編集スタッフ　石川

「○○さんらしいね」という言葉をかけられるような人に、憧れます。「きっとこんな服が好きだろう」とか、「こんな雑貨をお部屋に飾っているはずだ」とか、人となりが透けて見えるような、モノ選びができる人というか。というのも私自身は、もう長いこと、「自分らしさ」の迷子でして。

無骨なデザインも好きだし、かと思えば、ちょっと気の抜けた、クスッと笑ってしまうようなイラストも好き。ボーイッシュなワークパンツをはいているかと思えば、翌日はロングのワンピースで現れる。そんな風に、モノ選びにてんで一貫性がない私。

部屋の隅の「積ん読」も、それを物語るかのよう。雑多なジャンルの本が常に積み上げられている、その一角を見るたびに（積み上げられているということは、今はまた違う本が気になっているということですね……）、私は結局のところ何が好きなのか、自分自身で困惑してしまうのでした。

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良く言えば、色々なモノをすぐに好きになれる好奇心旺盛な気質なのだろうと思うし、悪く言えば、「目移りしがちで、飽き性」な性格なのでしょう。

ただ、このコラムが公開される頃には、私はひとつ歳を重ね、20代の最終コーナーを曲がることに。

だからというわけではないですが、自分はこれまで、そういう瞬間のひらめきのような「好き」だけを積み重ねてきて、かえって自分の「好き」のど真ん中、のようなものが、すっぽりと抜け落ちてしまっているのではないかと、ふと感じるようになったのです。

そして、そこに妙なさみしさを感じて、居心地悪くもなっていたのでした。

そこで、ここ数ヶ月前にささやかに、あることを始めてみました。Instagramでぱっと見かけた「好き！」と感じたものを、保存機能を使って、スクラップブックのようにフォルダに保存していくというもの。あとから一覧でそれらを見られれば、自分の「好き」の正体を知れるのでは、という思いつきで。

……と言いつつ、フォルダ全体を見返すタイミングはなかなか訪れず。ついに先日、なにげなくそのフォルダを覗いたのですが、これが意外でした。自分で思っていたよりもずっと、そこに収められたモノたち（と言っても服ばかりですが……）は、同じようなものばかりで。

シンプルでシックだけど、細部のつくりにこだわりがあり、普段あまり見ないようなデザイン性がワンポイントであり……というような。それが私の「好き」のど真ん中、だったんです。

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そういえば最近、ふらっと立ち寄った古着屋さんで、コートを買ってしまいました。

一目見て猛烈に惹かれたそのコートもやっぱり、シルエットはごくシンプルだけれど、胸に大きなボタンがギュッとたくさんついている、少しレトロで変わったデザイン。

全くの衝動買いだったのですが、日々の「好き」集めのかいあって、「これは私の『好き』のど真ん中だ！」と胸を張って連れて帰れたから、いつものお買い物よりずっとうれしかったのでした。

思い返せば、私がついファンになってしまったような大好きな芸能人の方や著名な方たちも、よく考えてみれば、みんな同じような方々──太陽のように、周りをパッと明るく照らしてくれるような人たちばかりで。

それは、放っておくとひとりで黙々と過ごしてしまいがちな自分には無いものを持っているからだ、と思っていました。

モノ選びも、実は同じだったのかもしれません。幼く見えがちで、なのに他人と打ち解けるのにちょっぴり時間がかかる私は、大人っぽくも、ちょっとだけ「ツッコミどころ」があるようなモノを身につけたいのかも……と。

自分には無いものに強く心揺さぶられる気持ち、それが私にとっての「好き」なのかもしれない。自分にとっての「好き」の輪郭がおぼろげに見えてきたら、なんだか少しだけ目の前の霧が晴れたような気がします。

 

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