【自分らしく働くには?】第2話:悩み、もがいて、ようやく作り上げた居場所だったけれど……

ライター 長谷川未緒

「これからどう働いていこうかな?」などと漠然とした思いを抱くことも多い新年度。

特集【自分らしく働くには?】では、居心地よく、自分らしく働き、生きていくためのヒントを得ようと、東京・神宮前で花屋「THE LITTLE SHOP OF FLOWERS」を営む、壱岐ゆかり(いきゆかり)さんを訪ねています。

壱岐さんは、アメリカの大学を卒業後、日本のインテリア会社『IDÉE(イデー)』でPRを務め、フリーランスに転身。その後、PRと花屋という二足のわらじを経て、花屋専業へ。

第1話では、サンフランシスコでの学生生活や、寝る間も惜しんで働いたという会社員生活、フリーランス転身後について聞きました。

続く第2話では、楽しいばかりだった20代とは一転、眠れなくなるほどの不安にさいなまれたという30代、自分にしかできないことを模索する中で見つけた花屋のこと、出産後に苦悩した仕事と育児の両立などについて、伺います。

第1話から読む

 

わたしには何もない、と不安になった30代

会社を退職し、思いがけずフリーランスで海外のデザイナーたちのPRの仕事をするようになった壱岐さん。

時差に関係なくエネルギッシュに働いていたものの、心のうちには不安がありました。

壱岐さん:
「イデーで働いていたとき、自分たちが作ったものは自分たちでPRしていました。だからわたしがPRを請け負っているデザイナーたちも、いずれノウハウが身に付いたら、自分たちでやっていくだろう、そのほうが自然だと思っていたんです。

そうやって仕事としての付き合いがなくなったときに、それでもわたしと友だちでいたいと思ってくれるひとって、どのくらいいるんだろう、と」

壱岐さん:
「フリーランスになり2年ほど経ち、ちょうど大きなクライアントの契約がなくなったり、大失恋をしたりといったことが重なったタイミングでした。

わたしじゃなきゃいけないと言ってもらえると思っていたのに、そうじゃなかった。そう思ってもらえる要素が、わたしには何もないんだ、と恐怖心にさいなまれてしまったんです。

大好きなひとたちだったから、仕事に関係なく、会いたいと思ってもらえる人間になりたい。でも、きょう何かはじめて明日そうなれるわけじゃない。

だから、5年計画くらいで何をすればいいのか考える、自分探しの日々が始まりました」

事務所が入っていたビルのオーナーの勧めで化粧品を作ったりしたものの、続かず。そんな中で出会ったのが、花屋だったそう。

壱岐さん:
「ニューヨークに出張したときに、デニムショップ兼花屋を見かけて。

自分探しをしているわたしとしては、こうしなきゃいけないとか、この曜日じゃなきゃいけないというわけではなくて、気分でやっている花屋さんというところに惹かれました。

これならPRをやりながら、きょうは花屋もやっています、みたいな自由な感じで始められそうだな、と」

 

趣味感覚で、週末に花屋をオープン

やりたいことはやる精神を会社員生活で育んだ壱岐さんは、帰国するとすぐに花屋オープンに向けて動き出します。

壱岐さん:
「花屋って、どう始めるんだろうと思いながら、なんかアルミホイルあるっぽいよな、とか、市場があるらしいとか、ハサミ買うでしょ、みたいな感じで始めたんですよ(笑)。

eatripになる前のレストランが代々木上原にあって、その隣に3畳ぐらいの倉庫があったから、そこを借りることにして。

当時は許可証がなくても誰でも自由に市場に入れたから、お財布に入っているお金で買えるだけ好きな花を買って始めたんです」

宣伝もせず、PR業のない金土日だけ、ひっそりとオープン。

壱岐さん:
「最初はお客さまはぜんぜん来ませんでしたね。

趣味で始めたことだから、売上が立たなくても、売れ残ったとしても、花に包まれる1日を過ごせたら十分なので。

ひまだから、ディスプレイを替えたりペンキ塗りしたり。ちょっとしたことで空間の表情がぐっと変わるから模様替えが大好きで、花があるなんて、さらに最高だな、と思っていました」

友人、知人の口コミから少しずつお客様も増え、さらにはPR業にもいい影響がありました。

壱岐さん:
「展示会をするときに空間づくりもする機会が頻繁にありました。テーマに合わせて自分で花をしつらえ、作品の魅力はここだと思います、と花を通じてお客様にもデザイナーにも伝えることができる。より主役を引き立てることができるようになったんです。

PRと花がわたしの特色になって、セレクトがいいとか装飾の仕方が好きだと言ってもらえるようになりました」

自分には何もない、と悩みながら動き続けて見つけたPRと花屋。ほどなくしてそこに子育ても加わります。

 

ようやく作り上げた自分にしかできないことも……

花屋をはじめて数ヶ月経ったころ妊娠がわかり、子どもが生まれる1週間前に、今の店舗の契約書にサイン、そして出産後間も無く復帰したのだとか。

壱岐さん:
「ここを借りたばかりだったので、思い切った家賃に挑戦する場所でもあったので、とにかく迷惑をかけないように、ちゃんと準備をしなくちゃ、と。

でもオープン前のいろいろなことで頭がぐるぐる動きながら、家からここに単純に赤ちゃんを連れて来るのも不慣れの極みで。頭の中いっぱいで荷物も無駄にいっぱいで、チャイルドシートにハラハラしながら乗せて。

さらにはニューヨーク時間から始まるPR業と、朝早く始まる市場、乳飲み子の授乳がバッティング……。

息子がハイハイしたり、歩きはじめたりすると、事務所の床を水拭きする時間を計算して早め早めに出勤したりと、両立の難しさを感じまくりな日々のスタートでした」

1歳から保育園に預けたものの、PR業と花屋、子育てを同時に行うことは難しくなっていきました。

壱岐さん:
「花屋はすごく楽しかったんですよ。

花屋をしている友人や、家族が花屋だという会社員時代の同期たちが、『お前、やっちまったな〜』って言いながら、いろいろ親切に教えてくれて。

学びながら、叱ってもらいながらというのが、そのときすごく心地よくて」

壱岐さん:
「何も計画しないで始めているから大変だったし、私が何人いても足りないわ、と思いながら、やると言った以上は全部やり切ろうと、いろいろがんばった。

でも内心、息子に泣かれながら市場に行くことにも、心が折れることがなかったとは言えない時期もあって。

予定していたニューヨークコレクションにも『やっぱり行けない』と伝えると、『あなたじゃなきゃダメなのに!』とデザイナーから本気で叱られながら返事をもらった時に、わたしじゃなきゃいけないPRができてたんだ、と目標を達成したことを確認できたけど、時すでに遅し。

わたしじゃなきゃいけないPR業と、わたしじゃなきゃいけない母親。比べると、申し訳ないけどやっぱり母親になるしかないと苦渋の決断をしました」

子どもが3歳になるころ、PRはいさぎよくやめ、花屋専業に。

3役をこなしていた3年間は、あまり思い出せないくらい大変でしたが、後悔なくやりきった3年間でもありました。

壱岐さん:
「別れたひとたちは、わたしがこれからどれだけ花屋をできるのか、きっと見ているはず。だから、一生懸命、やれるだけやろうと思ったことを覚えています」

神宮前に移転して11年目、じつは今年いっぱいで、大家さんの都合で移転することが決まっています。

続く第3話では、花屋専業になっても続く母親との両立の難しさや、コロナ禍でのこと、いま考えている未来について、お聞きします。

(つづく)

 

【写真】川村恵理


もくじ

 

壱岐ゆかり

THE LITTLE SHOP OF FLOWERS主宰。インテリア業とPR業を経て、花の持つ⾊の豊かさに魅せられ2010年に花屋を始める。装花、スタイリングなど、⼈の気持ちを花に“翻訳”する花屋として活動しながら、廃棄花を染料にして暮らしのギフトに落とし込む提案も。植物や花の活⼒を信じ、⼈⽣の様々な場⾯でそっと寄り添える存在になれたらと、⽇々奮闘中。

インスタグラム: @thelittleshopofflowers

 


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