【取り持つふたり】前編:大事なことを、届けたい人へ、伝える。通訳にも似ている仕事かもしれません(高松 × 東郷)

ライター 長谷川賢人

ふだんはせわしなく、仕事と向き合うクラシコムのスタッフたち。ゆっくり、じっくりと、お互いのこれまでを振り返って話す時間は……実はそれほど多くありません。

でも、あらためて話してみると、人となりがもっとわかったり、新鮮な発見が得られたりするもの。そこで、スタッフ同士でインタビュー(というより、おしゃべり?)してみる機会を持ってみることにしました。

今回は、BRAND NOTEなどで企業とのタイアップ企画をプロデュースする「ブランドソリューショングループ」の高松と、オリジナル商品をつくる「PB開発グループ」でもアパレルアイテムを手掛けるスタッフ東郷が登場。

それぞれに「北欧、暮らしの道具店」という場所を解釈しながら、コンテンツや商品を届ける仕事をしているふたり。話してみると、ともに「好きだった仕事を見直す」という時期もあり、クラシコムに入社していました。いま、ふたりはどんなことを「届けたい」と思って、日々の仕事をしているのでしょうか。

前編は主に東郷が聞き役となって、高松に色々と質問してみました。

 

飛び込んだのは「ネット広告の黎明期」でした

東郷:
「はじめまして」ではないですけど、こんなふうに向き合ってお話するのは初めて……かもしれないです。

高松:
言われてみるとびっくりですね!そしたら、固いですけど自己紹介からしてみましょうか(笑)。私は福島県出身で、大学進学と同時に上京してきました。前職はインターネット広告の代理店です。クラシコムではプランナーとして、ブランドや商品にマーケティングの課題を抱えるクライアントからお話を伺って、その解決につながるタイアップコンテンツや企画を作っていく仕事をしています。

東郷:
昔から広告に関するお仕事をされていたんですね。

高松:
でも、もともとは「広告の仕事をしたい」というよりは、雑誌や本が好きだったので出版関連の仕事に就きたかったんです。大学もマスコミ専攻でした。ただ、出版社の採用は狭き門で、ご縁がなくて。それで対象にする業界を広げて入れたのが前職だった、という感じです。

前職はインターネット広告などウェブ周りの事業を展開している企業で、10年近く働きましたね。「ネット広告の黎明期」とも言える時代で、業界全体がぐーっと伸びていました。ウェブサイトを見ていると出てくる四角い画像の「バナー」の文章やデザインを考えたり、Googleなどでキーワードを検索した時に表示される広告を作ったり。

プロバイダごとの「ポータルサイト」にもたくさんアクセスがあって、それこそ私が働きはじめた頃は「ついにmixiに広告枠が出た!」みたいに盛り上がってました(笑)。

東郷:
ウェブサイトのバナー、ありますよね。たしか大学生くらいの頃にmixiはよく見ていたので覚えています。

高松:
みんなにとってネット広告自体が新鮮で、バナーも出せば出すほど反応があった時代でした。反応がたくさん見えるのもあって、仕事にやりがいがあったんです。

でも、だんだんと「クリックしてもらうこと」がテクニックになっていって、そのためにシステムも進化していき、私はどこか座りの悪さを覚えていくようになりました。数字ばかり追いかけるやり方になっていて、広告を受け取る生活者はどんな気持ちだろう……?という疑問が出たんですね。

 

『広告は、決して嫌われるものではない』にハッとして

東郷:
そういう仕事のモヤモヤが、転職をするきっかけになったんですか?

高松:
結果的にはそうですね。その頃、たまたま「MarkeZine」というマーケティング担当者がよく見るウェブメディアに、クラシコムのBRAND NOTEを取り上げる記事が載っていたのを目にしました。「北欧、暮らしの道具店」は私も買い物をしたことがあって、テイストも好きだったんです。

タイトルに書かれていたのは『広告は、決して嫌われるものではない』。そのフレーズに、ものすごく衝撃を受けたんです。記事を読んだら共感できることばかりでした。

東郷:
数字ばかりを追いかける広告と、BRAND NOTEの取り組みは全然違う考え方だったんですね。

高松:
「本当にそういう広告があるならやってみたい!」と思いましたし、今までの経歴も生かせるはず。私のモヤモヤも解放され、また違う世界が見れるのかもしれない……そう思った矢先にプランナーの採用募集を目にして。迷いに迷った結果、締切の前日に心を決めて、急いで資料を用意しました。

東郷:
えっ、用意しないといけない資料って、エッセイとか結構たいへんですよね?

高松:
応募を迷いながらも、エッセイに書くならこういうことかな……とイメージはしていたんですよね。なので、なんとか用意して。クラシコムとしては3人目のプランナーとして入社が決まりました。

それこそ前職は高層ビル街にある会社だったので、人に押し込まれるように毎朝の電車に乗って、行列に紛れてダッシュしながら出社していたのが、初出社のときは下り電車に座って行けたのがもう嬉しくて。出社日はすごくドキドキしたのを覚えています。「クラシコムのイメージ」が頭でっかちになっていて、馴染めるか心配だったんですよね。

東郷:
出社日のドキドキ、わかります。

高松:
東郷さんの初出社エピソードも後で聞かせてください(笑)。実際は、初日の心配が吹き飛ぶくらい、温かく迎えてもらえて本当に嬉しかったです。もうなくなってしまって残念なのですが、国立駅前の「シュベール」という喫茶店でメンバーと一緒にランチをしたら、ここでやっていけそうな感じがしました。

 

いつからか封印していた、「私はどう思うんだろう?」という考え

東郷:
仕事の面で、前職からのカルチャーギャップは感じましたか?それこそ「以前のやり方」が顔を出したくなる瞬間とか。

高松:
ギャップはありましたね。顔を出したくなるというか、「もう出てしまっているのをどう整えていくか」を考えなくちゃいけなくて。前職は良い意味で「誰が働いても同じようにうまく回る」という観点から、個々人の考えよりは仕組みや進め方が大事にされていました。

だから、クラシコムで仕事をして、メンバーに何かを相談した時に「高松さんはどう思います?」って最初に聞かれたときに、ギャップを一番感じたかもしれません。「そうか!相談するにしても、まず私の個性で答えを持ってから、クライアントやクラシコムにとって正しい判断なのかを確認しないといけないんだ」と思いましたね。

東郷:
今までも高松さんなりの考えはあったけれど、それを「出す機会がなくなっていたから」最初は大変だった、みたいなことですか。

高松:
そうそう。封印していたんだなぁ、って。

もちろん、プライベートでは自分の趣味や好きなものがあり、仕事以外でもクリエイターや作家さんが集まるイベントの運営や広報を手伝っていたんです。でも、それらと仕事が全て切り分けられていたのを、私の中で「良いと思えること、美しいと感じること」を通じて、「もっと融合させていこう!」と。だから、勤め始めはリハビリみたいな感覚でした。

今も、クライアントのお話やご要望を踏まえたうえで、クラシコムとしてのバランスの取り方を、「私はどう思うんだろう?」と、いつも問いかけながら仕事をしていますね。

 

言うなれば、通訳みたいな仕事かもしれません

東郷:
クライアントの要望を聞いてから、どんなふうに企画を進めることが多いですか?

高松:
クライアントは商品の良いところをたくさん伝えたいと思われていますし、私たちも一緒にお取り組みするので、それは賛成なんです。でも、全て伝えようとしてもお客さまはお腹いっぱいになってしまったり、「何が大事なのか」がちゃんと届かなかったり……。

だから「伝えたいこと、届けたいこと」が複数あったら、常にその優先順位を伺いながら整理していきますね。

東郷:
それぞれで伝えたいことが違うから、タイアップ企画のかたちも異なってくるのですね。

高松:
そうですね。読みものに入れられる情報は本当に限られますし、仮に全て伝えたところで伝わるとも限りません。それに、クライアントの意向がお客さまの気持ちに沿わないことだって出てきます。

たとえば、「商品を何よりも目立つように写真で見せたい」という要望があったとき、私たちは商品が目立つことよりも「自分の部屋にあったら、どんな感じなんだろう?」というイメージが湧くようにわかりやすく届けたい、と思うかもしれません。お客さまを想像しながら「どういった写真が必要なのか」を現場で説明することもよくあります。

東郷:
なんだか、通訳みたいなお仕事ですね。

高松:
あぁ、そうかもしれません。通訳のような感じ。前職では、クライアントがやりたいことを表現することが優先でした。だから、その視点はクラシコムに入社してから、特に必要になってきたんだと思います。

そこに、自分だけの視点だけではなく、これまでの数々のBRAND NOTEなどの制作物という下地もあって。プランナーたちだけでなく、編集やディレクターのメンバー、外部のライターさんや写真家さんと、いろんな方が関わってきたなかで、私たちなりの「伝え方」をたくさん話して、学んできたこともたくさん活きていますね。

 

身の回りに、気分の上がるものがあってほしいから

東郷:
高松さんは、これからどんなふうに仕事をしていきたいですか?

高松
やっぱり、身の回りにあるものが、自分の気分が上がるものであってほしいし、それを増やしていくお手伝いがしたい、とはずっと思っています。

クリエイターや作家さんのイベントをお手伝いし始めたのも、彼らのものづくりを届けることをお手伝いすることで、このままものづくりに集中してほしかったからなんです。

イベントを告知するために、作家さん一人ひとりにお話を聞いて、記事にまとめるようなこともしていました。魅力のあるものを自分なりに解釈して、それを届けて、手に取った人が嬉しくなり、さらに作家さんが喜んでくれる。そんな巡りがあることを知りました。

クラシコムのプランナーにも共通するところがありますね。私にとっては、すこし大きく言いすぎかもしれないけれど、ライフワークみたいなものなんです。だれかとだれかの間に入って繋げる仕事が好きで、ずっと続けていける気がする、と信じていることの一つです。

 

(つづく)

【写真】川村恵理

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