【メイクで違う一日に】第1話:メイクは自分の「いいところ探し」?

商品プランナー 斉木

はじめてお母さんの鏡台から口紅をとって、塗ってみた日のことをいまでも覚えています。あどけない顔には全く似合わなかったけれど、大人になったみたいで胸がドキドキして、うれしくて。

でも、実際に大人になったいま、メイクがわたしの一番の苦手分野になっていました。

雑誌の美容ページを見ても、「どうせこんなふうになれっこない」と飛ばしてしまう。メイクというよりも、自分のコンプレックスと真正面から向き合うことが怖かったのかもしれません。

そんなとき、憧れていた作家の方がInstagramで「いつも楽しみに見ている」と紹介していたメイク日誌が、わたしのメイクに対する気持ちを変えてくれたんです。

 

メイク下手なわたしが、気づいたら百貨店に向かってたワケ

そのメイク日誌を書いていたのは、美容ライターの長田 杏奈(おさだ あんな)さん。

その日の気分や気候に合わせ、どんなメイクをしたのかが、ていねいに綴られている投稿を見て感じたのは「この人、なんだかとっても楽しそう!」ということ。そしてその週末、わたしは大の苦手だった百貨店の化粧品コーナーにいそいそと出かけたのでした。

目の前で楽しそうに踊っている人を見ていたら、気づいたら自分もリズムに乗っていた……そんな感覚とでもいうのでしょうか。

今よりもっと目を大きく、鼻を高く、そんな「正解」に向けて直していくものだと思っていたメイク。それを、「その日の気分」で選んでいる人がいる。

いったい毎日どんな気持ちでメイクをしているんだろう? 鏡でみた自分の顔にがっかりすることないのかな? そんな疑問を直接長田さんにぶつけたくて、会ってお話を聞いてみることにしました。

 

高校時代、色付きリップひとつで、変身できるのが楽しかった

たくさんの女性誌や美容専門誌で記事を書かれている長田さん。いつからメイクが好きになったんですか?

長田さん:
「母が資生堂の美容部員だったので、幼い頃から家には新作のパレットが山積みでした。小学生くらいから、メイクがわたしの一番の遊び道具だったんです。母が買ってくる美容雑誌も、一言一句覚えるくらい熟読してました。

高校生の頃も、放課後に色付きのリップクリームを塗るだけで、自分じゃない誰かに変身できるような気がして、楽しかったんですよね」

▲長田さんが愛読する「MAKE UP YOUR MIND BY FRANCOIS NARS」。化粧前と後の顔が並び、真ん中にどのようにメイクしたのかを解説した、透明のリフィルが付いている

長田さん:
「でも、社会人になってからは職種が営業だったこともあり、メイクもスーツに合わせて、相手に失礼のないようにというのが最優先でした。

その後は週刊誌の編集部で働いていたんですが、5年経った頃に妊娠がわかって。そこで働き方を見直そうと、フリーランスのライターになることを決めました。それまでいろんな記事を書いてきたんですけど、自分が一番情熱をもって取り組めたのはやっぱり美容だったので、美容ライターになったんです。

いまフリーランスになって10年なんですが、昔からの知り合いには、メイクもファッションも『すごく変わったね』と言われました。社会人になってしばらくはずっと、マナーとしてメイクをしていたんですが、いまが一番メイクを楽しんでいるし、それを通して自分と向き合っているかもしれないですね」

 

モットーは「美容は自尊心の筋トレ」?自分を大切にするチカラを育むために

メイクを通して自分と向き合う……それはどういうことなのでしょう。

長田さん:
「大人になって社会に出ると、なかなか自分の意見を尊重してもらえなかったり、誰かにチヤホヤとケアされる場面も減ったりしますよね。そういうときに『どうせわたしなんて……』と投げやりになるのは簡単だけど、そこで自分に関心を持って、守ってあげられるのも他ならぬ自分だけだと思うんです。

そのためには、根っこのところで、自分の気持ちに耳を傾け、尊重できているということが重要だと思っていて。それさえできていれば、個性のちがう人を尊重したり、周囲の人に優しくしたりできるのかなぁ、と思うんですよね。

わたし自身、あまり自分に自信がないタイプなんです。でも、朝メイクをしながら『こんな色を塗りたい』『こんな感じになりたい』という気分に寄せるようにしています。人から見てどうかというより、自己暗示みたいなものですね(笑)」

長田さん:
「自分を大切に思う気持ちを育むために、毎日自分と向き合いながら『今日はここがうまくいった』『わたし、ここがいいかも』って少しでも気に入るところを探すんです。その積み重ねが、ありのままの自分を受け入れて大切にする基礎を育んでくれる。それって筋トレみたいじゃないですか(笑)だからわたしのモットーは『美容は自尊心の筋トレ』なんです。

大げさかもしれないけど、すべての女性が健全な自尊心を持てたら、世界って変わるかもなぁと思うんですよね。そのためにも、わたしは、美容で女性を応援したいんです」

 

「いいところ」を探しながら、今日も私はメイクする

取材中、玉手箱のようにひっきりなしに飛び出すメイク道具。「これはここがすごいんです!」「こうすると、こんなふうに見えませんか?」と絶えずわたしに話しかける長田さんは、まるで少女のようで。なんて楽しそうにメイクをする人なんだろうと思いました。

その一方で、ひとりのメイク好きの少女が大人になって、社会人として、母として、人として、毎日を健やかに生き抜くために、メイク片手に奮闘している。そんなスーパーマンのように凛々しい一面もちらりと覗くのです。

誰かに優しくできる自分でいるために、下を向きたくなった時でも卑屈にならないように、自分の「いいところ」をメイクをしながら見つけてあげる。そこには、コンプレックスを気にしてばかりいたわたしには想像もつかないような、自分と向き合う長田さんの姿がありました。

週に1度、1話ずつ更新していく本連載。第2話では、そんな長田さんに、「正直メイクをやりたくない日って、どうしてますか?」という質問を投げかけます。メイクが好きな長田さんには、そんな日なんてないのかな?と思いつつ、返ってきた答えは意外なものでした。

(つづく)

【写真】鈴木静華

 


もくじ

 

長田 杏奈(おさだ あんな)

美容ライターとして「MAQUIA」、「BAILA」、「SPUR」など多くの女性誌で記事を執筆。プライベートでは息子 (10歳)と娘(8歳)を育てる。趣味は美容、セレブ、女子プロレス観戦、北欧ミステリー、苔。Instagramは@osadanna。


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