【私の宝石箱】02 : 残ったものが、私の証
編集スタッフ 齋藤
誰もが持っていそうな洋服だとしても、ジュエリーを合わせるだけで、ふいにその人らしさがあふれだす。まるでおぼろげだった輪郭が、急に鮮明になるように。
それは例え、一目惚れで選んだものでも、誰かが選んでくれたものでも、等しく。
私はなんだか宝石箱の中には、持ち主の大切な人生が詰まっているような気がしてならないのです。
あなたの宝石箱には、何が入っていますか。
そんな質問を、当店スタッフにしてみました。母親でも会社員でもない素顔を、ちょっとだけ、見せてもらいたくて。
Episode 02:Buyer Konishi
なんだか、不思議な人。
小西に初めて出会ったときの、私の印象です。
ラインを拾わないふわりとした服装はペールトーンでまとめあげられ、一見すると強さなんてものからはほど遠く思える。
けれども、シンプルに女性的という形容詞で表そうとすると、少年のようなショートカットがその印象からするりと逃れて見せるのです。
ふわふわとやわらかそうな雰囲気だけれど、揺るがない芯がありそうな。また多くを語らないけれど、視線にどっしりとした何かを感じることもたびたび。
この人は儚さや移ろいを支える、確かななにかを作り上げてきた人なのではないか、私はそんなことを思ったのでした。
小西
整いすぎているものよりは、手仕事のゆらぎを感じさせるものが好きです。
ジュエリーだけではなく、カゴなども見るとついそそられますし、食器も釉薬のムラがあるものが好み。
「モンシロ」のアクセサリーからも、私好みのゆらぎを感じたのかもしれません。
デザイナーの方は山に籠もり自然からインスピレーションを受けて、花などをモチーフにしたアクセサリーを制作しています。有機的な形にそうように、金具も手作りなのだとか。
そんな細かなこだわりにも魅せられ、前職のときに仕事の関係で出会い、それ以来今でも好きなブランドです。
好きなものは、直感
作家ものの花のピアスは、思わず一目惚れで買ったもの。洋服とどう合わせるのかすら少しも考えずに購入してしまいました。
使う頻度は少ないですが、見ているだけでしあわせ。
「ソレイアード」というお店で買った南仏の布でできたピアスも、直感で。
私は元々アパレルのデザイナー。そのため布が今でも好きで、リバティなどの生地も見ているだけで満たされます。
直感で買いはするのですが、アクセサリーはたくさん持っているわけではなく、普段もゴールドの棒状のピアスばかりをつけています。
指輪も結婚指輪くらい。
こうした選択ができるようになったのは、アパレルのデザイナー時代があるからかもしれません。
自分はこれぐらいが丁度良い
アパレルのデザインをしていた20代の頃。
当時は勉強代と思って、食事を犠牲にするくらいアパレルを買っていたんです。でも結果として、捨てなければならないものもたくさんでてきてしまう。
そうした時期がすぎ、今はこれさえあれば満足できる、そう思えるものだけを持つようになりました。
今手元にあるのは、年月を経て残ったものです。だからもし手放さなければならなくなったら、私はとてもかなしい。
デザイナーからバイヤーになり、そして今では2児の母。肩書きも生活も想像ができないくらい変わりました。
けれども、残ったものがある。
それらは私がどういう人間か、わかった証だと思うのです。
Photo : Kazumasa Harada
Styling : Maki Taniyama
※本文中にブランド名がないものは、ブランド名が不明のアイテムです。
小西(こにし)
2児の母。最近はなかなか映画を観ることができず、頭の中で観たい映画リストを作成中。好きな映画はファンタジー系。衣装デザインを仕事にしたいと考えていたこともあり、映画の中のファッションに興味あり。「白雪姫と鏡の女王」の石岡瑛子(いしおかえいこ)さんが手掛けた衣装が好き。
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