【ケの日のこと】ちょっと面倒で、でも最高に幸せな、お風呂のこと。
「家族と一年誌『家族』」編集長 中村暁野
第25話:寒い季節の贅沢
山に囲まれた我が家、朝晩はすっかり冷え込むようになりました。わたしは暑いのはわりと平気なのですが(今年の猛暑もクーラーなしで過ごしました)寒いのがとにかく苦手で、これから半年近くはなにかと辛い季節です。
でもそんな辛い季節にも楽しみはあり、その一つがお風呂。
今住んでいる家は、もともと30年以上前に別荘として建てられた物件で、まさに別荘!という具合になんとお風呂が大きな檜風呂でした。初めて見た時は仰天し、ひえ〜これは手入れが大変そう……と尻込みしたのですが、いざ暮らしてみると木のお風呂ってなんとも気持ちよく、家にいながら温泉気分を楽しめています。
もともと大のお風呂好きなわたしは、初めて1人暮らしをする時も、駅から遠くとも、築年数が古くとも、バスとトイレは絶対別で!というのが外せない条件でした。本や雑誌を持ち込んでゆっくり湯船に浸かっていると体の不調も心のモヤも洗い流されていくようで、今思えば大事な時間だったのだなあと思うのです。
時は流れ、2人の子供がまだ小さい現在では、ゆっくりどころか1人でお風呂に入ることすらありえないことになってしまいました。それでも寒い季節にじゃぶんとお湯につかる一瞬は、間違いなく幸せを感じられる時間です。
そんなお風呂をより楽しむべく、最近気に入っているのがハーブボール。布の中に乾燥ハーブ(生の場合もあるそうです)を詰め込んで、ぎゅっとしばりボール状にしたものです。お風呂につけて、体をマッサージすると子供も大喜び。中に入れるのは摘んできた桑の葉やヨモギや生姜、古くなってしまったシナモンスティックやレモングラスなどなど、その時にあるものを。ボールをつくるのが手間な時は、湯船にそのまま娘が拾ってきたビワの葉っぱや、庭のユーカリを入れたり、ミカンの皮を入れたりすることも。身近な植物をつかった天然入浴剤は、気軽で手軽、香りも楽しめて、何より冷えた身体も芯まで温まります。
ここまで書いて、ああ、お風呂ってやっぱり最高……と思うのです。でも実のところ、バタバタアワアワ時間とやることに追われる日々の中では、お風呂を洗ってお湯を張って、子どもと入って、身体を拭いて……その一連がどうにもこうにも面倒くさくてたまらない日もまた、あるのです。ちょっと頑張れば最高〜となる瞬間が待っていると思うのに、そのちょっとが頑張れない。一日くらい入らなくても困りはしないと、そんな日はもうお風呂に入らずさっさと寝てしまうことにしています。
ちょっと面倒で、でも最高に幸せで、お風呂はわたしにとってやっぱり「ケの日」の贅沢だなあ、なんて思うのです。
【写真】中村暁野
中村暁野(なかむら あきの)
家族と一年誌『家族』編集長。Popoyansのnon名義で音楽活動も行う。8歳の長女、1歳の長男を育てる二児の母。現在は『家族』2号を製作中。2017年3月に一家で神奈川県と山梨県の山間の町へ移住した。http://kazoku-magazine.com
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