【連載】あの人の暮らしにある「北欧」のこと。no.03:キャンドルを灯す

ライター 藤沢あかり

 

一枚、また一枚と薄グレーのカーテンを引くように、空が夜の準備を始めるころ。立古尚子さんは、小さなキャンドルに火を灯します。

色とりどりに集めたガラスのキャンドルホルダーは、分厚くぽってりとしていて、氷みたいに、あるいは光を固めたキャンディみたいにも見えます。

凛としたシンプルさと、有機的なクラフト感。見るたびに表情が変わり、ずうっと飽きずに、そばに置いてきました。

ゆっくり、時間をかけて集めてきた「イッタラ」のkivi(キビ)は、立古さんにとって大切な北欧雑貨のひとつです。

 

2006年、はじめてのフィンランドで、友だちの家に招かれたときのことです。

みんなで食卓を囲み、おしゃべりに花を咲かせていると、街にチャイムが流れました。夕暮れどきのしらせです。その音を合図に、お母さんがトレイいっぱいの何かを運んできます。

それは、どっしりとしたガラスのキャンドルホルダーでした。

色も数も、たくさんあります。

お母さんはトレイをテーブルに置くと、その一つひとつに火を灯し、テラスや窓辺、ダイニングテーブルなど、部屋のあちらこちらに光を添えていきました。

静かに日が暮れていき、室内はやわらかなあかりで満たされます。それはそれは幻想的で、なにか特別な儀式を見ているようでした。

でもどうやら、お客さまが来たからでも、誰かのお誕生日だからでもないようです。この家では毎日こうして、キャンドルの灯りで1日を終え、夜を迎えるのです。北欧ではこれが、ごくあたりまえの日常の風景なのだと知りました。

 

はじめて手にしたkiviは、フィンランドに住む友だちが贈ってくれたものです。

薄曇りの昼間でも、キャンドルひとつで、ちょっと気分が変わります。いくつも集めるうちに、雨の日は薄いブルーを選んで灯す、なんて楽しみも加わりました。

北欧では、どうして毎日キャンドルを灯していたのか。ちらちらと揺れるガラス越しの光を見ていると、少しだけ、その理由がわかったような気がします。

 

 

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立古 尚子(りゅうこ なおこ)

グラフィックデザイナー。ステーショナリーや雑貨、冊子など、紙媒体を中心としたデザインを手がけている。夫と娘との3人暮らし。
インスタグラム @nao_et_noa

 

Text : Akari Fujisawa
Photo: Ayumi Yamamoto

 

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