【あると、うれしい】オーバーオールに、カットソー。40代の今こそ「買い物の失敗」も前のめり
よしいちひろ
「迷うなら買うな」「『まあまあ』のものは選ばない」「限定/貴重/安い/などに惑わされない」
貪欲帖という7年以上続いているお買い物ノートに都度書きつけてきた、自分への戒めメモ。
20年以上毎度真剣勝負でお買い物をしてきたわけだから、最近は選ぶ精度もずいぶん上がってきた。けど、まだまだ失敗はなくならない。
さらには、失敗したなーと思ったら、1年後、数年後、とつぜん大活躍。なんて、予想が予想を裏切ることさえおきる。
それにしても、この「失敗したと思ったらのちに大活躍するもの」たちってなんなんだろう。
ここに存在する共通点を見出すことできれば私、ちょっと買い物上手になれるんじゃなかろうか。
そんな期待を寄せながら、今日はそれぞれの経緯を振り返ってみようと思います。
01. ステラマッカートニーのオーバーオール。
アメリカから注文したこれが届いたのが2017年の冬のこと。試着した様子を見た夫に、フレディ・マーキュリーみたいだね「ウィ~アザチャ~ンピ~オ~ン」と歌われた。ストレッチデニムでスリムに作られたオーバーオールは、チビで短足な私の身体そのままにぴったりフィットしていた。ちょっとプロレスラーぽさがあった。
めげずに履き続けた翌年、季節は春。ふんわりしたブラウスと合わせるとにわかにしっくりきた。
季節が変わった。そしてデニムが伸びた。
動きやすさ抜群なのに、カジュアルになりすぎず、公園にキャンプに、今ではなくてはならない存在だ。
02. ベースランジのガーゼカットソー
ここの下着が好きなのだけど、ある年、そのついでにと試しに買ってみたカットソー。届いたものは、予想以上に薄手。素肌も透け、ガーゼの柔らかな生地はしっとり身体に沿うた。これをどう着れば……
そっと引き出しに仕舞った。
2年後の今年、肩紐タイプのワンピースブームが自分にやってきた。このカットソーがそれらにめちゃめちゃ合う。
透けて柔らかな生地は軽やかさがあり、名脇役とはこのことで、何かの下に重ねるには最高のアイテムであることをそこで知った。
03. Mirit Weinstockの枝をかたどったピアス
出産を控えた2014年の秋、オンラインショップの写真だけを手掛かりにこれを購入したのだけど、当時いまよりガーリーなものが好きだった自分には、実際届いたそれは「似合わない」と感じた。
そこから3年ほど経って、服もアクセサリーも、それそのものの見た目よりも、全身のバランスで楽しめることが大事に思えてきた。(以前はもっと洋服もアクセも雑貨的に見ていたのだと思う)
このピアスのその塩梅は最高で、さらに全身引いてみたときに発揮されるチャーミングさにぐっと来た。
身につけていて、ちひろさんぽいねと友人にも言われる。私もいまはそう思う。
「季節が変わったから」「生地が伸びて身体に馴染んできたから」「新たな着方を見つけて」「近視眼的な視点がなくなったから」
それぞれにそれぞれの理由があったけれど、アイテムそのものに明確な共通点はなく、期待した「成功の方程式」みたいなものは、残念ながら見つけられなかった。
けど、こうやって振り返ってみたら、まずなぜそれぞれに一度は「失敗した」と感じたかというと、それらが自分の想像を超えたものだったから。
だからこそ、想像しなかった装い方に偶然出会えた時の感動は大きく、決定的な存在となったのではないか。
失敗は成長のチャンス。
40歳にもなると、信頼できるブランドもいくつか見つけて、自分の短所を隠す方法もそこそこ心得、若いころよりは失敗しない洋服選びも出来る年齢になったと思う。
でもそんな今だからこそ、まだまだ積極的に失敗したい、感動に出会いたい。
たまには気を緩めたお買い物も……あっていいものなのかもしれないですね。
あると、うれしいもの。
✔︎買い物の失敗
よしいちひろ
イラストレーター。1979年生まれ。女性のなにげない日常や憧れを独自の視点とリラックスしたタッチでみずみずしく描く。ファッションやメイク、子育てなど、クリエイティビティに満ちたライフスタイルも注目を集めている。http://chihiroyoshii.com
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