【アドリブするには】前編:軽やかに本番と向き合うコツを、アナウンサー・住吉美紀さんに聞きました

編集スタッフ 奥村

「臨機応変に」と、社会人になってからよく言われるようになりました。

その場に応じて柔軟に動ける、スマートな大人には憧れます。けれどわたし奥村は、この言葉につい身を固くしてしまうタイプ。

取材の前には質問リストがないと落ち着けないし、プレゼンテーションの時には一言一句をメモした台本が欲しくなる。

いつだって動き方を決めておかないと、不安で本番に臨めない自分を、窮屈に感じていました。

 

軽やかに、アドリブする秘けつが知りたい

そんなわたしが、社会人になってから毎朝のように聴いてきたのが、あるラジオ番組でした。

パーソナリティを務めるのは、フリーアナウンサーの住吉美紀(すみよし みき)さん。明るい彼女の声は、今日も頑張ろう、と仕事に向かう背中をそっと押してくれていました。

生放送の本番は一度きり。きっとたくさんのアドリブが必要なはずです。それでも緊張感を感じさせず、軽やかに本番と向き合える彼女にはどんな秘けつがあるのでしょうか。

今回は念願のインタビューが実現して、お話を伺いに行きました。

 

準備しすぎると、本番が面白くなくなってしまう

住吉さん:
「昔から、生放送に携わる機会は多かったですね。収録も好きだけど、生放送の現場は個人的にすごく好き。1度きりだと思うと、ワクワクするんです」

大学を卒業後、NHKのアナウンサーを経て、現在はフリーランスとしてさまざまな分野で活躍されている住吉さん。TOKYO FMのラジオ番組「Blue Ocean」のパーソナリティとして、月曜から金曜まで、毎朝生放送の番組を届けています。

やり直しがきかない一発勝負の現場ほど、わたしなら緊張してしまいがち。なぜそんな風に軽やかでいられるのかを尋ねたら、答えは意外なものでした。

住吉さん:
「どんなに準備しても、予定通りにいくことなんてないって思っているからじゃないでしょうか。

わたしも昔は、本番前に準備しておかないと不安なタイプでした。インタビューの前にはしっかり下調べして、聞く質問を考えて……と段取りを決めていましたね。

でも、NHKのアナウンサー時代に、『プロフェッショナル 仕事の流儀』という番組を担当していたときのこと。

出演者は、各業界で活躍する一流の方ばかり。最初は失礼のないようにしなきゃと、相手のことを徹底的に調べてからインタビューに臨もうとしていましたが、調べすぎると自分の好奇心がある程度満たされてしまって、『聞きたい!』という気持ちの勢いが減ることに気づいて。

『◯◯さんはこんな方なんですよね』『はい、そうです』と、なんだか事実確認をしているようなインタビューでは、面白くない。

知りすぎていると、心の底から知りたい!というオーラが出ないし、何も知らない視聴者の気持ちに寄り添うインタビューも届けられなくなってしまうんだって、すごく学びになりました」

住吉さん:
「仕事だけじゃなく、プライベートでもそうかもしれません。

たとえば旅行。若い頃は旅程をきっちり立てて行かなきゃ不安だったのですが、いくら完璧に計画しても、結局その通りにいくことなんてないんですよね。行きたかった美術館が予定外のお休みだったとか、乗ろうと思ってたバスを1本乗り過ごしちゃったとか、ハプニングはつきもので。

どんなに完璧に準備しても予定通りにはいかない。そう感じる経験が増えるにつれて、だんだん自分の思い通りに事は進まないと、受け入れられるようになったのかもしれません」

 

ハプニングに、かえって救われることもあるんです

住吉さん:
「でも同時に、そんな予想外があるから、面白くなることもあるって気づいたんです。

たとえば旅行なら、思いがけないハプニングがあった方がかえって記憶に残る旅になりますよね。

インタビューだってそう。どんなに質問を考えていっても、実際にお会いした相手の印象が予想外なことはよくあって、そこから話が広がることも多いです。

今日の生放送でも、ゲストで来てくださった方は、わたしが想像していた以上に気さくなお人柄で。

だから、最初は予定していなかったプライベートのお話までじっくり聞くことができました」

住吉さん:
「いま担当しているラジオ番組は、今年で8年目。自分の人生の中で、一番長く担当している仕事になりました。

それでも、毎日飽きずに楽しい!と思えているのは、そんな予想外が日々起こっているからなんだと思います」

 

自分の計画なんて、予想外の面白さにはかなわないから

住吉さん:
「生放送の現場は、それこそ予想外しか起こりません。リスナーさんからのお便りだって、どんなメッセージが届くのか、当日その時になるまでわからない。

だからこそ予想もできなかったエピソードが寄せられて、番組が予想外に面白くなっていく。その面白さって、編集しても作れない『生』ならではの醍醐味なんだと思うんです。

わたしがどれだけ完璧に段取りを計画しても、その面白さにはかなわない。だったらそれに固執しないで、捨てちゃえばいいんだって思うようになりました」

20年以上、アナウンサーとして活躍されてきた住吉さん。お話を伺うまでは、ベテランだからこそ、長年の自分のやり方を大切にされているのだと思っていました。

けれどお会いした実際の彼女は、芯がありつつもすごくしなやか。わたしが執着しがちだった「思い通りにすすめたい気持ち」すら本番で手放せる潔さこそ、ラジオを聴きながら感じていた、軽やかさの理由だったのかもしれないと感じました。

後編では、そんな住吉さんが今の仕事でどうアドリブされているのか、具体的なお話を伺っていきます。

(つづく)

【写真】神ノ川智早

【撮影協力】甘味 おかめ 麹町店


もくじ

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住吉 美紀

1996年にアナウンサーとしてNHKへ入局。「第58回NHK紅白歌合戦」(2007)では総合司会を務め、「プロフェッショナル 仕事の流儀」など数々の人気番組を担当する。2011年よりフリーに。現在はTOKYO FM「Blue Ocean」(月〜金 9:00〜11:00)にてパーソナリティを務める。著書に『自分へのごほうび』(幻冬舎)。Instagaram(@miki.sumiyoshi)も更新中。


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