【お坊さんのお悩み相談室】第17回:長年の悪い癖をなおすのってどうしたらいいのでしょうか……
編集スタッフ 松浦
家事や子育て、日々の仕事。私たちのくらしには、小さなことから大きなことまで「悩み」がつきものです。
「お坊さんに聞く、くらしの悩み相談室」は、仕事や子育てなど、日々のモヤモヤを、お坊さんに答えていただく連載。 クラシコムのオフィスに「くらしのお悩み箱」なるものを設置し、スタッフのくらしの悩みを集めました。
お答えいただくのは、著書『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)なども人気の、浅草・湯島山緑泉寺 僧侶の青江覚峰さん。青江さん自身も、3児の父として、子育てにも奮闘中ということもあり、お坊さん目線、そしてひとりの親目線でお話ししていただきます。
長年の癖をなおすのってどうしたらいいのでしょうか。というのも、どんぶり勘定の癖がなかなか抜けません。最近、家計簿をつけ始めましたが、それもはじめの一ヶ月で終わってしまいました。癖ってなおるのでしょうか?(スタッフA)
癖。「なくて七癖」と言われるくらいですから、どんな人にも少なからず癖というものがあるわけです。ひと言で癖と言っても、手癖、足癖、口癖と内容は様々です。かく言うわたしにもいくつかの癖があります。思いつくところを挙げると……
・電話をしながらうろうろ歩き回る
・「さようなら」を言って背中を向けた人に向かってまた話しかける(「お気をつけて、雨が上がってよかったですね」など)
こんなことをよく家族に指摘されます。
さて、こういった癖も、それが自分に、もしくは周りの人や広く社会にとって都合のいいものであれば癖などと言われることはありません。
例えば、「毎日早起きして掃除をする」のが癖ならば、「それは良い心がけですね」と褒められることでしょう。「部屋を片付けずに、ものを置きっぱなしにする」のが癖ならば、周りにいい顔はされないものです。
お話しを伺う限り、癖というよりも習慣の問題のように思われます。長い間かけて身につけた、ついてしまった習慣が社会と適合しないための不都合、といったところなのではないかと見受けられるのです。
お釈迦さまの弟子で周梨槃特(しゅりはんどく)という人がいました。この方にはお兄さんがあり、先に弟子になった兄が非常に聡明だったのに比べ、周梨槃特は何ヶ月経ってもお釈迦様の教えを覚えることができませんでした。そして、「もういいです。自分には向いてないです。自分は兄のようにものを覚えるということに向いていないのです」と言い残してお釈迦様のもとを去ろうとしました。
そんな彼にお釈迦様は「『塵を除け、垢を除け』と言いながら掃除だけをしなさい」と言いました。彼は言いつけどおり毎日掃除を続けました。毎日毎日、掃除だけを繰り返したのです。そうしながら、あるとき「毎日掃除をしてもいつの間にかホコリが溜まる。自分の頭もいくら掃除をしても欲や怒りというホコリが溜まっていく。同じことだ」と悟りを得たそうです。
周梨槃特には人から褒められるような得意なことはなく、自分には誇れるようなことなど何もないという諦めが、愚直に掃除だけを続けるという行いに向かわせたのでしょう。
苦手なことに挑戦してみるのも素晴らしいですが、自分にできることに実直に取り組むという姿勢も立派なことです。どんぶり勘定も三日坊主も、それを「克服しなければならないもの」と決めつけてしまっては、質問者さんにとってストレスになってしまうのではないでしょうか。
今やっていることがうまくいかない=悪い癖、習慣だと罪悪感を感じる。そこにこだわっていては、前向きな気持になれません。自分の癖を駄目なものとして決めてかかるより、自分ができること、伸ばしていけそうなことに意識を向けてみてほしいと思います。
青江覚峰
僧侶 青江覚峰
浄土真宗東本願寺派 湯島山緑泉寺住職。米国カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。「暗闇ごはん」代表。超宗派の僧侶によるウェブサイト「彼岸寺」創設メンバー
▼これまでの連載はこちらから
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