【おしゃれな人】第1話: ミナ ペルホネン「call」ではたらく、82歳のおしゃれなスタッフ。

編集スタッフ 奥村

そのひとを見かけたのは、東京・青山にあるファッションブランド、minä perhonen(ミナ ペルホネン)の「call」というお店です。

グレイヘアをぱつんと切りそろえたチャーミングな髪型に、鮮やかなブルーのガウンを羽織り、下はカジュアルなデニム。背筋を伸ばして笑顔で売り場を行き来する様子に、素敵だなあと目を奪われました。

お名前は小畑滋子(おばた しげこ)さん。3年前に同店のオープニングスタッフとして働きはじめ、82歳の現在、雑貨や洋服の接客販売をしています。

今回はそんな小畑さんに、おしゃれのお話を聞きに行きました。

 

昔から洋服が大好き。79歳でショップスタッフに

▲水色のガウンはcallのユニフォームで、ミナ ペルホネンのもの

「お洋服が、大好きなんです。いつも、時間があるとうろうろとお買い物に行っちゃうの」。弾むような声で話し始めた小畑さん。昔から洋服は着るだけでなく、ご自身で作ることも好きだったといいます。

小畑さん:
「若い頃は、花嫁修行の一貫で洋裁学校に通っていました。その後、服飾の先生をしていたので、作りのいいお洋服に興味があって。素敵なデザインの服を見ると、ついつい手にとってしまうんですよ。

いまでも当時の同窓会がよくあって、おしゃれをしていくのが楽しいんです」

結婚後は主婦になり、趣味として洋裁を楽しんでいた小畑さん。旦那さんが亡くなった後、79歳で今のお仕事を始めたきっかけも、「服が好き」というシンプルな動機だったといいます。

 

「3年前にミナ ペルホネンの服を知って、着てみたいと思ったの」

小畑さん:
「雑誌のインタビューで皆川さん(ミナ ペルホネンのデザイナー)の記事を読んで、服作りに対する丁寧な姿勢に惹かれたんです。

この方の作ったお洋服なら、着てみたいわって。夫が亡くなって以来、時間もたくさんあったので、すぐにお店へ見に行きました。

手に取ったら、やっぱり思った通り素敵なお洋服でした。シンプルなのに品のあるデザインで、何より縫製がとても丁寧。

そんなある日、スタッフ募集の広告を見かけて。募集要項に、100歳でも大歓迎と書いてあったんです。わたしまだ100歳じゃないから、いけるわって。思い切って応募してみたんですよ」

 

いまも「Tシャツにジーンズ」が、わたしの定番です

小畑さん:
「お洋服の好みは、20代の頃からずっと変わらなくて、ベーシックなものが好きです。色も黒や白、グレー、ネイビーといった落ち着いたものばかり。パターンや柄のあるものは、実はあまり着ないんですよ。

そういえばはじめてミナ ペルホネンで買った洋服も、シンプルな白いTシャツでした。襟ぐりの開きがちょうどいいTシャツってなかなか出合えないので、着たときにワクワクしたのを覚えています」

小畑さん:
「ミナ ペルホネンの服は、一見華やかで個性的だと思われる方も多いのですが、じつはシンプルで飽きのこないデザインばかりなんです。そして何より、着心地がとてもいい。体のラインにフィットするよう、丁寧にパターンが引かれているお洋服だなと感じます。

そんな風に、シンプルで作りのいいものを身に付けたいというのは、ずっと変わらない部分かもしれません。お気に入りのジーンズやカットソー、靴も、数十年以上愛用しているものが多いんですよ」

 

シャネルからユニクロまで。ブランドにはこだわりません

小畑さん:
「昔、服飾の学校に通っていた頃は、今よりも服作りの技術が進んでいなかったから、あまり体にフィットしないデザインのお洋服が多かったんです。

だからシャネルやアルマーニといった海外ブランドのお洋服をほどいては、どんな型紙で作られているかを勉強していたこともありました。なるほど、ブランドのお洋服には、良いとされる確かな理由があるのね、とデザインや作りをみて納得したものです。

もちろん、ブランドだからという理由で選ぶわけではないんですよ。ユニクロにもよく行きますし、ジーンズやTシャツを買っています。ジーンズは履き込むほど良くなるし、Tシャツは使い回しやすくて便利なんです」

callで働きはじめて3年。いまはヴィンテージの売り場を担当し、訪れたお客さまにコーディネートのアドバイスをしたり、好きなお洋服の話をするのが何より楽しいという小畑さん。

専業主婦から、79歳でショップスタッフへ。82歳の小畑さんは、もしかしたら今、天職に就いていらっしゃるのかもしれないと、お店に立つ彼女の姿を拝見しながら感じました。

次回はそんな小畑さんが大切にしているおしゃれのテーマや、お気に入りのジーンズを取り入れたコーディネートを見せていただきます。

(つづく)

【写真】上原未嗣


もくじ

profile_futura_lineblack

小畑 滋子

東京・青山にあるminä perhonen(ミナ ペルホネン)のショップ「call(コール)」ショップスタッフ。現在は主にヴィンテージ売り場で、洋服や雑貨の販売、接客の仕事に携わる。

***

【call】
東京都港区南青山5-6-23(SPIRAL 5F)
TEL:03-6825-3733
営業:11:00〜20:00(カフェはL.O.19:30)
HP:http://www.mp-call.jp/
Instagram:@call.jp


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