【あのひとの子育て】〈後編〉子育ても”暮らし”。遠回りしながらゆっくり歩んでいきたい(マスミツケンタロウさん・セトキョウコさん)

ライター 片田理恵

山梨県北杜(ほくと)市に居を構えて3年。造形作家・マスミツケンタロウさんと料理家・セトキョウコさん、そしてひとり息子で小学1年生の和玖(わく)くんの3人は、【On the river】と名付けた自宅兼アトリエで暮らしています。

前編では父・マスミツさんが作った和玖くんのランドセルのこと、やりたいことは自分の力でやってみるという子育てへの考え方についてお話を伺いました。

続く後編では、代わって母・セトさんにインタビュー。「まったく違う夫婦なので」と話していたおふたりですが、よくよく聞いてみると、言葉は違えど同じ思いを抱いているようですよ。

前編はこちら

 

何かあったかなと思う日は、遠回りして帰ります

短い冬の陽が傾き始める頃、スクールバスで学校から帰宅する和玖くんを迎えに、セトさんはバス通りまで出かけていきます。「ただいま」。「おかえり」。並んで歩きながら話すこの時間が、ふたりにとっての大切なひととき。

話す内容は学校のこと、友達のこと、それをどんなふうに感じたり考えたりしたかということ。そしてお母さんにだけは言える、イヤだったことや悔しかったことも。

セトさん:
「悩みは私に言いますね。だからうかない顔をしていたり、いつもと様子が違うなってときは、和玖が話しやすい環境を作るようにしています。多いのは車の中。学童や公文に迎えに行って、家まで帰る途中の道すがらにポロッと話してくれることがあります。

車の中って、向かい合わないじゃないですか。ふたりとも進行方向を向いているせいか、構えすぎずに話せる気がするんです。今日は気持ちいい山の道を通っていこうか、なんて言って少し遠回りしてドライブしているうちに、言いにくいことも言えるみたい」

セトさん:
「和玖は自分の気持ちを言葉にしようとする子。ちゃんと言葉で理解したいし、納得したいんだと思います。だから私もできる限り、とことんまで話しあうようにしていますね。話し始めて気づいたら2時間経っていて、ふたりで『そういえばお腹空いたよね〜』と顔を見合わせることもあるくらい。

夕飯も、お風呂も、宿題も、明日の支度も、早く寝ることも、もちろん全部大事なんですけど、納得がいくまでじっくりと話をすることも大事だと考えています。和玖にとっても、私にとっても。

後々のことを考えると、話したい瞬間を逃さないということが一番大切だし、考えながら自分の気持ちを言葉にのせていこうとする和玖を見ているのはとても興味深いんです」

 

作ることは楽しい、それを喜んでもらえるとうれしい

何かを作ることが大好きな和玖くんにとって、家に帰ってから眠りにつくまでが遊びの時間。石や枝を拾ったり絵を描いたりと大忙しです。自分の創意工夫で誰かを喜ばせることができたら、もう最高!なのだそう。

この秋には北杜市内で開催された「津金こどもマーケット」にも、初めて参加しました。子どもたちが自分の作品を販売できるイベントで、和玖くんはいろいろな形と色をした革のパーツにローマ字で名前を入れる「キーホルダー屋さん」と、手のひらサイズの木材に屋号や好きな言葉を入れる「看板屋さん」で出店。

セトさん:
「火や刃物を使うなど、危険を伴うこと以外は大人が手出し口出しをしないというのがマーケットの約束で、そこに共感して参加しました。商品を作って売るだけじゃなくて、お金の管理もお店のレイアウトもすべて自分でやるんです。出店資格があるのは小学校1年生~6年生の子どもだけ。事前に自分が何屋さんになりたいかということを子どもが自分で考えて応募します。

和玖は看板屋さんをやりたいと言ったんですが、頼まれたらその場で作るということ以外、具体的なイメージがなかなか出てこない。だから『お店を持っていない人に看板は必要ないかもしれないけれど、そんな人でも欲しいような看板ってなんだと思う?』と聞いたりして。

そこから名前入りのキーホルダーや、写真たてのアイディアが出てきたんです。とはいえ前日の夜まで、一個も売れなかったらどうしよう、とこちらもハラハラしながら見ていました。

当日はキーホルダーと看板を100円で販売したんですが、用意した商品を40個も買ってもらうことができて、和玖は大喜び。自分のプランを形にすること、それを受け入れてもらえたことで自信もついたみたいです。ただ、帰りにどこかで1000円札を1枚落としてしまって。でもそれも含めて勉強だねと話しました」

▲言葉もイラストも、すべて和玖くんが自分で考えた手作りカルタ

作り出すことへの意欲と集中力には、母であるセトさんも驚かされることがしばしばだそう。ちょうど1年前、和玖くんが年長さんの冬に作ったという「カルタ」を見せてもらいました。

セトさん:
「毎晩、物も言わずに夢中で作っていました。話しかけても聞こえないんです。そこまで入り込んでやっている特別な体験なんだからと、その時は『もう寝る時間だよ』という言葉はのみこんで、やりたいだけやらせました。

和玖は、大人っておもしろそうってよく言うんです。夫や私だけじゃなくて、うちに遊びに来てくれるいろんな職業の人たちのこともよく見ていて『仕事って楽しいんだね。僕は何をしようかな』って」

 

入学前に考えた「親ができること」と「学校で学ぶこと」

やりたいことを実現できる大人になるために、どこで、どうやって学んでいけばいいのだろう。親はそれをどんなふうにサポートしていけばいいのだろう。和玖くんが小学校に入学するにあたって、セトさんも一度立ち止まって考えたといいます。

セトさん:
「今、和玖は地元にある公立の小学校に通っています。入学前に私が考えたのは、家で得られるものってなんだろう、学校でしか得られないものってなんだろうということ。

芸術に特化した学校には独自の魅力がありますが、何かものを作ったり、自然とともに過ごしたりということは、私たちの今の暮らしの中からも感じとれるんじゃないか、って。それなら学校では、多様な生き方や考え方があることを知ってほしいと思いました。それが、和玖がこれから自分を見つけていく助けになると考えたから。

『津金こどもマーケット』での体験もそうですけど、どんどん和玖の好きや興味が高まってきているので、中学校に上がる時はまた改めて、どこでどんなふうに学んでいきたいかを考えると思います。その頃には本人の意思もさらにしっかりしているだろうから、いつものように納得するまで話しあいながら、一緒に考えたいですね」

 

背中を見せるお父さん、隣で見守るお母さん

子育ては「暮らし」です。気にも留めないほどの小さな迷いや、決定や、後悔や、喜びを繰り返す日常そのものです。でもそれが、子どもの心と体と未来を支えている。正反対だとおっしゃっていたマスミツさんとセトさん、おふたりがそれぞれの言葉で語ってくださったこと、それはどちらも「和玖くんが自分の道を進んでいくための親としての関わり方」でした。

自らが率先して行動し、背中を見せるお父さん。息子の気持ちに寄り添い、隣で見守るお母さん。その両方があるからこそ、和玖くんは安心して、大人になるのを楽しみに一日一日を暮らしているのだと思います。

川のそばに建つ、居心地のいい、あの家で。

(おわり)

【写真】神ノ川智早

 

マスミツケンタロウ&セトキョウコ

夫・マスミツケンタロウは、革・金属・木・紙・廃材などの素材を用いて使う家具や暮らしまわりの道具を作る造形作家。全国各地で展示・ワークショップなどを開催している。

妻・セトキョウコは八ヶ岳で穫れた旬の野菜や果物を生かして、ケータリングや雑誌・書籍へのレシピ提供などを行う料理家。ストックフードブランド【菜と果】主宰。

ライター 片田理恵

編集者、ライター。大学卒業後、出版社勤務と出産と移住を経てフリー。執筆媒体は「nice things」「ナチュママ」「はるまち」「DOTPLACE」「あてら」など。クラシコムではリトルプレス「オトナのおしゃべりノオト」も担当。

 


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