【目標って、立てますか?】01:立てないです。心が気持ちいい方へ、自然と定まっていくものだから(一田憲子さん編)

ライター 片田理恵

今年の目標はなんですかと聞かれることがあります。「家族みんな健康に」「そろそろ運動」「自分のための時間を」というのも、もちろん本心。でも密かに努力していることほどなかなか口には出せなかったりしますよね。その一方で、やりたいことを人に話して新たな道を切り開いていく人もいる。どちらの気持ちもよくわかります。

目標を自分の内側に留めておく人、みんなに目標を宣言する人、あえて目標を立てない人。目標との関係性は人それぞれですが、ならばみなさんどんなふうに適切な距離を決めているのでしょうか。

目標は自分の内側から生まれる「言葉」ですから、ここはやはり言葉のプロに聞いてみたい。そこで今回は編集者・ライターの一田憲子(いちだ・のりこ)さん、校正者の牟田都子(むた・さとこ)さんのご自宅にお邪魔して、お話を伺いました。

 

目標を言語化するのは……苦手です

前編でまず登場いただくのは、フリーランスの編集者・ライターとして活動されている一田さん。『暮らしのおへそ』『大人になったら着たい服』『暮らしのまんなか』などの編集や執筆を手がけつつ、ご自身の暮らしの実感をつづった大人の女性のための書籍を数多く出版されています。

さらには、運営するサイト「外の音、内の香」やSNSを通じた日々の発信も。読んでいない日はないかもしれないというくらい、一田さんの「言葉」は、私たちの暮らしにとって身近な存在です。

さて一田さん。目標って、立てますか?

一田さん:
「(目標を立てるのは)苦手なんですよ。だからこの取材のお話をいただいた時、私でいいのかしらって思ったの(笑)。立てるぞ、立てないぞと積極的に決めているわけじゃないんだけれど、『今年の目標はこれ』と言語化するのはとっても苦手なんです。……あら、意外ですか?」

意外です。とっても。言語化することで行動や思考を明確にして、だからこそたくさんのことが実現できておられるのだと思っていました。

 

目標を「立てる」ではなく「確認する」

一田さん:
「言葉にすると、モヤモヤした曖昧なものに形ができてしまうでしょう? 曖昧さを切り落とすことで本質から離れてしまうような気がするんです。人の気持ちって、行きつ戻りつして日々変わるものだから」

明確にしようとして逆にずれてしまう感覚、わかる気がします。違和感が拭えないと長続きもしない。目標を立てなければよかったと後悔したり、続かない自分はダメだと落ち込んだり。

一田さん:
「そうそう。そうなってしまうとつらいですよね。だから私はもう少しファジー(曖昧)にとらえたくて。ぼんやりとした長い文章で書く方がしっくりくるんです。具体的には、お風呂に入りながらノートを書く。それが『目標を立てる』というより『目標を確認する』時間かな」

一田さん:
「OURHOMEのEmiさんが提案されているマイノートを参考にしながら、できるだけ毎日、思いのままになんでも書いています。その日の出来事や感じたこと、整理のつかないモヤモヤ、あの人に会ってこう言われてうれしかったとか。

浴槽のふたを半分閉めた状態でその上にノートを広げて、書くのは太字のボールペン。半身浴をしながらああでもないこうでもないとやっていると、いつの間にか時間が経って、心も体もすっきりするんです。実際に汗もかくし、気持ちがいいの。好きな時間ですね」

 

過去の私から、今の私が見えてくる

中身は見せられないけどと笑って、一田さんがノートの束を出してくれました。EMIさんにすすめられた無印良品のグレーのもので、使い始めの日付を見ると、1冊をおよそ3カ月くらいで使い切るペースで書いているよう。

ボールペンは黒と青の二色を使い分け、今日のことを書く時には黒、過去のノートを読み返してチェックを入れる時には青と決めています。

一田さん:
「出張や旅行にも持っていくので、持ち運びに便利な薄くて軽いものがいいんです。飛行機や新幹線の中、ホテルの部屋で書いたり。ブログの話題をここから探すことも多いですね。

前のページに書いた文章は、その日の気分で読み返したりもします。人間って忘れるでしょう。昨日、泣けるほど感動した!って書いたのに、そのこと自体を今日はすっかり忘れていたりする(笑)。

だからというわけではないけれど、過去の気持ちをさかのぼって読み返すと、今の私の傾向や課題が見えてくる気がするんです。これができるようになりたいとか、こんな人になりたいと感じている自分を認識するうちに、それが『目標』になっていく部分はあるかもしれませんね」

 

自分の心が気持ちいい方へ

「おかわりどうぞ」と香りのいいお茶を注いでくれる一田さん。気づけばお邪魔してから早1時間、すっかりくつろいだ心地になっていました。どうやら私たち取材チームの方が、「目標」というテーマに気負いすぎていたみたい。

一田さん:
「苦しいのは嫌だから、自分の心が気持ちいい方へ。最近はそんなふうに考えられるようになりました。ノートは書くのが楽しいから書いているし、気持ちに余裕がない時は書かない。目標は立てないけれど、自然と定まっていくことはある。それが今の私の『気持ちいい』なんだと思います。

また意外だと思われるかもしれないけれど、私、けっこうクヨクヨと思い悩むんですよ。一度はこう決めたものの、こっちの方がよかったんじゃないかと思い直して、でもやっぱりまた……と試行錯誤を繰り返すタイプ。

だけど私が原稿で書いていることってまさにそれなんです。あれこれやってみた工夫のプロセスごと言葉にする。結論だけじゃなくて、失敗も変更もまるごと書く。それが私の書きたいことだし、心が気持ちいい方向なんですよね」

目標を立ててもいいし、そうじゃなくてもいい。それによって自分の心がどう感じるかを基準にすればいい。

一田さんの言葉を聞きながら、ああ本当にそうだなと思いました。自然に現れてくる「目標のようなもの」と無理なくつき合う。それなら達成の度合いにとらわれず、気軽に気持ちよく向き合えそうです。

続く後編ではもうひとりの言葉のプロ、校正者の牟田都子さんのもとへ。校正とは、本になる前の印刷物を読んで誤りを修正したり、事実関係の確認などを行う業務のこと。なんと牟田さんのお話にも、重要なアイテムとして「ノート」が登場しますよ!

(つづく)

 

【写真】井手勇貴


もくじ

 

一田 憲子

編集者、ライター。フリーライターとして女性誌や単行本の執筆などで活躍。『暮らしのおへそ』『大人になったら、着たい服』(主婦と生活社)『暮らしのまんなか』(別冊天然生活)では企画から編集、執筆までを手がける。全国を飛び回り、著名人から一般人まで、多くの取材を行う。著書多数。近著は 『歳をとるのはこわいこと?』(文藝春秋)。ウェブサイト「外の音、内の香」http://ichidanoriko.com/​

 


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