【私の宝石箱】05 : あの人みたいになりたくて。憧れを辿った20代、そして今

編集スタッフ 齋藤

誰もが持っていそうな洋服だとしても、ジュエリーを合わせるだけで、ふいにその人らしさがあふれだす。まるでおぼろげだった輪郭が、急に鮮明になるように。

それは例え、一目惚れで選んだものでも、誰かが選んでくれたものでも、等しく。

私はなんだか宝石箱の中には、持ち主の大切な人生が詰まっているような気がしてならないのです。例えおもちゃの指輪であったとしても、何かが揺り動かされて選んだのであれば、その人にとっては何にも替えがたいもののはずだから。

あなたの宝石箱には、何が入っていますか。

そんな質問を、当店スタッフにしてみました。誰かが集めた物たちの愛しさに、ちょっとだけ、触れてみたくて。

 

Episode 04:Saiki

その場その場の気分で上手に人生を乗りこなして行く人もいれば、遠くの目標に向かって一歩一歩確実に進みたい人もいる。

当店のプライベートブランドチームに所属する斉木は、おそらく後者だろうと思います。

20代半ばで夢を諦めきれないと、ずっと憧れだったファッション誌の編集アシスタントに。中学生の頃は、テレビ番組の「プロフェッショナル 仕事の流儀」を観てなりたい仕事を探していたというエピソードは、とても彼女らしい気がして、微笑ましい気持ちになってしまいます。

憧れの人やものを追いかける中で、彼女が見つけた大切なもの、そして今の地点とは。

▲JUTIQU(ジュティク)

 

若さゆえの気負いから
強くなりたくて買った、ジュエリーたち

▲petite robe noire(プティローブノワー)

斉木:
「新卒で入社した会社はできたばかりのベンチャー企業で、私と同じ歳の子は一人もいませんでした。会社の中で自分が一番若かったから、 自分は何もできないと思い知らされる日々。だからずっと気負いがあり、強くなりたかったんです。

そんな時にpetite robe noire(プティローブノワー)のジュエリーと出会いました。これがあれば、自分が目指す女性像になれる気がして。

とはいえ、あまりにエッジが立ったものは自分には行き過ぎかもと思い、買えませんでした。

けれどもパールや丸い形のものと組み合わさっていれば自分にも馴染みがある気がして、そういうパーツがついたジュエリーばかりが手元にあります」

▲petite robe noire

▲petite robe noire

 

憧れの人になりたくて身に付けた
お守りジュエリー

▲左から順に:Melissa Joy Manning(メリッサジョイマニング)、Sweet Pea(スイート ピー)、:Hirotaka(ヒロタカ)


斉木:
「その会社を20代半ばで辞め、ずっと憧れていたファッション誌の編集者のアシスタントになりました。

転職をしてからというもの、予定変更なんて当たり前の毎日。日々何が起きてもおかしくないという状態でした。だから今度は強さと言っても、しなやかさな強さがすごくほしかったんです。

そんな時に出会ったのが、Hirotaka(ヒロタカ)のジュエリー。

当時、好きだったスタイリストさんがいました。ボーイッシュな服装や、カジュアルだけれど品のある佇まいがとにかく好きで。その方が身に付けていたブランドです。

アシスタントの半年目に初めて買い、お守りのようにつけていました。

女性らしいけれど芯がありそうな雰囲気が、あの時の自分を支えてくれていた気がします」

 

自分に似合うを受け入れて

▲IWCの時計

斉木:
「ずっと、30歳になったらヴィンテージの腕時計を買うと決めていたんです。これも、とある人に憧れを抱いていたから。

彼女は編集の先輩。いつも黙々と仕事をこなしているけど、周りのこともそっと気遣える人。そんな彼女が結婚指輪がわりだと言ってつけていたのが、カルティエのタンクという時計でした。

凛としたクラシックな佇まいに憧れて、私も30歳の記念に自分にタンクを贈りたい、と思ったんです。

けれどいざお金を貯めてお店に行ってみて試着をしたら、自分にはどうも似合わない。3、4年その目標に向かっていたから、とてもショックでした。

けれどそこでお店の人が紹介してくれたのが 、IWCの時計。

メンズの時計だけれど、そんなに大きくない手巻きの時計です。実際に着けてみたら、確かに自分にはこっちの方が似合っていたんです」

▲形見分けで受け継いだ、ダイヤのネックレス

斉木:
「例えばタンクを買ってから、これに似合う自分になろうと、昔の自分なら思っていたかもしれません。

けれどIWCの気のいいおじいちゃんみたいな丸いフェイスが、自分の心に寄り添ってくれている気がして。なんとも言えない親近感が湧いてきてしまったんです。

仕事ができるあの人みたいになりたい!と思い続けてるのに、結局自分は抜けているし、まわりに助けられてばかり。

それを昔は恥ずべき自分の弱さだと思ってきたけれど、でもまぁそれが自分だしな……と諦められるようになったのかもしれません。

ずっと憧れていたカルティエか自分に似合うIWCかと問われた時に、IWCを選んだ自分がいた。

この出来事が、今の私を知るきっかけだった気がします」

 

Photo : Kazumasa Harada
Styling : Maki Taniyama

 

斉木(さいき)

本・洋服・旅が三大栄養素。古い喫茶店で本を読むことと、洋服や、それにまつわる話を聞くことが好き。最近ハマっているのは、誰かの書いた日記を読むこと。メイ・サートンの「独り居の日記」や、高山なおみさんの「今日もいち日、ぶじ日記」を読んでいる。

 

もくじ

 


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