【いとしい住まい】第1話:52平米ワンルームを、照明や家具でゆるやかに仕切る。ふたり暮らしのアイデア

ライター 瀬谷薫子

住まいの居心地は「ものの置きかた」で決まるのかもしれない。素敵なインテリアを取材していると、そう思うことがあります。

物が少なくても、家具の置き方やものの居場所がアンバランスだと、なんだか落ち着かなく感じることもあり。反対にものが多くても、あるべき場所にしっくりなじんでいれば、心地よく感じるから不思議です。

都内の賃貸マンションに夫婦2人で暮らす有田紗世(ありた さよ)さんの住まいはまさに後者。

間取りは真四角のワンルーム。キッチン、リビング、寝室が52平米のひと空間に同居していて、決してかんたんな住まいではありません。けれどインテリアはひと目見ただけでワクワクするようなかわいいものが詰まった、「ものは多くても居心地のいい」空間。

そんな住まいを作る秘けつはどこにあるのか。今回はレイアウトからもの選び、飾り方まで、有田さんの家に散りばめられた心地よさのヒントをじっくりとうかがいました。今日から全3話でお届けします。

 

夫婦2人でワンルーム、試行錯誤の家づくり

2年半前、同棲を機に今のマンションへ越した有田さん。ここに決めたきっかけは、リビングのある南側に広がる大きな窓。ここからの景色と、リノベーション物件ならではのユニークな内装が気に入って、想定していなかったワンルームでの暮らしが始まりました。

有田さん:
「ちょうどコロナ禍真っ只中で、家にいる時間が長くても気持ちが塞がないような開放的な空間に惹かれました。

けれどワンルームは想定外。夫婦2人で、どんなふうに暮らせば無理なく心地よい暮らしになるか、試行錯誤しながらの家づくりがはじまりましたね」

思うように外にでられない時期に住み始めたからこそ、家の中にいても開放的なしつらえ、そして友人を招きリラックスして過ごせるような落ち着く空間にしたいと考えて決めた間取り。そこには心地よさを作る工夫がいろいろと詰まっていました。

 

リビングに「2つのテーブル」があるわけ

日当たりのいい南側は、リビング兼ダイニングスペースに。ここにはダイニングテーブルが2つ、置いてあります。

有田さん:
「左の机はメインの食卓。人数に合わせて机が拡張できるので、来客の時にも便利です。

右の机は、もともとはコロナ禍に夫婦ともリモートワークが増えたことがきっかけで、仕事用のテーブルとして置いたもの。あえて2つのテーブルを置くことで、ひとつの空間に違う居場所を作りたかったんです」

それぞれ大きすぎないサイズ感のテーブルは、2つ並べても圧迫感がないのが良いところ。仕事用のテーブルは、今は出社が増えたことで用途が変わり、映画や雑誌を見たり、お茶を飲んだりと、食事以外のちょっとしたシーンに利用しているといいます。

▲笹塚のリサイクルショップで購入したヴィンテージデスク

こんな風に有田さんの部屋には、小ぶりな家具が多くあります。1〜2人がけのヴィンテージデスクは、今はレコードプレーヤーの置き場所ですが、昔はテーブルとして使っていたことも。

▲ニトリのスツール

部屋のあちこちに置かれたスツールは、キッチンの前で鍋を煮込みながら腰掛けたり、ベランダに置いてお茶をのんだりと、柔軟に動かして居場所を作るのに使うそう。

決して広くない部屋の中だからこそ、小回りのきく家具を活用して、落ち着く居場所をいくつか作る。そうすることでワンルームの中にもメリハリを生み、飽きない空間を作っていました。

 

ベッドは足をなくすことで、ソファのようにくつろげる場に

リビングと反対側の壁際に置かれたベッド。あえて足のないマットレスにしたのも理由があります。

有田さん:
「ワンルームの限られたスペースなので、ベッドもできるだけ圧迫感なく置けるように、あえて床置きを選びました。

高さがないと、ベッドというよりソファベッドのように柔軟に使えます。夜寝る時だけではなく、ごろんと寝転がって雑誌を読んだり、友人が来たときも気軽に腰掛けたりできるリラックススペースになりました」

▲マットレスの下にはすのこを敷いて、カビや蒸れの防止に

 

ワンルームの寝室問題は、照明で解決

ワンルームのあちこちに吊るされているペンダントライト。あえてリビング・ダイニング・寝室など個々のスペースごとに小ぶりなライトを吊るしています。

有田さん:
「それぞれの眠る時間がばらばらなときなど、ワンルームだとお互いの生活リズムのずれがストレスに感じるのではと不安でした。

そこで全体を照らす明かりではなく、それぞれのスペースをピンポイントに照らせる程度の小ぶりな照明を各部屋に吊るすことに。どちらかが眠りたいときにはベッドの上の照明を消せば辺りがしっかり暗くなるので、仕切りがなくても照明で空間にゆるい仕切りができました」

▲リビング上の照明は、ルイスポールセンの「ラジオハウスペンダント」

 

収納棚は、空間の仕切りとしても活用

ベッドの奥にはハンガーラックが置いてあり、そこから奥は衣服収納スペースに。ハンガーラックは服の収納だけでなく、部屋との仕切り、兼目隠しとしても活用していて、奥のスペースを着替え場所にしています。

壁付のキッチンの向かいには、食器や食材を収納する棚を2つ並べて、キッチンカウンター、兼リビングとの仕切りに。

吹き抜けのワンルームの中で、個々の生活空間の境目に置いた収納棚やラックが、スペースを区切る役目も担っているのです。

有田さん:
「ワンルームは単調になりがちなイメージがありましたが、シンプルな真四角の形だからこそ、家具を柔軟に動かしやすく、模様替えがしやすいメリットもあると、実際に暮らしてみて感じました。

それに家のどこにいても全体が見通せるので、気になるところが見つけやすく、工夫のしがいもあります」

 

インテリアの軸は「自分がごきげんで過ごせる」こと

▲母が作ってくれたクッションは、ワンピースをリメイクしたもの。インテリアのアクセントに

今もこまめに家具の置き場を調整し、居心地を定期的にアップデートさせているそう。そんなふうに「家づくりにまめ」なのは、生まれ育った実家での母親の影響なのだとか。

有田さん:
「昔から実家のインテリアが好きでした。テーブルの真ん中にいつも花や雑貨が飾られていたり、日々の食器を料理ごとに細やかに変えていたりと、ささやかな工夫が詰まっていて。

誰に見せるためでもなく、ただ『自分がごきげんでいる』ためにシンプルに家づくりを楽しんでいきたいと、母の姿を見て思うようになりました」

今の家に越してくる時、小さな間取り図を紙に描き、pinterestでワンルームのインテリアをたくさん調べて、2人暮らしでどんな空間なら心地よくなるか、想像を膨らませていったという有田さん。

足を踏み入れた瞬間からこちらまでワクワクしたのは、そんな彼女自身の『自分のために家づくりを楽しみたい』という気持ちが詰まっているからなのだと感じました。

つづく第2話は、そんな有田さんの家を彩るものについて。家具や雑貨の大部分を購入している “とあるお店” の活用の仕方を伺っていきます。

 

【写真】橋原大典


もくじ

 

有田 紗世

大阪出身、都内在住の会社員。夫婦2人暮らし。インスタグラム(@arisayo)での、心地いい住まいや暮らしの投稿が人気。

 


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