風」だって、立派な及第点。
▲悩みを打ち明けていたら「カウンセラーのように座ろう」ということに
編集スタッフ 二本柳の自宅を訪れた藤原さん。二本柳が、日頃の掃除に関する悩みをぶつけます。
スタッフ 二本柳:
「ふだんは、床に掃除機をかけたり、水回りを掃除する程度。窓の汚れや棚の奥のほこりなど、細かい場所には手がつけられていないという自覚があります。そこを見る度に罪悪感が……」
藤原さん:
「その気持ちはよく分かります。『今日もできなかった』『まだできていない』。そういうことが積み重なっていくんですよね」
スタッフ 二本柳:
「家にいる時間が好きなので、目に見えるところはある程度きれいにしていますが、すみずみまでは全然掃除できていない。まわりに『きれいにしてそう!』と言われるのが後ろめたくて。あくまでも “きれい風” なので……」
藤原さん:
「でも、窓や棚の奥など、後回しにしている場所の掃除って、実は優先度の低いもの。罪悪感を感じる必要はまったくありません。
“きれい風” をクリアできているということは、掃除として十分に及第点。それより上を目指して、『できていないこと』を過剰に恥じるのはもったいないと思うんです」
「フィジカル掃除」と「メンタル掃除」を区別する。
“きれい風”でも及第点!? 藤原さんの意外な言葉に、思わず身を乗り出す二本柳(と私)。
藤原さん:
「健康に直結する掃除が 『フィジカル掃除』 だとしたら、窓ガラスの曇りをとったりするのは自分自身が満足感を得られる 『メンタル掃除』 。“きれい風” になっているのなら、フィジカル掃除は十分にできているはずです」
スタッフ 二本柳:
「それを聞いて、少し気持ちが楽になりました! あらためて、最低限やっておくべきフィジカル掃除とは?」
藤原さん:
「睡眠中の環境は健康に影響するため、寝室のほこりやカビには注意。それから、口に入るものを扱うキッチンまわり。最後に、排泄に直結しているトイレです。これらを優先して意識してみてください。
他の細かい部分は、メンタル掃除。1個でもできたら、自分を思いきりほめてあげましょう!」
「理想のきれい」はライフスタイルや体調、季節によって変えていい。
藤原さんの明快、かつやさしい言葉の数々に、気持ちがぐんと上向きになってきた私たち。
スタッフ 二本柳:
「『ここまでやるべき』っていう理想に全然届いていないのが、掃除におけるいちばんのストレスだったような気がします」
藤原さん:
「その “理想” というのが、具体的にどんなものなのか。そこがポイントです。モデルルームみたいな部屋ではなく、自分自身の暮らしや気持ちにフィットするものを目標にしないと、ストレスはたまるばかりですよね」
スタッフ 二本柳:
「なるほど。掃除は 『とにかくきれいにすべき』 と漠然と考えていて、自分自身や我が家にとっての理想のきれいは、深く考えてこなかったかもしれません」
子育て中の人たちに伝え続けていること。
藤原さん:
「もちろん、家中ぴかぴかにすることが得意な人、それに向かって頑張っている人は素晴らしいと思います。でも、それができないからといって、自分を責めないでほしいんです」
子育て中の母親たちに向けた講演も行なっているという藤原さん。そこで伝えているのは、「これまでの “きれいに掃除できていた自分” はいったん捨てて。ゴミの誤飲など、子どもの命に関わることだけ気をつければ大丈夫」ということだそうです。
藤原さん:
「これは私自身の体験にもとづいているんです。私は昔、住宅メーカーに勤めていて、完璧に掃除されたモデルルームにお客様をご案内することもよくありました。
結婚して家を購入してからしばらくは、そんなモデルルームを目指していたんです。でも、その後、子どもが生まれて育児をする中で、それは無理だと悟りました。子どもは、とにかく汚す生き物ですからね。
そんな子どもにイライラするのは、精神衛生上よくないと思って。今の私にとって大事なのは、きれいな家より家族。家のすみずみまで掃除するのは、子どもたちが巣立った後の楽しみにとっておきます(笑)。
目標とするきれいは、ライフスタイルや体力、季節などにあわせて、臨機応変に変えていけばいいと思うんです」
自分と家族にとっての心地よさを基準に、優先順位を決める。
掃除の正解はひとつではないと話す藤原さん。そのときの自分や家族にとっての心地よさを基準に、何を優先すべきかを考えれば、「掃除ができていない」と自己嫌悪に陥る回数も減りそうです。
年末の大掃除についても、頑張りすぎなくていいと藤原さんはいいます。
藤原さん:
「本来、掃除は家族の生活の質を上げるもの。それなのに、寒くて疲れもたまっている年末に『大掃除をしなくては』と頑張り過ぎて寝込んでしまったら、本末転倒ですよね」
掃除はあくまで、体調や生活にあわせて。では、フィジカル掃除とメンタル掃除を意識して、今の時期から年末にかけて取りかかるべきおすすめの場所とは? 第2話以降にて、簡単な掃除術も含めて教えてもらいます。
【撮影】鍵岡龍門
もくじ
藤原千秋
住まいや家事のライター&アドバイザー。大手住宅メーカー営業職を経て主に住まい・暮らしまわりの記事を専門に執筆し18年目。現在はライティングの傍ら関連の企画広告商品開発アドバイザリー等多様な業務に携わっている。プライベートでは三児の母。著書に『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など。
ライター 嶌陽子
編集者、ライター。大学卒業後、フリーランスでの映像翻訳や国際NGO職員を経た後、2007年から出版社での編集業務に携わる。2013年からフリーランスで活動を始め、現在は暮らしまわりの記事や人物インタビューなどを手がける。執筆媒体は『クロワッサン』(マガジンハウス)、『天然生活』(地球丸)など。プライベートでは1児の母として奮闘中。
▼藤原さんの著書はこちらから
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