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【新連載｜プロローグ】日常でみつけた「あると、うれしい」をおすそわけ。イラスト付きエッセイはじまります

編集スタッフ　二本柳

ふつうの「うれしい」を、コツコツと。

ある日のスーパーからの帰り道。見上げた空がとてつもなく綺麗な夕焼けで、肉屋で買った冷凍コロッケは完璧なきつね色に揚げられて、最後にビールを一口飲んだ瞬間にこう思いました。

ああ、私の人生も悪くないなぁ。

最近、そんな「ふつうの “うれしい”」を、地道にコツコツためていきたいと感じています。

一度にたくさんの喜びや、大きな達成感を感じられるなんて、一年に数回あるかないか。

でもたぶん、それでOK。お気に入りのアクセサリーを少しずつ増やしていくように、何年もかけて器を買い足していくように、幸せも少しずつためていけばいいんだからって、そう思うのです。

日常で見つけた、うれしい発見をお届けします。

本日より、よしいちひろさんを書き手に、エッセイ『あると、うれしい。』が始まります。

イラストレーターとして活躍するかたわら、ファションから暮らし、子育てまで、自身のライフスタイルにも注目を集めるよしいさん。

私はよしいさんのどこかロマンティックな世界観が大好きで、それこそ平凡な毎日に、ちょっとした非日常の楽しみがあることを気づかせてくれるような存在でした。

たとえばよしいさんの日常は、こんなふう。

キッチンに賞味期限が切れそうなチョコクッキーがある。

それをそのまま食べてもいいけれど、ちょっとつまらない。そこでコンビニのバニラアイスを買ってきて、そこに砕いたクッキーを混ぜてみた。それは自画自賛したくなるほどおいしくて、子どもも大喜び。

なんの変哲もないチョコクッキーは、二人にとって、かけがえのない「おやつの思い出」として残り続けるかもしれません。

よしいさん：
「昔から、ネガティブ思考だし自信もないんです。まわりの友人を見渡せば、なんて自分は “ふつう” なんだろうと負い目を感じてしまうくらい。

でも、そんな私だからこそ、身近なものとか、平凡なものを、ちょっとでも面白くしたいと思うんですよね」

この連載で扱うテーマは、どれも派手なトピックではありません。

でも皆さんの暮らしに、ひとつ、またひとつと積み重ねていきたくなるような、うれしい発見をお届けできたら幸いです。

こんにちは、よしいちひろです！

イラストレーターの仕事を始めて、この秋に13年目に突入します。

美大を出たりイラストの専門的な勉強を受けたわけでもないアウトローな私（※）が、13年もお仕事をいただき続けている理由の大きなひとつに、「工夫するのが好き」という性格があるのかなと自分なりに分析しています。いただいた仕事は常に120％で打ち返したいなと思っている。

※大学では元教育学部の美術の先生になるためのコースで、広く浅く美術について学びました。が、当時1年生から所属したバンドに夢中で、勉強は二の次の4年間を過ごしました。バンドに夢中な期間はその後10年以上続きます

そんな「工夫が好き」な性格は父親由来だと思います。母が用意した夕飯を皆で食べた後の残りを、ほろ酔いの父は勝手にアレンジするのが常で（酔いが回りすぎた翌朝なんかは、よくわからないものが鍋に残っていて母が呆れていた、なんてことも今となっては良い思い出です）それを真似て、私たち姉妹は食べ終わりかけのお皿の上や、お好み焼きを焼いて食べた後の鉄板で、残った食材を使って小さなアレンジを楽しむのが常でした。

学生時代もとにかくお金がなかったし、今みたいにファストファッションもなかった。インターネットも始まったばかりだったから、地方住みの学生は古着なんかを駆使して工夫しておしゃれを楽しむしかなかった。

30代はとにかくがむしゃらに働いて、入ったお金でインプットして、夢中で働いて夢中でお金を使っていた10年間だったと振り返ります。

そしてこの春。40歳になった、髪を切った（自分に似合うものって？そういうことを改めて考える機会になった）、新しい連載が始まる、この3つが偶然重なって、これから自分がどうなっていきたいのかがぴかーっと光るように道筋を見せた、それがここ数日のこと。30代の10年間、欲望のままにお金を使い、ときめきを得て、失敗もたくさんして、酸いも甘いもそのすべてが今の私の財産になっていると思います。

今度はその財産を大切にしながら（でもこれまでよりはゆるやかながらも、まだまだ失敗はしていきたい）次の10年を生きていきたいなと思います。

ささやかながら楽しく生きるちいさな工夫を、ここで毎月、紹介していけたら幸いです。

▼よしいさんのエッセイはこちらから！