【スタッフコラム】母と私と、おばあちゃん。3人のおしゃべり朝習慣。
編集スタッフ 岡本
「年始にたてた目標の行方」について書いた、前回のコラム。そのなかでひとつだけ残っていた、親孝行旅行に、先日行ってきました。
向かった先は上高地高原。両親にとっては思い入れのある場所ですが、私はまだ行ったことがありませんでした。
「自然が豊かでとっても心が落ち着くんだよ」
「今度は3人で行きたいね」
と、家族の会話にたびたび出てきていたので、この旅行がとっても待ち遠しかったんです。
山、青空、澄んだ空気…のはずが。
以前、両親が行ったときの季節は、夏。すっきりと晴れた空に青々とした緑がよく映え、歩いているだけで日頃の悩みや忙しさが溶けていくようだったそうです。
でも今回行ったのは閉山間近の、10月末。
大自然のなかをハイキングして、めいいっぱい深呼吸するぞ〜!と意気込んだのもつかの間、車内から見る外の景色はどんどんグレーがかっていき……。夕方には雪がちらつくという、想像以上の天候のなかでの到着となりました。
きっとこの吹雪の中ハイキングしたら、自然から元気をもらうどころか、吸い取られて風邪ひいちゃうよ、ということで、おとなしく早めの食事をとることに。
ちょっとだけがっかりした気持ちを抱えていた私とは裏腹に、両親はなんだかイキイキした様子です。
「前来たときと違う雰囲気でいいね」
「閉山前に雪が降るのは珍しいんだって!」
久しぶりの家族旅行だったこともあり、想定外の状況に陥っても楽しさは変わらないようでした。その二人の様子を見て、ホッ。
ふだんは選ばないようなコース料理の後押しもあり、私も両親もいつも以上におしゃべりに。
そのなかで、私が保育園に通っていた頃の話になりました。
知らなかった3年間。
母は自宅か職場、どちらかの近くで保育園を探しましたが、なかなか見つからず。仕方なく、電車で10分+徒歩10分と離れた駅に私を預け、そこからまた電車に乗って都内まで出勤していたそうです。
当時はなんとも思っていませんでしたが、今考えてみるととんでもなく大変なことをしていた事実にびっくり。
当たり前ですが、朝だけじゃなく、フルタイムで働いたあとに同じルートで迎えにも行かなきゃいけない。あまり体が強くない母が、そんなことを数年間続けていたなんて。
コース料理のラスト、デザートそっちのけで話に夢中になってしまいます。
でも、いいこともあったよ、と話す母。
0歳から通っていた保育園。雨の日も風の日も、小さな子どもを抱っこしながらホームに立っていると、毎朝同じように電車を待つおばあちゃんに出会ったそうです。
改札がひとつしかないような小さな駅だったので、お互いすぐに顔を覚えて挨拶を交わすように。
一緒に電車を待って、一緒に乗り込む。乗り換えまでたった一駅だけれど、それが毎日続きました。
すると次第に挨拶が会話になり、電車に揺られながらの5分間は、おばあちゃんと母、そして私のおしゃべりタイムになりました。話す内容はささやかなもので、「今日も寒いね」とか、「泣かないでえらいね」とか、そんなこと。
でもそのちょっとの会話が、朝のバタバタと急いた気持ちをほぐして、これから始まる一日に向けてよしっと前向きになれたのだそうです。
3人のおしゃべり朝習慣は、私が年中組になって自転車通園に変わるまで、約3年続きました。
当事者なのに、全く知らなかった3年間。
のんびりして見える母が必死になって通わせてくれた日々も、おばあちゃんとの習慣も、時を超えて大人になった私の心を、じんわりと温めてくれました。
窓の外を見ると、雪も風も強くなっていて、もはや吹雪。でもこうやってゆっくりと話すために雪が降ったのかな?と思えるほど、穏やかな時間が流れていました。
次に来たときは、一番の目的だった「太陽の下で自然のなかをハイキング」しながら、まだ知らない家族の話を聞いてみたいと思います。
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