【連載】あの人の暮らしにある「北欧」のこと。no.05: “暮らし” を自分でつくる
ライター 藤沢あかり
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毎朝つかうマグカップ、古いものを受け継ぎ使うこと。身近なお気に入りや習慣が、北欧からヒントを得ているということはありませんか。
インテリアショップ「IDÉE(イデー)」でディスプレイを担当している小林夕里子さんの「暮らし」への世界を広げてくれたのは、デンマークで出会った価値観でした。
ささやかに取り入れている、暮らしのなかのちいさな北欧。いますぐ始めてみたくなる、手のひらサイズの北欧。連載の第二弾を4回にわたってお届けします。
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小林さんが実家を出て、ひとり暮らしをはじめたのは25歳のとき。背を押してくれたのは北欧で過ごした3ヶ月でした。
ホームステイ先は、古い家を自分たちで作り直しながら住む夫婦のお宅でした。外壁は石造り。築100年を超えるうんと古い平屋には、暖炉と庭もありました。
家は未完成で、床を剥がしている途中の部屋もあります。週末になると、夫妻はせっせと床やタイルを張り、壁を塗り、草花の苗を植え込みました。
小林さんも、それを一緒に手伝いました。インテリアもDIYも好きでしたが、床を張ったことなんて一度もありません。いろんなことを、ここで教えてもらいました。
かわいい雑貨、すてきな家具といったデザインに惹かれてやってきたデンマーク。けれど、ここでの生活が、それらをもっと大きく包み込む「暮らし」への興味へと変わっていったのです。
当時のデンマークでは、夕方6時にもなれば街はすっかり静かになってしまいます。土日も、お店は開いていません。家族で過ごす暮らしを大切にするための、この国の「あたりまえ」なのだと知りました。
そうして帰国後、真っ先にしたのはひとり暮らしでした。
畳の上に板を張りフローリングにしたり、ふすまをロールスクリーンに取り替えたりと、現状復帰できる範囲でDIYを楽しみました。実家の一室を飾るのとは違う、自分のためだけの空間です。
目に入るものすべてを、自分で選びつくり上げ、好きなものだけにできる気持ちよさを知りました。
やりたいことを形にするうちに、賃貸物件では興味が収まらなくなった小林さん。今度は、自分の家が欲しいと思うようになりました。
それが、いまの住まいです。自分好みにリノベーションしたマンションは、すべてをプロ任せにせず、自分であちこち手を加えながら少しずつ完成させました。
大切に集めた雑貨が映えるようにと、ペンキを買って、キッチンの壁を塗り、棚を取りつけました。隙間にぴったり収まるキッチンワゴンもお手製です。
自分のためにマンションを買うだなんて、思いもよらないことでした。あのとき、思い切ってデンマークに行かなければ。あのホストファミリーに出会わなければ。
こんなにも、「暮らしを自分でつくる」というおもしろさに気づけていなかったかもしれません。
小林 夕里子(こばやし ゆりこ)
2007年に株式会社イデーに入社、VMD(ビジュアルマーチャンダイザー)として全国の店舗ディスプレイ監修や、ウェブやカタログのスタイリング、VMD講師も務める。著書に『暮らしを愉しむお片づけ』(すばる舎)。
Instagram : @yuricook
Text : Akari Fujisawa
Photo: Ayumi Yamamoto
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