【自信をつける掃除術】第3話:達成感につながる「メンタル掃除」は玄関と窓まわりがおすすめ
ライター 嶌陽子
ストレスなく、前向きな気持ちで続けられる掃除について、家事ライター・アドバイザーの藤原千秋(ふじわら ちあき)さんにお話を伺う今回の特集。
第1話で教えていただいたのは、健康に影響を及ぼす部分をきれいにする「フィジカル掃除」ができていれば十分ということ。それ以上の窓ガラスの曇りをとるといったことは、自分の気持ちを満足させる「メンタル掃除」だとする考え方が新鮮でした。
第3話では、この時期におすすめの「メンタル掃除」を2つ厳選してもらいました。
どちらも達成感が高い場所。年末、家中を大掃除する余裕がないという人は、ひとつでもやると「できた!」という自信がついて、気持ちが前向きになるかもしれません。
新年を気持ちよく迎えたい!
達成感につながる「メンタル掃除」編
靴箱はエタノール1本でかんたん除菌。
藤原さん:
「年末年始は、来客がふだんより多いというお宅も多いでしょう。家に入って最初に目につくのが玄関。ここをきれいにしておくと家全体も清潔に見えて、お客様はもちろん、自分自身も満足度が高いんです」
玄関のたたきを掃除する前に、まず靴箱の中をきれいに。入っている靴や傘などを一度全部たたきに出します。この機会に、履いていない靴も処分してしまいましょう。
使い古しの布やタオルなどにスプレー式消毒用エタノールをふきつけ、棚の中を拭きます。靴箱の臭いのもとになっている、カビの胞子や細菌をしっかり取り除いて。
藤原さん:
「水拭きだけだと、カビや細菌を増やしかねないので、消毒用エタノールを使ってくださいね」
スタッフ 二本柳:
「消毒用エタノールで拭くと、すごくすっきりします。『除菌している!』という気分も高まって気持ちいいですね!」
藤原さん:
「水とちがって揮発性があるので、すぐに乾くのも利点なんです」
靴箱の中がきれいになったら、脱臭剤を置き、靴を元に戻します。
▲できれば靴の下に新聞紙や使用済みコピー用紙などを敷いておくと、湿気を吸い取ってくれる。
脱臭剤は、においが集中する下の段、もしくはよく履く靴を入れる段に置いて。反対に、香りを広げたい芳香剤は、上の段に置きましょう。
最後にたたきの埃や砂などを、ほうきか掃除機で取り除きます。仕上げに、使い古しの布で 靴箱の扉→玄関ドアの外側→玄関ドアの内側→たたき の順に水拭きすれば完了です。
台風が多かったこの一年、窓の汚れをとってすっきり。
最後に、藤原さんが教えてくれたのが窓まわりの掃除。
藤原さん:
「今年は台風が特に多かったので、窓や網戸が、例年以上に汚れていると思います。ここをきれいにすると、かなり気持ちいいですよ。
年末だとだいぶ寒くなってしまうかもしれないので、早めの時期にすませてしまうのもおすすめです。」
藤原さんによれば、窓掃除に最適なのは、適度な湿度がある曇りの日。晴れていると水拭きの跡が残りやすく、仕上がりが汚くなってしまうからだそうです。
窓や網戸を掃除する前にやっておきたいのが、カーテンをはずすこと。
藤原さん:
「カーテンは、上の部分に埃がたまりがち。下の部分は結露によってカビが生えていることもあります。この機会にチェックしてみてください。
窓を掃除している間、カーテンはフックを取り外して洗濯機で洗濯してしまいましょう。脱水が終わったら再びカーテンレールに吊るしておけば、自然と乾きます」
網戸は「メラミンスポンジと水」で面白いくらい汚れが落ちる。
窓まわりの掃除は、メラミンスポンジやマイクロファイバークロスを中心に、ドラッグストアで簡単に手に入るグッズが大活躍。フル活用してさっと掃除をすませましょう。
藤原さん:
「窓まわりの掃除は、窓の内側→網戸の外側→網戸の内側→窓の外側 の順番で行なうと、効率よく汚れを落とせます」
まずは窓から。メラミンスポンジに水をつけ、一定方向に拭いていきます。その後、スクイージーで水気をとり、乾いたマイクロファイバークロスで仕上げ。同じクロスで窓のまわりのサッシも拭いてしまいます。
手垢など、水だけでは落としにくい汚れがついている場合は、市販のガラスクリーナーを使いましょう。窓にクリーナーを吹きつけ、マイクロファイバークロスで拭きとります。
網戸の掃除には、メラミンスポンジが大活躍。水につけて拭くだけで、面白いくらいに汚れが取れます。
▲メラミンのカスがこぼれ落ちることもあるので、下に新聞紙などを敷くのがおすすめ。
スタッフ 二本柳:
「すごい!力を入れて拭かなくても、汚れが驚くほど取れます」
藤原さん:
「排気ガスが多い通りに面していて汚れがひどい場合は、セスキ炭酸ソーダを水にとかしたものをつけて拭くといいですよ」
最後、余裕があれば、サッシのレール部分の汚れもとりましょう。
歯間ブラシはレールの細い溝に入った埃をとるのに便利。
藤原さん:
「仕上げにサッシをカーワックスシートで拭くとピカピカになるし、撥水性もあるので汚れも付きにくくなります」
掃除は手段であって、目的ではないんです。
今回、藤原さんと一緒に、あらためて“掃除”というものに向き合ってみた二本柳。その表情は、明るくなっていました。
スタッフ 二本柳:
「藤原さんにお話を伺って、すごく安心しました。ずっと掃除に対して後ろめたさがあったんですが、『“きれい風”は及第点』と言ってもらえて、救われた気がします。
掃除を、健康に影響する部分をきれいにする “フィジカル掃除” 気分がよくなるための “メンタル掃除” に区別するというのは、新しい視点でした」
藤原さん:
「どこまでがフィジカルで、どこからがメンタルか。それを意識するだけで掃除に対する気持ちが変わると思います。
たとえば私は、メンタル掃除だと思うものについては、家族に要求しなくなりました。理想像にこだわって家族をコントロールしようとすると、関係がギスギスしてしまいますよね」
スタッフ 二本柳:
「それ、分かるような気がします。我が家でも時々、片付けない夫に私がイライラしてしまうことが……」
藤原さん:
「もしも、自分の『理想のきれい』を強く持っているなら、その状態を写真に撮って家族に見せてみるのもおすすめです。ただ『きれいにして』と訴えても、きれいの基準は人それぞれ。具体的に伝えないと、相手は分からないですから。
ただ、忘れないでほしいのは、掃除にかけられる時間や労力は、人生のフェーズによって異なるということ。今の自分の状況を見つめて、『こうありたい』のゴールは変えていいんです」
「私自身、夫と3人の子どもといかに気持ちよく、かつ機嫌よく暮らすか、日々試行錯誤中なんです」と笑う藤原さん。
自分も家族も、心地よく、のびのびと暮らすのが何より大切なこと。掃除はそのための手段であって、目的ではないのだと、藤原さんの話を聞いてあらためて気づかされた気がしました。
背伸びせず、まわりと比較せず、自分自身の優先順位を考える。これからは、そんな風に掃除と付き合っていけたらと思います。
【撮影】鍵岡龍門
もくじ
藤原千秋
住まいや家事のライター&アドバイザー。大手住宅メーカー営業職を経て主に住まい・暮らしまわりの記事を専門に執筆し18年目。現在はライティングの傍ら関連の企画広告商品開発アドバイザリー等多様な業務に携わっている。プライベートでは三児の母。著書に『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など。
ライター 嶌陽子
編集者、ライター。大学卒業後、フリーランスでの映像翻訳や国際NGO職員を経た後、2007年から出版社での編集業務に携わる。2013年からフリーランスで活動を始め、現在は暮らしまわりの記事や人物インタビューなどを手がける。執筆媒体は『クロワッサン』(マガジンハウス)、『天然生活』(地球丸)など。プライベートでは1児の母として奮闘中。
▼藤原さんの著書はこちらから
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