【訪ねたい部屋】01:暮らしながら変えていく。ヴィンテージ好きのミックスインテリア

編集スタッフ 藤波

社会人4年目、まだまだ家づくりの途中の私。雑誌やSNSで素敵な部屋を見つけては憧れが膨らむのですが、見よう見まねで模様替えしてもどうもしっくりこなかったり。いつかは自分の好きを詰め込んだ家に住みたいなあと思いつつ、予算の問題もあるし、何から手をつけたらいいのか……道のりは遠いです。

特集「訪ねたい部屋」は、自分にフィットするインテリアを楽しんでいる方に家づくりのヒントを伺う企画。

今回お邪魔したのは、都内のマンションに夫と2歳の娘さんと暮らす、デザイナーの板井亜沙美(いたい あさみ)さん宅です。

インスタグラムでたまたま見つけた板井さんの部屋。型にはまらず自由な雰囲気のインテリアにぐっと心を掴まれてしまいました。第1話では、家探しや部屋づくりの過程についてお話を伺います。

 

決め手は「この家に住みたい」から

都内のヴィンテージマンションを3年前にリノベーションした板井さん宅。玄関を入り廊下を抜けると、キッチンが繋がった広々としたリビングダイニング、奥には和室と書斎がある2LDKの間取り。広さは81平米です。

4年ほど前、板井さんの妊娠を機に当時の賃貸マンションから広めの家を購入して引っ越すことを決めたそうです。リノベーションを選んだきっかけはあったのでしょうか。

板井さん:
「家を購入することははじめから前向きに検討していましたが、都内の一軒家は予算面でも管理面でもハードルが高いなと感じていました。

そんな時、本やネットを見て素敵だなと目に留まるお家のほとんどが中古マンションのリノベーションだったことから興味を持ち始めました。色々調べていくと、確かにこれなら予算を抑えつつ自分たちの好みの暮らしが叶うかもしれないと思ったんです。

リノベーションの説明会に行き始めてすぐに『この人にお願いしたい』と思える、家探しから一緒にしていただけるプランナーさんに出会えたことはラッキーでしたね」

板井さん:
「産前産後で合わせて30軒は家を見に行ったと思います。特にエリアは絞らずに、東京の東から西まで色々な街に足を運びました。

そんな中で出会ったのが今の家。物件価格として考えていた予算からはオーバーしていたのですが、日当たりの良さや窓からの景観、間取りがすごく気に入り、『この家で暮らしたい』という気持ちが勝りました。

そうして、予算から家を購入した額を差し引いた残りで、可能な限りリノベーションすることになったんです」

 

暮らしながら、変えていく

▲ダイニングと繋がったリビングにはキッズスペースが

当初より限られた予算でのリノベーションになったとのことですが、難しかった部分や心残りはあるのでしょうか。

板井さん:
「はじめは、こだわりを持って全部を決めるフルリノベーションに憧れてもいました。でも、私たちの場合は家ありきで簡易的なリノベーションをすることになったからこそ、逆に生まれた良さもあるなあと思っていて。使えるところはそのまま使って、そこに自分たちらしさを加えて楽しむ余白も十分ありました。

『もっとこうしたいよね』『じゃあどうしていく?』を夫婦で繰り返しながらの生活が意外と気に入っているんです。暮らしながら変えていくプロセスを夫と一緒に楽しめているのかな。

入居してから3年かけて、最初は空っぽだった箱がだんだん自分たちにフィットしてきて、今ようやく心地よく暮らせているような感覚です」

▲娘さんサイズのちいさなラックは板井さんのお父さんがDIYしたもの

板井さん:
「リビングの隣の和室は施工段階ではほとんど手をつけなかったのですが、暮らしていく中でやっぱりもう少しモダンな雰囲気にしたいと思い、後から押し入れの襖を全て木製に変えました。

壁側にはジーンズのオーバーオールを飾ったり、ラックや飾り棚を設置したり。まだ途中ですが、ここも少しずつ自分たちらしい空間になってきたなと思います」

やっと自分たちらしい空間になってきたという板井さん宅。見渡すと、椅子や照明などの家具はどれもちょっと変わった素敵なものばかりです。

▲5つの電球がきらめくライトは『SHARK ATTACK』で購入したもの

板井さん:
「実は、前の家から持ってきた家具はソファとキッチンにあるキャビネットくらいなんです。今ある照明や椅子などの家具はヴィンテージショップやリサイクルショップで購入したものがほとんど。休日に家族でお店に足を運び、コツコツ集めました。

あとは、父の趣味がDIYなので、要望を伝えて作ってもらった棚も多くあります。家具や雑貨でいわゆる“新品”のものはあまりないかもしれないですね」

 

「ヴィンテージ好き」は古着が原点

▲一番上の段にあるのは娘さんのファーストシューズ。思い入れがあるのでなかなか捨てられず飾っているそう

玄関入ってすぐの下駄箱から、恐竜のオブジェや牛モチーフの眼鏡入れなど個性的でかわいらしいアイテムが。部屋中いたるところにある飾り棚には、思わず「どこのですか?」と聞きたくなるユニークな雑貨たちが並んでいます。板井さんがヴィンテージ好きになったのには何かきっかけがあったのでしょうか。

板井さん:
「10代の頃『Zipper』や『CUTiE』などの雑誌に夢中で、原宿カルチャーに憧れて古着屋に通っていました。若い頃は使えるお金も限られていたけれど、古着なら個性的でかわいいデザインのものが手に入るのが嬉しくて。

その当時から、形も色合いも年代も全然違う洋服や雑貨がぎゅっと詰まっているあの空間が大好きだったんですよね。古着屋のようなごちゃまぜ感を掛け合わせたインテリアが好きな気持ちは、今でもずっと根底にあります」

▲廊下に飾ってあるカラフルなジャケットも古着屋で購入したもの。なかなか着る機会はないものの、持っているだけでお守りような存在だそう

板井さん:
「たくさんの洋服の中からお気に入りを探す、宝探しみたいな感覚がすごく楽しいんですよね。今でも古着屋にはよく行きますし、骨董市で雑貨を探すときも同じような気持ちでいます。

便利なもの、綺麗なものは世の中にたくさんあるけれど、目の前にある服やモノがここに至るまでの道のりを含めて魅力的に感じるというか。無くなっていく、こぼれゆくものにぐっときてしまうみたいです」

***

今までリノベーションと聞くとハードルが高そうに感じていましたが、たとえ最小限の施工でも自分たちらしい空間をつくる工夫はできるのだと、「暮らしながら変えていくプロセスを楽しむ」という板井さんの言葉を聞いて思いました。

続く第2話では、お気に入りのヴィンテージ家具に囲まれたダイニングについて詳しくご紹介します。

 

【写真】関めぐみ


もくじ

板井亜沙美

デザイン会社でデザイナーとして働く。都内の中古マンションをリノベーションした部屋に2歳になる娘と夫と暮らしている。インスタグラムは@tgwasm1116から。


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