【アドリブするには】後編:予定外のことに、焦らず上手に対応するポイント

編集スタッフ 奥村

臨機応変に動くのが苦手で、準備してきたことについ執着しがちだったわたし奥村。

本番で柔軟に対応できる「アドリブ」の秘けつが知りたいと、ラジオ番組でパーソナリティとして活躍する、フリーアナウンサーの住吉美紀(すみよし みき)さんにインタビューをお願いしました。

前編では、住吉さんがアドリブをどう捉えているか、出来るようになるまでどんな経験をしてきたのかについて聞きました。後編では、今の仕事でどうアドリブしているのか、具体的なお話を伺います。

 

自信がないから、流れに身を任せています

平日朝に、TOKYO FMの生放送のラジオ「Blue Ocean」を担当している住吉さん。2時間の番組は、基本的に事前リハーサルなしの一発勝負だといいます。

特に視聴者からのお便りは、本番当日に届くもの。それをその場で選び、絶妙な合いの手を入れながら紹介していく住吉さんのトークは、まさにアドリブのたまもの。それがどうやって生み出されるのか、ずっと気になっていました。

住吉さん:
「リスナーさんからのお便りが、いつも本当に面白いんです。世の中にこんな体験をした人がいるの!?こんな面白いエピソードがあるなんて!って思うことばかり。

だからわたしはそのお便りに驚いたり、読んで思いついたことを話したり、ただ素直に向き合っているだけなんですよ。

この仕事をしていると、何歳になっても自分の頭で考えられる面白さには限界があるんだなって思うんです。リスナーやゲストの方から聞く話は、いつだって予想を超えてくるから」

住吉さん:
「わたしは自分にものすごく自信があるわけではなくて、自分ひとりでゼロから面白いものを生み出すことはできないと思っています。

だから、周りで起きている面白いことをどう活かして、盛り上げて、シェアするかが、わたしにできること。

アドリブの秘けつがあるとしたら、場の流れに身を任せることでしょうか。いつもアンテナを張って、この瞬間に起きたことに敏感に反応できるスタンスを、大事にしている気がします」

 

準備は大事。でも、決めすぎないことも大事

住吉さん:
「もちろんその場任せとはいっても、事前に準備をしないわけではありません。本番の前の流れの確認や、伝える情報に間違いがないかのチェックは欠かさずしています。

でも、準備をしつつ大事にするようになったのが、『準備しすぎない』ことかもしれません」

住吉さん:
「たとえばラジオでゲストを迎えてトークするときは、聞きたい質問を考えたり、その方が出演する番組などの確認はしておきますが、トーク全体の流れは決めこまないようにしています。

実際に初対面でお会いしたときの印象や、その日のコンディションとか、生ならではの空気を生かした自然なやりとりを届けたいと思っているからです。

イベントやパーティの司会をすることも多いのですが、この時間にここまで進行させる、といった段取りや会全体の流れはきっちり頭に入れておきつつ、話すセリフを一言一句決めておくようなことはしません。

本番で会場の雰囲気を見て、お客さまが緊張していそうならアイスブレイクを挟むとか、盛り上がっていそうなら合いの手を入れるとか。当日の雰囲気をよくするために、その場の空気を見て言葉を選んでいます。

本番に合うアドリブをするために、どこまで準備しておくことが適切かの塩梅は、すごく意識するようになりました」

 

準備したという安心があるから、アドリブができる

住吉さん:
「そうはいっても、アドリブってやっぱり準備なしにはできないことだと思います。地道に積み上げてきたことは、本番に向かうときの安心材料になると思うから。

私にとっては、アナウンサーやパーソナリティの経験で身についてきた言葉選びや放送の最低限のルール、タイムキープなどがその部分です。もしもそれがなかったら、そもそも話すこと自体に意識が行き過ぎてしまって、本番でアドリブする心の余裕なんて生まれてこないかもしれません」

住吉さん:
「たとえばプレゼンの内容を丸暗記することでも、質問をたくさん考えておくことでもいいと思います。

自分の中に『これで大丈夫』と思える安心材料が作れたら、少しの余裕が生まれて、プラスアルファの工夫に意識が向けられるようになるんじゃないでしょうか。

これまでの経験や準備を味方にしながら、『それでも、予定通りには進まない』っていつも心のどこかで思っていられたら、本番に臨む気持ちも少し楽になるかもしれないですね」

 

大切なのは「自信を捨てる」ことなのかも

ラジオやテレビという華やかな現場で、アドリブを軽やかにこなす憧れの存在でもあった住吉さん。

それは決して生まれ持った才能のもと生み出されるものではなく、わたしと同じ、地道な準備と積み重ねの先にあったことを知りました。

だとしたら、本番でアドリブに転化させられる住吉さんと、わたしの違いはなんだろう? もしかしたら、最後に力を入れるか抜くか、ということなのかもしれません。

たとえ準備を重ねても、本番では、現場の流れに身を任せると話していた住吉さん。対してわたしは、積み上げてきたものをどう発揮するかにとらわれて、いつも力を入れ過ぎていました。

自信がなければできないと思っていたアドリブ。一方で大切なのは、自分の準備を全てと思わずに『自信を捨てる』ことなのかもしれません。

そう腑に落ちたとき、今までとは少し違うスタンスで、本番に臨んでいける気がしました。

(おわり)

【写真】神ノ川智早

【撮影協力】甘味 おかめ 麹町店


もくじ

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住吉 美紀

1996年にアナウンサーとしてNHKへ入局。「第58回NHK紅白歌合戦」(2007)では総合司会を務め、「プロフェッショナル 仕事の流儀」など数々の人気番組を担当する。2011年よりフリーに。現在はTOKYO FM「Blue Ocean」(月〜金 9:00〜11:00)にてパーソナリティを務める。著書に『自分へのごほうび』(幻冬舎)。Instagaram(@miki.sumiyoshi)も更新中。


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