【私のためのおしゃれ】第1話:生成り色で気持ちをニュートラルに。体と心を観察して、今日の服を選ぶ
ライター 嶌陽子
いくつになっても、おしゃれは楽しいもの。一方で、時には悩ましいものでもあります。
流行や人の目を気にすることもあった昔と比べて、今はもっと「自分のための装い」に視線が向いているけれど、それでもなお「自分に合う服って何だろう?」「どうやって服を選べばいい?」と迷う日も。
心地よくて、なおかつ自分らしいと思える服を毎日まとえたら。そのためのヒントを、気負いなくおしゃれを楽しんでいる人に教えてもらいに行きました。
心と体の「うっとり」を大事にしています
訪ねたのは、クラリネット奏者であり、下着ブランド「ジュバンドーニ」代表でもある黒川紗恵子(くろかわ さえこ)さん。緑や花がいっぱいの住まいで私たちを迎えてくれました。
私が「ジュバンドーニ」の下着を知ったのは5年ほど前。ばつぐんの肌触りや締め付けのなさ、身に着けるのが楽しみになるデザインや色づかいにすっかり魅せられ、以来ずっと愛用しています。
7年前にこのブランドを立ち上げた黒川さん自身、とても気持ち良さそうな服をまとっていました。
▲「kitta」の草木染めのワンピースにオーガニックコットンのファーベストを羽織って。「ファーはぬいぐるみの素材を触っているような、うっとりする質感です」
黒川さん:
「おしゃれに関して、今も苦手意識がないわけではありません。これまでもずっと、服の組み合わせに迷ったりしてきました。
でも年を重ねるにつれて、質感がいいものや、ストレスなく着られるものが一番って思う気持ちが強くなってきて。
“気持ちいい” とか、 “この質感が好きでうっとりする” って自分が思えたら、おしゃれかどうか、人にどう思われるかはあまり気にならなくなってきました」
▲自身が代表を務める「ジュバンドーニ」のレギンスと、「玉木新雌」のソックス
黒川さん:
「私にとっての気持ち良さは、素材の質感以外にもいろいろあって。たとえば色も、目に優しい自然の染料を使ったものが最近は好きです。
締め付けがないかどうかも大事。ウエストにゴムが入っているパンツやスカートだと、私の場合お腹が締め付けられる感覚がするんですよね。だから紐で調節するタイプのものを選ぶことが多いです」
黒川さん:
「このワンピースも、本来は紐を腰のところで1周させて結ぶようになっているんですが、そうすると締め付けが気になってしまって。どうしたらいいかなと考えた末、紐を腰に回さず横で結んで、余った分はチェーンのように編んでアクセントにすることにしました。
体がラクでいられるためにはどうしたらいいか、服を選ぶ時や着るときは、いつもそのことを考えています。
アイロンをかける必要がある服も買いません。そういう意味でもラクなことが優先ですね」
ほしいと思える下着が1枚もなくて
芸術系大学の音楽科を卒業し、ジャンルレスのクラリネット奏者として活動してきた黒川さん。7年前に下着ブランドを立ち上げた理由は何だったのでしょう?
黒川さん:
「元々肌が弱くて、化繊の下着を着るとかゆくなったりしていました。特に昔は、化繊の下着が大半を占めていたんですよね。
今でも覚えているのが、大学生の時、下着を探しに行った際のこと。ワンフロア丸ごとの広い売り場には、当時流行していたサテン地のショーツと、ワイヤーやパッドが入ったブラジャーばかりで。自分がほしいと思うものが1枚もなかったんです。
私と同じように天然素材の下着を必要としている人はきっといるはず。誰も作ってくれる人がいなければ、いつか自分で作るしかないかも……ってその時に思いました」
黒川さん:
「大学卒業後、クラリネット奏者として活動を始めたんですが、周りに音楽の仕事をしながら同時に別の仕事もしている人たちがいて、とても楽しそうだったんですね。
私も音楽だけに絞らなくてもいいんだと気づいて、前から考えていた下着作りをしてみようと思ったんです」
まずは自分のために作ってみるところから開始。全く知識がない中で失敗も重ねつつ、一緒に取り組む仲間も見つけ、5年後に2016年に下着ブランド「ジュバンドーニ」をスタートしました。
▲「JUBAN DO ONI(ジュバンドーニ)」の下着。ブランド名は、日本人が着物を着ていた時代に着けていた、布をまとうだけの体を締め付けない肌襦袢(じゅばん) と 童謡「オニのパンツ」で謳われているような ”つよくていいパンツ” を掛け合わせたもの。
黒川さん:
「素材はオーガニックコットンを使っています。パンツのウエスト部分はゴムの代わりにリブ素材や伸縮性のある生地を使用したり、肌に当たらないよう縫い目を表側にするなど、体にやさしい工夫をいろいろ考えています。
パンツから始まって、レギンス、ブラ、タンクトップなど、年々アイテムも増えてきました」
今日は座って仕事?集中したい?体調はどう?
「エタブルオブメニーオーダーズ」のコットンバンブー素材のオールインワン。
下着も服も、 “気持ちいい” “ラク” が黒川さんにとってのキーワードです。
黒川さん:
「このオールインワンも締め付けが全くなく、着ていてラクなので家でも外でもよく着ています。
生成り色も、一番好きな色といっていいくらい。白だとまぶしすぎる気がするし、汚したらどうしようという緊張感もありますが、生成りだと落ち着くんですよね。
色を着るとその色に気分が左右されがちですが、生成りはニュートラルな気持ちになれます」
黒川さん:
「ちょっとでも服に違和感があると、意識せずとも気が散ってしまうのが嫌なんです。だからその日着る服を選ぶ時は、今日何をするかをまず考えます。
座ってする仕事が多い時はウエスト周りがきつくない服を。気分を上げたい時は明るい色の服を。集中したい大事な仕事がある時は、少しでも重みを感じるような服を避けたり。
今日は調子が今ひとつで、言葉も全然出てこないな、みたいな時は素材もデザインも色も、なるべく刺激の少ない服を選ぶようにしています。
器用にいろいろこなせるタイプではないので、自分を整えることをすごく大事にしているんだと思います」
目の前のことに集中したいから。服で自分を整える
黒川さん:
「自分を観察するのは元々好きなんです。朝起きると、その時の体調や気持ちを自分に問いかけてみるし、なぜかイライラしている時はその理由をじっくり考えてみる。自分の快・不快を見つめるのって面白いなと思っていて、それに合わせて着る服も選んでいます。
なるべく目の前のことに集中したりリラックスしたりできるように自分を整えたい。私の場合、服を着ることもその一環なんだと思います」
「着心地のよさ」と聞くと、肌触りだけをイメージしがち。でも、黒川さんの話を聞いていると、それだけではなく、かたちや色、どんなふうに着るかなど、さまざまなことが着心地に関わっていそうです。しかも、その日の自分の体調や気分によっても、何が心地よいかは違ってきそう。
服選びに迷った時、日々の「着心地」をじっくり追求することは一つのヒントになりそうな気がします。
続く第2話では、黒川さんの胸をときめかせる服のディテールやアクセサリーを見せてもらいます。
【写真】濱津和貴
もくじ
黒川紗恵子
クラリネット奏者として、自身のユニットNyaboSsebo(ニャボセボ)でのライブや映像作品への楽曲提供のほか、歌手のサポートやCM、映画音楽のレコーディングなどでも活動。2016年より体にやさしい下着ブランド JUBAN DO ONI (ジュバンドーニ) の代表を務める。
http://www.kurokawasaeko.com
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